2024年が始まり、アメリカではさまざまな労働関連法や規則が変更されています。今回は、雇用関連の主な変更点についてご紹介します。
最低賃金
連邦最低賃金は今年も据え置かれ、 2009年から7.25 ドルのままとなっています。
しかし、30 州とワシントン D.C. では、最低賃金が連邦最低賃金を上回っています。2024年には25州が最低賃金を引き上げました。このうち22州が1月1日に変更し、ネバダ州とオレゴン州は7月1日に変更され、フロリダ州は9月30日に変更となります。主な州の最低賃金とExempt(注)ステータスに必要な最低賃金は下記表の通りです。
州名 | 2024年最低賃金 |
カリフォルニア州 | 時給16.00ドル(市町村ごと別途レートあり)Exemptの最低賃金 年収66,560ドル以上 |
イリノイ州 | 時給14.00ドル |
ミシガン州 | 時給10.33ドル |
ニュージャージー州 | 時給15.13 ドル 従業員6名以上 時給13.73 ドル 従業員6名未満と季節労働者 |
ニューヨーク州 | 時給16.00ドル Exemptの最低賃金 年収62,400.00ドル(New York City, Long Island CityとWestchester County) 時給15.00ドル Exemptの最低賃金 年収58,458.40ドル(州内その他) |
オハイオ州 | 時給10.45ドル |
ワシントン州 | 時給16.28 ドル Exemptの最低賃金 年収67,724.80ドル |
Exempt:公正労働基準法(Fair Labor Standards Act:FLSA)によって定められた、労働時間管理や残業手当支給が免除される雇用区分。さまざまな条件を満たす必要があります。
州別労働関連法
多くの州で、新しい法律の施行や現行法の更新がありました。主な変更点は次のとおりです。なお、すべての変更点をカバーしているわけではありませんので、ご注意ください。
ワシントン州
ワシントン州では、2024年1月1日より、最低賃金が時給16.28ドルに引き上げられただけでなく、すべての雇用主の基準額も最低週額1,302.40ドルまたは年間67,724.80ドルに引き上げられました。さらに、来年はこの基準値が78,249.60 ドルと大幅に引き上げられるため注意が必要です。
また、従業員に対する競業禁止契約を有効とするには、2024年1月10日から、従業員が最低120,559.99ドルの収入を得ていることが必須となりました。
項目 | 概要 | 施行日 |
競業避止契約 | 競業避止契約 強制力のある競業避止契約の年間最低報酬基準額が引き上げられた。競業避止契約は、年間報酬がそれぞれ120,559.99ドル未満の従業員および301,399.98ドル未満の独立請負業者に対して無効となる。 | 1/1/2024 |
カリフォルニア州
カリフォルニア州では、職場での暴力防止のための新たな義務化研修など、多くの変更が加えられています。職場での暴力防止の法律は、在宅勤務のみの従業員を抱える雇用主は除外されます。また、有給休暇日数が増えているので、カリフォルニア州に拠点のある企業は就業規則の更新が必要です。
項目 | 概要 | 施行日 |
差別と報復 | 上院法案497は、従業員が特定の保護された活動から 90 日以内に解雇または懲戒処分を受けた場合、報復の推定を設けた。これには次のような状況が含まれる。 (1)賃金および労働時間違反の報告 (2)州または連邦の法令、規則、または規制の違反に関する情報であると従業員が合理的に信じている政府または法執行機関への開示 (3)同一賃金に関連する権利を報告または行使しようとした場合 | 1/1/2024 |
職場衛生と安全 | 雇用主は、「効果的な」職場暴力防止計画を策定、実施、維持し、従業員を訓練し、職場暴力に関する広範な記録を作成および保管しなくてはならない。 | 1/1/2024 |
有給傷病休暇 | 上院法案616では、フルタイム従業員に必要な有給傷病休暇が3日間(24 時間)から 5日間(40時間)に増加した。 | 1/1/2024 |
生殖関連の無給休暇 | 5 名以上の従業員を雇用する企業は、次の事象が発生した日から最大5日間の無給休暇を付与しなければならない。養子縁組の失敗、代理出産の失敗、流産、死産、あるいは生殖補助医療の失敗(数日に渡る場合は、その最終日より5日間)。この無給休暇は12ヶ月以内に最大20日に制限されているが、従業員は有給休暇、病気休暇など、他の種類の休暇を利用することができる。 |
イリノイ州
イリノイ州の雇用関連法最大の変更点は有給休暇手当の充実です。同州は、目的を問わず従業員に最大40時間の有給休暇を与える全労働者有給休暇法を制定しました。この法律に基づき、雇用主は従業員の休暇取得理由書類を提出させることはできません。以下の表には記載されていませんが、シカゴ市は最近、シカゴ有給休暇および有給病気安全休暇条例を可決しました。この新条例では、従業員は目的を問わず、毎年最大40時間の有給休暇を取得し、さらに、毎年最大40時間の有給病気休暇および安全休暇を取得することができます。
項目 | 概要 | 施行日 |
有給休暇 | 全労働者有給休暇法を制定し、従業員があらゆる目的に使用できる年間40時間の有給休暇付与が義務付けられた。 | 1/1/2024 |
忌引き休暇 | イリノイ州の従業員には、自殺や殺人で子どもを亡くした場合、児童延長忌引休暇法(CEBL)に基づいて無給休暇を付与する必要があります。CEBLは、250名以上のフルタイム従業員を抱える雇用主に年間最大12週間の休暇を提供することを義務付ける一方、50名から249名のフルタイム従業員を抱える雇用主は年間最大6週間の休暇を提供することを義務付ける。フルタイム従業員が 50 名未満の雇用主はCEBLから除外される。 | 1/1/2024 |
ミシガン州
ミシガン州は数十年ぶりに労働権利法が廃止され「right-to-work(労働権利)」として知られる労働組合を制限する法律を廃止した州となりました。これによって、以前は認められていた、労働組合に入っている職場で労働組合費や手数料の支払いをオプトアウトする権利が消失しました。
項目 | 概要 | 施行日 |
労働管理 | 労働権利法の廃止 | 3/30/2024 |
オハイオ州
州法に大きな変更はありませんが、コロンバス市が注目すべき改正を実施しました。トレド市とシンシナティ市と同じく、同市も2024年3月1日から市内の雇用主が採用候補者に過去の給与について質問することを禁止します。
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経営・人事コンサルタント 永岡卓さん
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