シアトル支部の門下生。中央が尾中さん。
テロや紛争、戦争がない平和な社会の実現を目指し、社会に役立つリーダーを育てることを目的に、宗道臣（そう・どうしん）氏が日本で少林寺拳法を創始したのは、第2次世界大戦終結から2年後の1947年。70周年にあたる今年、「自ら架け橋となろう –より良い世界を、ひとりひとりから」をテーマにカリフォルニア州サンマテオで開催される少林寺拳法世界大会に参加する、シアトル支部長の尾中泰（おなか・ひろし）さんにお話を伺いました。
― 今回の世界大会が、大きく注目されている理由は。
4年に一度開催される世界大会は、過去に一度だけパリで開催されたことをのぞけば、通常、日本で開催されます。少林寺拳法創始70周年記念の今年、それがアメリカで開催されるということで、とても注目が高まっています。
世界大会では、各国代表が級や段の武階別、年齢・男女別に演武を披露し、日頃の修練を競います。その種目も主に2人組の組演武、単独演武、６～８名の団体演武があります。また、競技とは関係なく、日頃の修練の成果・節目として技を披露するエキシビションもあります。
また、大会後の講習会では、本部指導員と全世界の拳士が資格別に技法の稽古を一緒に行ったり、少林寺拳法の歴史や哲学などについて学んだりします。支部長や審判員になる人の講習会もありますね。今回は、特別昇格考試も行われる予定です。
私個人の楽しみは、世界中の拳士仲間との再会と、彼らの演武を観ることです。そして、その後にある講習会で一緒に稽古して汗を流し、その合間にあるパーティーで食べて、飲んで、話す・・・これが一番の楽しみでしょうか（笑）。
― 尾中さんが少林寺拳法を始められたきっかけは。
まったくのミーハーですが、中学時代に観たブルース・リーの 『燃えよドラゴン』がきっかけです。日本男児であるからには空手か剣道のどちらかを習ってみたいと漠然と考えていたのですが、この映画で初めて「少林寺」という名前を聞きました。その3年後、本屋で『秘伝 少林寺拳法』（宗道臣著）に出会ったことが決定的となりました。
早速手にして開いたページから目に飛び込んできたのが、「瓦を割ってみせろと言われたら金槌を、板を割ってみせろと言われたら斧を持って割りなさい・・・云々」。映画で観た派手なアクションはどこへやら、直感で「これだ！」と思いました 。そして、大学入学後、体育会クラブに正式承認されていなかった、創部５年目の愛好会・少林寺拳法部に迷わず入部しました。
― 少林寺拳法の魅力とは。
開祖の教えとその実践ですね。それには、私の座右の銘にもなっている「半ばは己の幸せを 半ばは他人（ヒト）の幸せを」があります。
それに剛柔一体・組手主体の技の魅力と修練の楽しさがあります。何よりも幸運だったのは、師匠や兄弟弟子にも恵まれたことが挙げられます。
― シアトルでの少林寺拳法の活動と今後の展望は。
シアトル大都市圏では、1998年にシアトル支部が正式に認可されました。その後、シアトル大学で「武道と禅」というテーマで哲学の授業を受け持ったことが縁で、2009年にシアトル大学支部ができ、2010年に正式に認可されました。数も力のうちと言えることから、もっと門下生を増やしたいと思っていますが、シアトルの東にあるレイク・ワシントンの東側、イーストサイドで子供を持つ保護者からクラスを開講してほしいとの声がありますので、その実現に向けて準備を進めています。
シアトル支部では、シアトル地域でのボランティア活動として、毎年4月に開催される桜祭りを始め、地域のイベントで少林寺拳法の演武披露や高校生などの体験クラスを毎年行っています。今後は、少林寺拳法の実際の演武や技法を離れた地域の活動にも何かの形で関われるような支部になりたいとも考えています。
シアトル支部には、大学教授、弁護士の卵、FBI職員、警察官、看護師など、いろいろな職業の門下生がいます。彼らの職業も活かした地域貢献ができれば嬉しい限りです。そして、日本発祥の武術でもある少林寺拳法を通じて、日米交流の橋渡しの一端を担いたいと思っています。
少林寺拳法世界大会
www.usskf.com
少林寺拳法 シアトル支部
www.shorinjikemposeattle.org
※見学は随時歓迎
掲載：2017年6月
