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2月の初旬に日米を含む12カ国が署名し、早期発効にむけて本格的に動き出した TPP(環太平洋パートナーシップ)協定に関するセミナーが、3月24日の夕方、シアトルで開催された。
同セミナーはシアトル日本商工会(春秋会)、在シアトル日本国総領事館、日本貿易振興機構(JETRO)による共催で、外務省の栗山淳氏と JETRO ニューヨークの若松勇氏を講師に迎え、TPP の概要の解説、質疑応答、意見交換会が行われた。会場となったウェスティン・シアトルの会議室には160人もの出席者が集まり、シアトルの日系ビジネス界で活躍する人々を中心に、留学生や州外からの出張者なども見られた。
TPP 協定は、太平洋を囲む12カ国間で、関税を取り払い、投資の自由化や知的財産ルールなどさまざまな取り決めを行うことにより、大規模な自由貿易を可能とする。発効されれば、世界の GDP の約4割を締める経済圏が成り立ち、特に日米間の貿易におけるその影響と役割は大きい。
セミナーでは、まず外務省の栗山氏が TPP 協定の概要、日本における TPP の意味や影響について、30項目別に定められたルールの概要、交渉の経緯などを講義した。次に、JETRO の若松氏が在北米の日系ビジネス界における TPP の意味や影響、具体的な事例を元にどういう変化がありどう活用するかなどを解説。多様な分野にわたり、それぞれ異なる影響が考えられる TPP 協定に関し、2時間弱という短い時間で凝縮した講義が行われた。
参加者からは、「漠然と理解していた TPP 協定が、多くの分野に影響を及ぼし、ビジネスの方法を見直す必要も出てくることが実感できた」(サービス業関係者)、「TPP 協定の紹介を抜粋した講義に加え、配布された分厚い資料に各項目ごとの詳細な取り決めが記載してあり、情報量の多いセミナーだった」(航空産業関係者)、「大学で専攻している国際政治学で『なぜ関税が存在するのか』を考えるが、本セミナーでは実際のビジネスにおいて関税がどう関わっているかという面を知ることができ、大変興味深かった」(学生)などという声が聞かれた。
掲載:2016年3月 取材・文:渡辺菜穂子