SAT(Scholastic Assessment Test:エス・エー・ティー)は、アメリカではよく知られた統一テストですが、PSAT(Preliminary SAT:ピー・エス・エー・ティー)ご存知でしょうか。
PSATは、高校生を対象とした統一テストで、SAT(Scholastic Assessment Test)の準備を目的としています。
ここでは、PSAT を制作している College Board の情報をもとに、その内容をまとめました。
PSATとは
PSATは、高校生が受ける標準テストの SATの練習として受験するもので、学習レベルを測るのに役立ちます。また、特に11年生(高校3年生)にとっては、National Merit Scholarship という奨学金への応募資格を得るためのチャンスとなります。この奨学金については後述しています。
試験内容: リーディングとライティング、数学のセクションから構成されており、それぞれの基礎学力を評価する内容となっています。
スコア: PSATのスコアは、SATのスコアと同様に1600点満点で評価されますが、テストの結果は大学入学には直接関係しません。
受験時期: PSATは通常、毎年10月に実施されます。
受験のメリット: PSATを受けることで、自分の課題を把握し、SAT対策を見直すことができます。また、大学の奨学金や入学条件についての情報も入手できます。
オンライン形式で受験:SATは2024年春からオンライン形式に移行しました。PSAT も同じくオンライン形式に移行しています。
受験の練習:公式アプリ『Bluebook™』で、受験の練習ができます。
PSAT を受験する目的
COVID-19のパンデミックの最中には、多くの大学が SATなどの標準テストのスコアをオプションとする方針を導入しました。しかし、2024年からは、私立、公立、州立の高等教育機関の多くが、再びSATなどのテストスコアを入学要件に戻しています。
SAT と PSAT を制作している College Board によると、テストスコアを再導入する理由として、大学側は以下の点を挙げています:
- キャンパスで成功する可能性のある学生をより的確に特定できる
- 少数派や低所得の学生により広くアプローチできる
- 追加のサポートが必要な学生を正確に把握できる
College Board は、「SATは、大学やキャリアで成功するために必要な、読解、文章、数学の基本スキルを標準化して測定するもので、研究によると、成績、エッセイ、課外活動などの他の入学要素と比較して、学生の成功を予測するのに非常に有用とされています」と、ニュースリリースで解説しています。「特に、STEM専攻では、高校の成績のみと比べてSATスコアが38%も予測精度を向上させることが示されています。このため、SATを活用することで、多様な学生を早期に見つけ出し、キャンパスで活躍できる人材を確保する手助けになります」
こうしたことからも、PSATは、大学進学を目指すアメリカの子どもにとって重要なステップの一つとして、多くの高校が受験を奨励しています。
PSAT の種類
PSAT には、「PSAT 8/9」、「PSAT/NMSQT」、および「PSAT 10」の3種類があります。
SAT と PSAT を制作している College Board によると、「PSAT 10」は「PSAT/NMSQT」とほぼ同じテストですが、生徒は異なる時期に受験します。
テストの種類 | 目的 | 対象 |
PSAT 8/9 | 大学進学準備のベースライン | 8年生(Middle Schooler/中学生) 9年生(Freshman/フレッシュマン/高校1年生) |
PSAT 10 | 学習の進捗状況確認 | 10年生(Sophomore/ソフォモア/高校2年生) |
PSAT/NMSQT® | 学習の進捗状況確認 | 11年生(Junior/ジュニア/高校3年生) |
PSAT/NMSQT® の NMSQT は、National Merit Scholarship Qualifying Test のことです。National Merit Scholarships(米国メリット奨学金)とは、高校生を対象とした奨学金で、PSAT のスコアがこの奨学金の選考に使われます。この記事の後半に詳しく紹介しています。
PSAT の構成
どの PSAT も試験時間は2時間14分で、構成は同じです。
セクション | 長さ | 質問/タスクの数 |
Reading and Writing | 64分 | 54問 |
Math | 70分 | 44問 |
- 質問の大半はmultiple choice(複数選択問題)
- 数学の質問の一部は回答をタイプする形式
PSAT のスコアの使われ方
SAT と PSAT を制作している College Board によると、一部の奨学金プログラムでは、PSAT/NMSQTのスコアを利用して、対象となる11年生(Junior/ジュニア/高校3年生)を選定します。これにより、優秀な成績を収めた学生は奨学金の候補者となる可能性があります。
また、PSATのスコアは、他のパートナー機関やプログラムによっても活用されており、大学進学のための資金援助や学業の栄誉を得るための機会を広げる手段となっています。
ナショナル・メリット・スカラシップとは
National Merit Scholarships(ナショナル・メリット・スカラシップ)とは、高校生を対象とした奨学金です。
- 選考の対象になるには、まず、11年生(高校3年生)の10月に「Preliminary SAT/National Merit Scholarships」(PSAT/NMSQT®)のテストを受けます。
- テストを受けてから約2ヶ月後、自分の得点がわかります。
- 12年生(高校4年生/シニア/Senior/高校最終学年)の9月に、全体の上位1%未満に該当する高得点者約1万6000人が、セミファイナリストとして発表されます。公平を期すため、得点は州ごとに確認されます。また、セミファイナリストの人数は、その州の卒業生数が全米に占める割合に基づいて決定されます。
- セミファイナリストに選ばれた高校生たちは、ファイナリストになるため、成績表、校長などからの推薦状、エッセイを用意し、提出します。大学への入学申請と非常に似ています。
- 卒業目前の翌年の春、提供される約6,870件、総額約2,600万ドル相当の「ナショナル・メリット奨学金」の受賞者が発表されます。
セミファイナリストの約95%がファイナリストになると見込まれており、ファイナリストの約半数がナショナル・メリット奨学金を獲得し、Merit Scholar®(メリット・スカラー)の称号を授与されます。
また、セミファイナリストに加えて、高得点を取得した学生を “Commended Students” として表彰します。 “Commended Students” はナショナル・メリット奨学金の競争には進みませんが、企業スポンサーによる特別奨学金の候補者となる場合があります。