ベルビューに本部のあるバレエ団 『バレエ・ベルビュー』。非営利団体として登録されている同バレエ団は7人のプロの契約ダンサーを抱え、ベルビューのメイデン・バウアー劇場をホーム劇場として、古典からモダンの名作まで年間4本の作品をオーケストラの演奏付きで上演している地方バレエ団だ。付属のバレエ・スクールは、同バレエ団が1960年代に設立されたバレエ・スタジオを1997年に買い取り、講師以外はすべてボランティアで運営されている。3歳半から大人まで年間延べ200人の生徒が受講しているが、そのうち9割近くが国際的なバックグラウンドを持つ子供達で、レッスンが行われるスタジオではロシア語や中国語など外国語が聞こえてくる、国際色豊かなスクールでもである。
クラシック・バレエは、ルネッサンス期のイタリアで生まれ、フランスで育ち、その後ロシアで発展して世界中に広まったダンスの種類。舞台の上は壮大な絵や道具で装飾され、オーケストラなどによる音楽の伴奏をつけて、観客に披露される。有名な作品に 『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、『ジゼル』、『ロミオとジュリエット』などがあり、舞台音楽とともによく知られている。女児ならではのお稽古事として人気が高く、このバレエ・スクールでも生徒の99%は女児だという。
他のお稽古事に比べ、子ども自身が習いたいと要望するケースが多いと言われているバレエ。同スクールの講師陣の1人、クリスティーナ・ストックデール先生は、『バレエ・ベルビュー』 で今シーズンから舞台に立つ現役のプロ。やはり5歳の時に自分から希望してバレエを始めたそうで、「早い時期に始めた方が、バレエというものを早く体で感じ取れると思います」とのこと。「本格的なバレエの訓練は、子供にもよりますが8歳くらいから始めます。けれどもそれ以前に始めることによって、音感やリズム感が養われたり、フランス語で指示されるバレエ用語に慣れ親しむ効果もあります。また、柔軟性やバレエ向きの体を成長しながら作っていきやすくなりますね」と、バレエを早い時期から始めるメリットを強調する。
同スクールで開講されている幼児クラスは、本格的な訓練の前のいわゆるバレエ準備クラスでプリ・バレエ(Pre-Ballet)と呼ばれ、年齢別に分けられている。クラスは、バー・レッスンとセンター・レッスンを通じて、バレエの基本の動きを1時間かけて繰り返し練習するというもの。最初の柔軟体操を終えると、バー・レッスンが始まる。壁にある子供用の高さのバーに手をかけて、先生の示す手本を真似て、腰を下げてひざを曲げるグラン・プリエをしたり、脚を前・横・後ろへ動かすタンジュという、バレエ独特の足の動きを練習。約20分ほどで次はフロアに移動して、センター・レッスンへ。ここではレッスン・フロア全体を使って、腕の動きを織り交ぜながら、ステップやジャンプなどを組み合わせ、決めのポーズでしめくくるという動きを練習していく。センター・レッスンでは、自分の番が終わったら、後続のために速やかに移動しなければ、衝突などの事故につながる。先生が子供達にルールを繰り返し伝えながら動きをしっかりコントロールし、さらにお手本を示し、音楽に合わせて動いていくという流れでレッスンが進んでいく。最後にレッスン終了のお辞儀をして、クラスは終了。
幼い子供のクラスでは、先生の話をしっかりよく聞き、順番を守るなどといったルールに従い、クラスメートと協力できることがポイントとなるが、レッスン中に先生が何度も子供達に指導していたのは、手先や足先まで意識すること。子供達は、一面の大きな鏡に映っている先生と自分の姿を見比べながら、どうしたら先生のようにできるかを自分で考え、一生懸命に真似をする。まだ幼い子供でも、自分の姿をどのようにして美しく見せるかということを追求しているその目は真剣そのものだ。
このバレエ・スクールが他のバレエ・スタジオと異なるところは、バレエ団付属のスクールということ。バレエ団付属のスクールと言うと「プロ・ダンサーの養成」というイメージがあって敷居が高いように見えるが、情操教育として、あるいは運動の一種としてバレエを習っている子供もたくさんいる。しかし、本人が望めばコンクールやプロの道に入るための本格的な指導環境が整っているというのも、付属スクールならではのメリットだ。また、希望すれば年に4回行われるバレエ団の上演目のオーディションを受けることができ、合格すれば、プロと一緒に舞台に立つことができる。端役でも舞台に立つとなると、プロ・ダンサーと一緒に練習するという貴重な体験ができ、プロのダンサーが舞台に向けて技術的・芸術的な課題を克服しようと努力する過程を目の当たりにすれば、その後の本人のバレエに対する意識レベルが非常に高くなるという。もちろん、アットホームな雰囲気で年に2回行われる発表会も、日頃のレッスンの成果を披露する場となり、生徒達にやる気を持たせることに貢献している。
しかし、どのバレエ教室にも共通して言えることは、男児の生徒人口がまだまだ少ないこと。そのため、発表会などでのパートナーとして、男児の需要はとても高いという。また、男児がバレエを始めると、本格的な道に進む場合、女児に比べて門戸は広くなっている。
バレエのレッスンを始めるにあたり必要なのは、レオタード、バレエ用のタイツ、バレーシューズがある。その上、毎月の授業料の他、発表会の費用など、バレーは費用のかかるお稽古事だと思われがちだが、同スクールでは、購入すると通常90ドル程度かかるという発表会用の衣装が貸し出しとなっているため、費用は少し抑えられるとのことだ。
1年のクラスは通常、9月に始まり、6月に終わる。空きがあれば、途中から始めることもできるので、問い合わせてみよう。クラスのスケジュールなど詳細は、公式サイトでどうぞ。
Ballet Bellevue(バレエ・ベルビュー)
【住所】 204 100th Avenue NE, Bellevue (地図)
【電話】 (425) 802-3125
【公式サイト】 www.balletbellevue.org
掲載:2008年7月