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第114回 職場でのハラスメント(嫌がらせ)と企業側の対応について

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第3回のコラムで、いじめにかかわる法律について簡単にご説明しました。今回は、ハラスメント(harassment:嫌がらせ)と差別(discrimination)の相違、ハラスメントを理由に告訴する場合の基準、企業の対応方法について、例を挙げながら簡単にご説明します。

もくじ

差別とハラスメントの相違点

差別とは

ハラスメントと類似する職場の法的問題として、差別待遇があります。差別とは、Title VII of the Civil Rights Act of 1964, ADA(身体障害差別方禁止法)、ADEA(年齢による差別禁止法)などによって保護されている社員が雇用者から差別待遇を受けることで、雇用者が社員の移民のステータス、民族、性別、年齢、宗教、身体障害の有無、年齢等を理由に採用や解雇をすることを指します。

米国のほとんどの企業は Employment at Will といって、理由の有無に関わらずいつでも自由に解雇できる雇用契約書を従業員と交わしていますが、差別を理由に解雇することは違法行為です。

ハラスメントとは

これに対し、ハラスメントは職場での嫌がらせとして定義され、雇用契約内容や社員のステータスに関わらず、どの社員でも対象となります。内容として、職場全体に悪い影響を与えた場合(hostile environment)、セクシャルハラスメント(sexual harassment)、および身体的/精神的暴力(tort) など、行為そのものが違法で、特にそれらのいじめが組織化している場合は、法的な対処を必要とします。

例えば、職場の従業員同士で異論があったり、部下が上司から非難を受けたりすることは、一般的によくある問題であり、法的手段をとるに至りません。

ハラスメントの苦情への対応

特に雇用者が知る余地のないいじめや嫌がらせに関しては、雇用者が責任をとることは法的に義務付けられていません。例えば、上司が直属の部下に暴力的な発言をしても、雇用者がそのことを認識していない場合、企業として責任をとる必要はなく、企業としての法的救済も必要としないということになります。

雇用者がいじめや嫌がらせがあると認識していても、いじめの度合いが客観的に見て深刻でないと判断される場合や、「被害者が神経質で敏感だったためにいじめと解釈した」という場合は、一般的には法的対処に値しないことになります。

一般的には、そのいじめや嫌がらせが身体的暴力(tort) やその他の違法行為をともなうもので、被害者の社員が、会社を辞めないと精神病になりかねない、あるいは会社を辞めざるを得ない状況に追い込まれたというように、一般の社員の目から見ても耐えられない度合いのいじめや嫌がらせでなければ、社員が裁判で勝訴するのはは難しいのが実情です。

しかし、雇用者が職場内でのいじめや嫌がらせを認識しているにも関わらず、対処せずに状況を悪化させた結果、被害者の社員が会社を辞めざるを得なくなった場合(constructive discharge)および辞めさせられた場合は、雇用者の責任が問われます。

例として、直属の上司が自分の立場を利用して部下にセクシャルハラスメントをした場合、雇用者が被害者の部下からの報告を「虚偽」と判断したり、直属の上司が部下の報告を虚偽として雇用者に報告したにも関わらず、雇用者が部下の解雇を促すなどの組織的行為が判明した場合は、法的に厳しく罰せられます。

このような職場内でのハラスメントを阻止するための企業管理で重要なことは、 下記のとおりです。

  1. 差別やいじめなど人間関係によって生ずる問題の対処法や社員に対する罰則制度などを社員手引きに規定しておく。
  2. 実際にいじめが生じた場合は、いじめの性質や内容に関わらず、人事/法務/労務課を通して十分な職場調査を行い、いじめを防ぐよう対処し、すべての過程を書面に残す。
  3. 2の過程で、いじめの加害者の社員とも話し合い、今後の言動に対する措置について理解させる。

いじめや嫌がらせを受けた社員にとっては、企業に助けを求めたことでさらなる被害を受ける心配も生じます。企業としては、対策を練る段階でこうした副次的影響があることも念頭に置き、問題になっている職場を注意深く監督していく必要があります。

シャッツ法律事務所
弁護士 井上 奈緒子さん
Shatz Law Group, PLLC
www.shatzlaw.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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