Lasher Holzapfel Sperry & Ebberson, PLLC
弁護士 楠瀬 太郎さん
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今年3月、ある裁判で、多数の法曹及びビジネス両関係者が驚く判決が下されました。ワシントン州上訴裁判所が、ウィリアムズ対アスレチックフィールド判決(Williams v. Athletic Field, Inc.
, 2010 WL 1076118 〔Wash.App. Div. 2〕) (March 24, 2010)で、「不適切な公証文言が使用されたこと」を理由に高額の先取特権を否定したのです。これにより、公証が必要とされる場合の適切な公証文言使用の重要性が再確認されることとなりました。
他の州同様、ワシントン州は、「工事の先取特権」を認めています。工事の先取特権とは法定の優先弁済権で、当事者が供給した労務の未払い代金の支払いを確保するために、工事対象につき先取特権を認めるものです。家の建築につき、工事に当たった建設労働者などはそのいい例でしょう。もし建設労働者がその仕事に対して支払いを受けない場合は、この法律により、建設地を対象として先取特権を登記することができます。(ただし、先取特権は該当財産に対し最後に労務または資材が供給された後、90日以内に登記されなければなりません。)先取特権の登記は、財産所有者には頭痛の種となります。そのような先取特権があれば、銀行は今後財産所有者へのの融資を留保しかねませんし、また建物が完成したところで先取特権への対処が終わらないことには、急いで建物を売ることはできません。だからこそ、「工事の先取特権」は、支払いを滞る財産所有者に対し、効果的な圧力となりうるのです。
ウィリアムズ対アスレチックフィールド裁判では、ウィリアムズはワシントン州サムナーに土地を所有し宅地開発をしていました。ウィリアムズは整地などのためにアスレチックフィールドを雇い、アスレチックフィールドには15万5,000ドルが支払われました。アスレチックフィールドはさらに27万6,825ドルが支払われるべきと主張しましたが、ウィリアムズはこれを拒否。そこで、アスレチックフィールドはウィリアムズの土地に「工事の先取特権」を登記したのです。
先取特権の書類には、公証された署名が必要です。公証文言には多くの種類がありますが、その中の重要なもののひとつに、(1)署名人物が彼または彼女自身のために署名する際の公証文言か、(2)その人物が法人(例えば株式会社または有限会社)のために署名する際の公証文言か、の違いがあります。アスレチックフィールドは会社法人であるにも関わらず、使用された公証文言は個人のための公証文言でした。ワシントン州上訴裁判所はそれを理由として、約27万7,000ドルの労務未払い金についての先取特権を否定しました。
大多数の読者の皆さんにとって、公証文言の適否を見極めることは困難なことでしょう。けれどもこのウィリアムズ対アスレチックフィールド判決から学べるのは、もし公証人の署名が必要な場合は、公証を受け、それが27万7,000ドルにも相当する内容であれば、公証文言についてもしっかり専門家の目を通させておく必要があるということです。
(2010年5月)
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