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第6回 数の敏感期

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モンテッソーリ教育

第4回 子どもと敏感期」と「第5回 言語の敏感期」に続き、今回は、数の敏感期について触れたいと思います。

敏感期というのは、マリア・モンテッソーリが頻繁に使用した言葉で、「子どもが何かに強く興味を持つ一定の時期(特別に敏感な感受性を持つ時期)」を意味しています。また、敏感期の間、子ども達は特に良く集中して同じことを繰り返す特徴が見られるということを説明しました。周囲の大人が子どもの敏感期に気づいてあげることで、子どもが大きく成長するチャンスを逃さず、上手くお手伝いできる機会に恵まれることにつながります。

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「数の敏感期」は、3歳から6歳頃にやってきます。もちろん個人差がありますが、だいたい幼稚園でいうと年中さんの後半から年長さんくらいにやって来ることが多いようです。「数を数えたくてしようがない」「数字を見ると読みたくてしようがない」など、数というものにとても敏感になる時期です。

かつてまだ3歳だった息子がエレベーターの数字を数えるのが好きで、エレベーターに乗る度に降りたがらなくて駄々をこね、親としては大変な思いをした時代が思い返されます。今思えば、息子はまさに数の敏感期にいたのだと思います。敏感期に気がついてあげられることは、子どもが大きく伸びるチャンスのチケットを手にしたようなもの。普段から子どもが何に興味を持っているのかアンテナをはって、観察眼を持つことが大切です。

3歳になると、大人と一緒にものを数えられるようになります。なので、「うちの子はもう1から10まで数えられるから、数を理解している」と大人は思ってしまいがちですが、実際に数を理解しているとは限りません。数の概念を理解するということは、例えば4つの対象物を指して「いち、に、さん、よん」と数と対象物を1対1で対応させていき、数え終わった時に「全部で4個ある」と判断できるということです。つまり、お経のように数字を唱えることができるだけではなくて、現物の量や数字と合致することができて初めて、数を理解したと言えるのです。数をたくさん数えられる子どもが、実際には現物の量を理解できていないというケースは多くあります。

モンテッソーリの園では、具体物を使って質(数字)と量を組み合わせる練習を丁寧に、何度も行います。10までの数と量が合致するためのお仕事(教具を使った活動のこと)を身体が体得するまで繰り返し練習し、1から10までの物の量と数字を合わせられるようになってから、はじめて11以上の量や数字を紹介していきます。

「日本語の数の数え方で「4」「7」はどうすれば良いですか?」というご質問を受けることがあります。モンテッソーリの園では混乱を避けるため、最初に4は「よん」、7は「なな」と教えています。子どもが年齢を言う時に「わたしはよん(4)さい」「わたしはなな(7)さい」とお話しするからです。そして、一度この数え方が定着しましたら、「実は4と7には別の呼び方もあるんだよ」と「し、しち」を紹介していきます。

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1から10の数と量をマスターした子ども達には、モンテッソーリのゴールデンビーズというお仕事が紹介されます。金色をしたビーズで出来ていて、小さな1個のビーズが1で、10個連なったビーズの棒は10、10個の棒がくっついてる正方形のものが100、その100が10個重なった立方体が1000を意味している教具です。

年長の子ども達はこのゴールデンビーズを用いながら、銀行屋さんと呼ばれるゲームを楽しみます。先生が「3852をお願いします」と注文すると、数の棚に行って、言われた数のビーズを集めてくるというお仕事です。子ども達は大きな数字が大好きです。45ビーズレイアウトと呼ばれるゴールデンビーズを各位に並べるお仕事でも、立方体を9個重ねて作る一番大きな数、9000を作るのが大好きです。9個の立方体を重ね終えると「9000は大きいね!」と、みんな満足そうな笑顔になります。身体と具体物を使って数の大きさを理解し、体験することから学んでいきます。

この3歳から6歳の時期は、動いて自分の身体の主人公になりたい「運動の敏感期」や、物を区別してくっきりはっきり理解したい「感覚の敏感期」と重なるので、五感をフルに使って数にふれる体験を持つことが大切になります。

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私たちの日常生活の中には数にふれるチャンスはたくさんあります。数や量に興味が出てくると、兄弟姉妹の間でどちらのおやつの量が多いか少ないかを気にするお子さんも多いでしょう。どちらが多いかクイズをしてみたり、「クッキーをひとり3個づつにわけてね」など、お子さんにおやつを配ってもらっても良いかと思います。枝豆が夕飯にあったら、子どもと一緒にそれぞれの枝豆の数を数えてみることもできるかもしれませんし、ご飯を炊く時に子どもと一緒に何杯のお水をカップに入れるか数えてみてもいいかと思います。また、耳を使ってカスタネットを何回叩いたか音当てごっこなどもご家族で一緒に楽しめるかと思います。

ぜひご家庭でも日常生活にちりばめられている数のチャンスを利用してみてくださいね!具体物や日常生活での数の体験は、数のイメージを豊かに膨らませることになり、その後、お子さんが小学校に上がってからの抽象的な学びへの大切な土台となります。

掲載:2021年6月

文・写真:斉藤カルコーヴァン智美
慶應義塾大学文学部、シャミナード大学院幼児教育学科卒。ワシントン州ベルビュー市にある日本語と英語のバイリンガル幼稚園、ピカケスクール園長。日本では株式会社オリエンタルランドが経営するチャイルドセンターの立ち上げに携わり、プログラム・マネージャーを務めた。渡米後はモンテッソーリの教員として、ハワイとシアトルで約14年間勤務。2017年夏にベルビュー市でピカケスクールを創立。

Pikake School
www.pikakeschool.com

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