シアトルのバレエ団パシフィック・ノースウエスト・バレエの2017-2018シーズンが22日に開幕しました。開幕作品は、著名な振付家ジョージ・バランシンがニューヨークの高級宝石店のウインドウで目に留まった宝石にインスピレーションを得て制作したと言われる 『Jewels』。色もイメージも異なるエメラルド、ルビー、ダイアモンドをモチーフとした、まったく趣きの異なる3部構成の舞台は、ロシアで舞踊家・振付家として名をはせ、パリへ渡り、そしてアメリカで生涯を終えたバランシンの体験が反映された作品とも言われ、代表作のひとつとなっています。
1967年の初演から50周年を迎える今年、ニューヨークのリンカーン・センター・フェスティバルは、パリ・オペラ座、ニューヨーク・シティ・バレエ、ボリショイ・バレエがそれぞれの国とその伝統を踊る共同公演を行いました。シアトルのパシフィック・ノースウエスト・バレエでは、新しい舞台美術とコスチュームをパリのアーティスト、ジェローム・カプランによって全面リニューアルし、2006年以来の公演を実現しています。
第1部の幕が開くと、星をちりばめた夜空のような背景に、エメラルド色のコスチュームをまとったダンサーたちが浮かび上がります。ひざ下丈のロマンチックチュチュの女性ダンサーたちはエレガントで神秘的。フランスで開花したロマンチックバレエの世界にすぐに引き込まれました。出演していたダンサー17人の中では、5年前にモンテカルロ・バレエ団に移籍しながら、今シーズンはパシフィック・ノースウエスト・バレエで再び舞台に立つことになったプリンシパルのルシアン・ポストルワイトの人気が根強く、カーテンコールでは大きな歓声があがりました。
第2幕は、ルビーの情熱的な赤のコスチュームをつけたダンサーたちと、黒と白の背景とのコントラストが美しい舞台。ストラヴィンスキーの 『ピアノと管弦楽のためのカプリース』 のエネルギッシュな旋律に乗せた、動きの激しいジャズダンスのような踊りは、1960年代のニューヨークを反映していると言われます。15人のダンサーの中でも今回の公演のパンフレットの表紙を飾ったひときわ背の高いレイチェル・フォスターの、表情豊かでコミカルながらキレのある踊りに、観客は釘付け。自信にあふれる女性が放つ美しさとパワーを感じさせてくれました。
休憩を挟んで上演された第3幕は、高貴なダイアモンド。舞台の背景には銀色のフレームがデザインされ、ダンサーたちはまるで美しい絵画から抜け出てきたよう。チャイコフスキーの交響曲第3番の旋律に乗って、ダイアモンドがきらきらと輝き続けるような、ゴージャスな世界が展開します。白いコスチュームをつけた長身のプリンシパル、カレル・クルーズとレスリー・ローシュのペアの、安定感があり、息のぴったりあった華麗なパ・ド・ドゥにはうっとり。最後はバランシンの故郷サンクトペテルブルクの華やかだった19世紀ロシア帝国の宮廷舞踏会のような、ダンサー34人による群舞で、輝き続ける宝石を見ているかのような舞台を締めくくりました。
今年はこの作品がニューヨークで初演されてから50周年。まったく趣の異なる3部作で、一つの公演を3倍楽しめるはず。ぜひ劇場へ足を運んでみてください。
舞台美術とコスチュームをデザインしたパリのアーティスト、ジェローム・カプランのインタビューもぜひ。
【会場】Marion Oliver McCaw Hall
【公演期間】 9月22日・23日、9月28日~10月1日
【チケット】 $30~
【駐車】 路上駐車・有料駐車場
【問い合わせ】 (206) 441-2424; www.pnb.org