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“Stay humble. Stay curious.” スラロム・ジャパン、ついに東京で始動!

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2020年9月、東京オフィス設立

「日本市場に進出する理由は、日本へのパッション(情熱)です」と、シアトル本社で伺ってから約2年。企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するシアトル企業 Slalom Consulting(以下、スラロム・コンサルティング)が、正式にスラロム・ジャパンを始動しました。世界5カ国・40拠点のオフィス・世界10拠点のビルド・センター(エンジニアリング・センター)で9,000人を超える社員が1,200社を超えるクライアントをサポートする同社の日本オフィス設立までの道のりについて、シアトル本社のリージョナル・ジェネラル・マネジャーのカイル・クルーズ氏と、日本マーケット・リードの保坂隆太氏に再びお話を伺いました。

– 前回お話を伺ったのは2019年4月で、新型コロナウイルスのパンデミックが始まる前でした。それから約8カ月後に世界が一変したわけですが、スラロム・ジャパンの設立にどういった影響がありましたか。

カイル・クルーズ(以下、カイル):パンデミックの影響で、スラロムは全員が自宅勤務に切り替わり、ちょうど日本に滞在してスラロム・ジャパン設立のために動いていた隆太は日本とアメリカを簡単に往復することができなくなりました。でも、隆太が日本とアメリカの往復に時間と労力を費やすことなく日本オフィス設立に集中することができるようになったことで、日本でのチーム作りが加速化したと思います。

その後、シアトルの時間で午前中から夕方までは自分の担当しているアメリカ北西部と山岳部のオフィスやクライアントと、夕方以降は日本とミーティングができるように時間を調整することができました。どちらかがいつもどこかに出張している状態ではなく、ミーティングしている相手のいる場所に集中するというリズムができあがっています。

シアトルと東京でオンラインミーティング
(パンデミック中に撮影)

– 効率が高まったというのはどこで感じますか?

カイル:スラロムは人を最優先に考える、ピープル・ビジネスをモットーとしています。そのため、これまではチームのいる都市、クライアントのいる都市に飛行機で移動し、対面で仕事をし、自分がいる場所に集中するようにしていました。また、シアトルでは、社外に場所を確保して、マネジャーたちを2日間にわたり集めて会議をするのも普通でした。

でも、パンデミックになり、全員がリモート勤務に切り替わった今は、シアトルの自宅にいながらにして、1時間はフェニックス、1時間はデンバー、1時間は東京、というように、一日の間に各オフィスのチームメンバーともっと密にコミュニケーションを取ることができていますし、チームがオンラインで集まる機会を増やすことができるようになりました。この一年で効率は大幅に高まり、コラボレーションやイノベーションも拡大して、さらにクリエイティブになることができています。個人的にはホワイトボードが好きなのですが、オンラインでは実際に集まっている時のようにホワイトボードをうまく使えないのが残念です(笑)。画面をシェアする形で対応するしかないですね。

保坂隆太(以下、隆太):私が東京にいるので、正直、直に顔をあわせることができないのは、ある程度のチャレンジがあることは事実です。でも、この状況でも誰もが最大限にやっていると思います。特に、カイルはシアトルの午後にいつも私と、そしてチーム全体とミーティングしてくれるので、東京のチームがシアトルのチームと分断されてしまっているような感じはまったくありません。過去10年、20年のテクノロジーの進歩のおかげですね。そしてやはり、スラロムのリーダーシップは考え方が一貫していて、チームのやりたいことを実現できるように障害を取り除くサポーターであろうとしてくれているからだと思います。話をしっかり聞ける人がリーダーであることが大事ですね。

カイル:そもそも私はマイクロマネジメントをする上司ではないのですが(笑)、チームがつながっている状態(stay connected)を保つことには気を使っています。これまでに東京で6人を採用しましたが、私より日本市場に詳しく、才能のある彼らのような人材が日本オフィスにいることはとても助かっていますし、そこに多くの信頼を寄せています。

– パンデミックで強制的に始まったリモートでの働き方は、パンデミックが収束した後はどうなると思いますか?

カイル:パンデミックの前の働き方に戻れる時が来たら、最初はみんなが実際に顔を合わせようとして、対面で働く機会が急に増えると思います。でも、その状態がずっと続くかというとそうではなく、今のこの新しい働き方を選ぶことになるでしょう。今の働き方は健康的でバランスが取れていますし、クライアントでさえも「こちらまで来てほしい」という要望が減り、地理的に離れていてもサポートできる状況が続いています。

隆太:物理的に現場にいない状態で成功したプロジェクトの一例を挙げるとすると、山口県下関市に本社のある大型船舶向け計装機器メーカー、JRCS社とは、製品のデジタライゼーション、そしてビジネスモデルのデジタルトランスフォーメーションというプロジェクトを行いました。2019年にスラロムのエンジニア3人が2週間にわたり現地に滞在し、船舶で数日を過ごしました。そのおかげで、2020年は東京とシアトルとカナダなどのオフィスからずっとリモートで開発を一緒に行い、サポートすることができたのです。パンデミックで顔を合わせづらい状況もオンラインを活用し、驚くほど問題なくプロジェクトを進められました。

– 日本市場への進出で感じるチャレンジについて教えてください。

カイル:日本市場は、日本政府の規制の複雑さや言語の違いから、ビジネスの基盤作りにおいてはチャレンジになると予想してはいましたが、それを上回るものがあったと思います。日本オフィスは弊社のアメリカ国外のオフィスとしては4番目で、言語が英語ではない最初の市場ですから、やりながら学んでいった部分があります。実際のところ、予定より時間はかかりましたが、これは「パッション・プロジェクト」なので、やりがいのある、楽しいものです。現場にいる隆太は、私とは異なる経験をしているかもしれませんが(笑)。

隆太:私の場合、10年ぶりに日本に住んでみて、逆カルチャーショックはありました。でも、私が日本ではない国で働いてきたからには違う視点を持っているだろうと思ってもらえたことは、仕事においては良い効果があります。デジタルトランスフォーメーションやコンサルティングについて話すときに、「違う視点がある」「違う意見がある」と期待され、スラロムから新しいものを求めている方と話がつながりやすいです。

新入社員をオンラインで歓迎

– そんな日本市場で活躍できる人材にどんなことを求めているのでしょう。

隆太:日本市場において、変化を求める情熱がある人、本当の変化を起こしたい人が必要です。いわゆるチャレンジ精神がある人ですね。日本はデジタルトランスフォーメーションがそこまで速く進んでいるわけではないですが、スラロムがユニークであるためにも、クライアントのために本当に変化を起こし、影響を与えることができる人を求めています。

カイル:最終面接で私が見るのは、スラロムの企業文化にフィットしているか、スラロムを正しい形で代表できるか、チームのダイナミクスの中で活躍できるスキルを持っているかです。また、スラロムとして人材のバランスと多様性を維持することも大切ですね。というのも、市場でローンチしてから人材のバランスと多様性を調整するより、市場に参入する時点で人材のバランスと多様性が保たれている状態であることが最適だと他の市場で学んだからです。特に、日本では、マルチリンガルで、文化的に多様性があるチームを作ろうと思っています。

隆太:出身国で考えたことはなかったのですが、今のところ4月の時点で日本、米国、オーストラリア、中国、インドネシア、エストニアなどの出身者が15人ほど揃う予定です。

カイル:特に市場参入の初期段階では、起業家精神があり、新しいビジネスを生み出そうとする人材が必要です。業務内容を与えられる形ではなく、新しいものを生み出すビルダーですね。組織が大きくなるにつれ、そういう面は少なくなっていくかもしれませんが、基本的に、リスクを取れる人、スラロムのビジョンを体現できる人、それぞれが個人レベルで貢献でき、同時にチームプレーヤーでもあることを求めています。

シアトルで開発プロジェクトを実行した日本からのクライアントの歓迎ハッピーアワー
スラロムのシアトル本社にて

– すでに日本でもビジネスをスタートされたわけですが、スラロムのコンサルティングのスタイルは、どんなふうに受け止められていますか。

カイル:スラロムのコアバリューの一つは、”Stay humble. Stay curious.”(「謙虚であれ。好奇心を忘れずに。」)で、仕事で大切なのは、”constant learner”(「自分は常に学習者である」)というマインドセットを持っていること。なので、もし私たちがクライアントの話に耳を傾けず、解決策を提示すようであれば、それは謙虚とは言えませんし、好奇心もないことになります。謙虚であり、好奇心を持つことは、私たちのアプローチでの大きな部分なのです。

コンサルティングをする際、コ・クリエーション(Co-Creation:共創)という言葉をよく使います。その言葉に込めているのは、クライアントから案件を受注し、社内で設計して完成品を納品して終了するというのではなく、クライアントとともに解決策を創りあげていくということ。それが日本ではどう受け止められているか?それについては、隆太に話してもらいましょう。

隆太:コラボレーション、コークリエーションという言葉は、スラロムとしてクライアントと仕事をする時のアプローチでよくお話しすることです。「我々にはソリューションがあるので、顧客のあなたにそれを与えます。それを使って組織やビジネスのトランスフォーメーションをしてください」というのは、私たちのコンサルティングとは異なります。でも、日本では、「コンサルティング会社がすばらしいアイデアとソリューションを持っている」という期待があったりします。そして、「それを与えてくれる、革命的、イノベーティブなツールを与えてもらえる、それも1~2日で」と思っていたりします。なので、私たちのアプローチやクライアントのサポートの方法について説明するのは、会話の初期段階では簡単ではありません。

そこで、まずスラロムのデリバリーモデルの基本であるコラボレーション、コークリエーションについてお話しします。「クライアントにはその仕事、その業界で豊富な経験がある。そして、私たちには最新のテクノロジーなどにおいて豊富な経験がある。なので、その二つを合わせれば、まったく新しい物を作りだすことができるし、クライアント自身がもっといろいろなことができるようになり、もっと楽しくなります」と。

今のところ、日本のクライアントにポジティブに受け止めていただいていますが、これはまだ新しい考え方なので、時間はかかりますね。なぜなら、コラボレーションという言葉は知っていても、その本当の意味は経験していないからです。これまで多くの人が経験してきた「コラボレーション」は、いつも一方通行だったんですね。例えば、クライアントがモバイルアプリの開発や制作、ビジネス戦略の提案をコンサルティング企業に依頼することは、単なる発注であり、コラボレーションではありません。

そして、コンサルティングでは、やっぱりまずクライアントや実際にその製品を使う人たちの話をよく聞いて理解するというのはとても重要です。お互いが日本人の場合が多いとはいえ、それだけで相手をよく知っていると思い込まないこと。自分の生い立ちや、これまでの経験をいかし、想像力を働かせて、相手のことを理解しようとする。これがとても大切だと思っています。

「日本語と英語の短文か単語を毎日一つ、メンバー全員で勉強してるんだよ」
スラロムのシアトル本社にて

– この仕事をやっていて良かったと思う時はどんな時ですか。

カイル: スラロムが目先の利益よりも、人を、そして人のやりたいことを大事にする企業だと感じる時です。例えば、シアトルのチームが日本プロジェクトを立ち上げた時もそうでした。会社として注力したのは、楽しくて、起業家的で、新しいチャレンジだったからです。そして、パンデミックが始まった時、「皆で協力しあい、レイオフはしない」と決めました。スラロムらしさを感じました。

隆太: 昨年、日本のクライアント3社がスラロムのシアトル本社に来てエンジニアとそれぞれプロジェクトをしたことがありました。それから私が2週間の東京に出張してシアトル本社に戻ったら、あるチームのエリアの壁一面に、英語と日本語がびっしり貼ってあったのです。聞いてみると、「日本語と英語の短文か単語を毎日一つ、メンバー全員で勉強してるんだよ」と言われました。その時、「そうそう、こういう瞬間が見たかったんだ」と思いました。コロナが明けたら、もっとたくさんのクライアントにシアトルに来てもらいたいですね。

編集後記:前回シアトル発祥の地パイオニア・スクエアにあるスラロム・コンサルティング本社を訪ねたのは2019年3月。その時の記事を掲載してから約2年間、たびたび日本オフィス設立の状況のアップデートをお知らせいただきましたが、当サイトのランキングで記事が上位に上がるたび、「あ、またスラロムが何かで話題になってる」と感じることが多かったです。今回はパンデミックの最中のため、ジェネラル・マネジャーのカイル・クルーズさんと日本進出を統括している保坂隆太さんとオンラインでお話ししましたが、日本オフィスが正式に開設したことについて楽しそうにお話ししてくださいました。「そうは言っても、大変なことはあるでしょう?」と聞いても、「でもパッションがあるから、チャレンジも楽しいんです」という答えが返ってきました。オンラインでも上司と部下という固まった縦割りの関係ではなく、お互いをリスペクトしているフラットな関係が感じられて、こちらまで気持ちが明るくなるインタビューとなりました。

聞き手:オオノタクミ

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