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ワシントン州でプロベートが不要な場合

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さて、亡くなった人がワシントン州居住者の場合、必ずしもプロベートが必要なわけではありません。

前回ご説明した通り、ワシントン州のプロベートは他の州と比べると簡単で効率的な手続きになっていますが、故人の財産の性質や名義の形態によっては、プロベートなしで故人の遺産を処分することも可能です。

もくじ

プロベートが不要な名義形態

第3回のコラムでご説明しましたが、故人の遺産が生存権付き共同名義(Joint Tenancy with Right of Survivorship)になっている場合、故人の持ち分は生存している共同所有者に自動的に引き継がれるので、基本的にプロベートの必要はありません。     

また、例えば生命保険や個人年金口座には死亡時の受け取り人を指定できますし、銀行口座も銀行によっては口座に死亡時の受け取り人を指定できるものもあります(「Payable on Death口座」や「Transfer on Death口座」と呼ばれます)。そういった口座については名義人の死亡時に指定された受け取り人に自動的に遺産が渡るため、プロベートが不要になります。

ただし、指定された受け取り人が米国居住者でない場合     は、銀行および金融機関のポリシーや税法上の理由によって受け取りの手続きが大変複雑になる可能性があるので要注意です。

また、第4回のコラムで簡単にご説明した通り、ワシントン州では夫婦共有財産合意書(Community Property Agreement)に署名することで、夫婦間の財産を共有財産にすることが可能です。夫婦どちらかが亡くなった場合に、残された配偶者がすべてを引き継ぐという旨が合意書に明記されている場合、合意書に基づいて名義変更ができるのでプロベートは不要となります。

ワシントン州では、不動産に死亡時の受け取り人を設定することも可能です。さらに、トラスト名義になっている財産については、故人名義の財産ではないため、プロベートの必要はありません。

少額のエステートの手続き

上記に加えて、遺産の合計額が少額の場合は、プロベートを通さずに名義変更をすることが可能な場合もあります。

ワシントン州の場合、故人のプロベート対象資産が$100,000以下で、かつ遺産に不動産が含まれていない場合に限り、故人の死亡日から40日が経過した時点で少額のエステート宣誓書(Small Estate Affidavit)という書類を作成してその手続きを踏むことで、プロベートが不要になります。

これができるのは、基本的に故人の配偶者や子供といった、故人の財産を相続する資格のある人で「後継者(successor)」と呼ばれます。宣誓書には後継者の名前と住所のほか、故人がワシントン州居住者であったこと、抵当権などを差し引いた故人のプロベート対象遺産の合計額が$100,000を超えないこと、プロベート手続きが開始されていないこと、葬儀費用を含む故人の負債が既に支払われたか、または準備されていること等の必要項目を含める必要があります。

また、他の後継者に対して、書面による通知をしなければなりません。そして、宣誓書と故人の死亡証明書を一緒に故人の財産を所有している人や金融機関に提示して、故人の財産の引き渡しを求めるという流れになります。逆に、故人への債務者や故人の口座のある金融機関等は、宣誓書と死亡証明を提示された時点で故人の財産を引き渡す法的義務があるので、それを拒否した場合には裁判所を通した訴訟手続きで強制的に引き渡されることになります。

上記のようにプロベートが不要な場合でも、故人の債務清算や税務処理は必要です。例えば、遺産税の適用はプロベートの有無には関係ないので、プロベート回避することは節税手続きではありません。もちろん、裁判所を通した手続きを取らない分、裁判所費用は浮きますが、それ以外の弁護士費用や税理士費用等の経費はプロベートを通すのと同様にかかりますし、ワシントン州の場合は実務的に見てもプロベートを通した方が逆に効率的に進むということもあります。

このように、プロベートを回避することが必ずしもベストであるとは限らないので、それぞれの状況をよく理解した上で判断することが大切です。

Ako Miyaki-Murphey, J.D.
パーキンズ・クーイ法律事務所(Perkins Coie LLP)
シカゴでパラリーガルとして働きながら2002年にJohn Marshall Law School(現在はUniversity of Illinois Chicago School of Law)でJ.D.を取得。2002年から2006年までハワイ州の弁護士事務所で勤務した後、2006年にワシントン州弁護士資格を取得。シアトルのFoster Garvey弁護士事務所でトラスト・エステート法の経験を積んだ後、2020年から現在のPerkins Coie LLPに勤務。エステートプランの作成だけでなく、ワシントン州のプロベート手続きやトラストの管理、日本在住の遺産受取人代理や、相続税・贈与税申告書の作成も行う。
【公式サイト】www.perkinscoie.com

当コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関するご質問は、事前に弁護士と正式に委託契約を結んでいただいた上でご相談ください。

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