ドライ・ジャニュアリー(Dry January)という言葉を耳にしたことはありますか?
これは、1月の1カ月間にわたり、アルコールを飲まないことを意味しています。
2013年にイギリスの慈善団体 Alcohol Change UK が始めたもので、その目的は、自分の飲酒習慣を見直し、健康的な生活を意識すること。
初年度の参加者は4,000人でしたが、2023年には17万5000人が参加する一大イベントとなりました。
ドライ・ジャニュアリーの目的と効果
ドライ・ジャニュアリーの主な目的には、次のようなことが挙げられます。
- 健康改善: 肝機能の回復や血圧の改善、体重管理、睡眠の質を向上させ、体力を回復する。
- 意識改革: 飲酒量を見直し、適切な飲酒習慣を作る。
- 経済効果: アルコール飲料の購入を控えることで節約する。
調査によれば、禁酒を1カ月間実施した人は、その後も飲酒量を減らす傾向があるとされています。
アメリカの飲酒のトレンド
アメリカにおけるアルコール消費は、世代ごとに大きな違いがあります。
若年層、特に Gen Z(Z世代:18~25歳)は、過去10年間でアルコール消費が大幅に減少しています。2023年の調査では、18~25歳のアメリカ人の49.6%がアルコールを摂取していると報告しており、2013年の59.6%から減少しました。ロイターは、この傾向は健康志向の高まりや「ドライ・ジャニュアリー」などの禁酒月間への参加意欲の増加と関連していると指摘しています。
また、ミレニアル世代(26~41歳)でもノンアルコール飲料の消費が増えており、ノンアルコール飲料市場の拡大を牽引しているとされています。IWSR Bevtrac の消費者調査によると、2024年4月にアメリカのアルコール消費者の13%が、アルコール飲料とノンアルコール飲料の両方を飲んだと回答しており、前年の7%から増加しています。
一方、ジェネレーションX(42~57歳)やベビーブーマー世代(58~76歳)では、アルコール消費の減少は見られますが、若年層ほどではありません。とはいえ、全体的な傾向として、アメリカ人のアルコール消費は世代を問わず減少していることが示唆されています。(Alcohol Help)
「アルコールに発がんリスクの警告表示を」 米国医務総監が呼びかけ
2025年1月3日、米国医務総監のビベック・マーシー医師は、アルコール摂取とがんリスクに関する新たな勧告を発表しました。
発がんリスクの増加
この報告によれば、1日1杯、またはそれ以下のアルコール摂取でも、7種類のがん(口腔がん、咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がん)の発症リスクが増加することが示されています。
口腔がん(Oral Cancer)
咽頭がん(Pharyngeal Cancer)
喉頭がん(Laryngeal Cancer)
食道がん(Esophageal Cancer)
肝臓がん(Liver Cancer)
大腸がん(Colonrectal Cancer)
乳がん(Breast Cancer)※女性
ガイドラインの変更の必要性
アメリカでは、がんの原因の1位は喫煙、2位は肥満(obesity)、3位はアルコールで、アルコールに関連するがんによる死亡者数は年間約2万人に上り、これはアルコール関連の交通事故による年間死亡者数約1万3500件をを上回っています。
しかし、アルコールが発がんリスクを増加させることについて知っている人は全体の50%未満であることから、マーシー医務総監は、アルコール摂取量を減らすことで、がんのリスクを低減できると強調し、特に定期的に飲酒する人々に対して、飲酒習慣の見直しを呼びかけています。
現在の米国のガイドライン(U.S. Dietary Guidelines)では、アルコールの適切な摂取量として「男性は1日2杯まで、女性は1日1杯まで」とされていますが、マーシー医務総監は、「1日1杯以下の飲酒でもがんリスクが増加する」というデータや、「アルコール関連のがんによる死亡者の17%がこの基準内の摂取量を守っていた人々に発生している」という事実などの新たな科学的知見を踏まえ、アルコール摂取に関するガイドラインの基準を引き下げるべきと提案しています。
米国の現在のガイドラインにおいて、「1杯(1ドリンク)」とは、含まれる純アルコール量に基づいて定義されています。このガイドラインによると、1杯に相当する標準的な量は以下の通りです:
ビール:12オンス(355mL)、アルコール度数(ABV)が約5%のもの
ワイン:5オンス(148mL)、アルコール度数が約12%のもの
蒸留酒(例:ウイスキー、ウォッカ、ラム):1.5オンス(44mL)、アルコール度数が約40%のもの
したがって、現在の基準がすぐに変更されたわけではありませんが、2025年に予定されているガイドライン改訂において、この基準が再評価され、変更される可能性があります。
警告ラベルの義務化を提案
また、マーシー医務総監は、タバコ製品と同様に、アルコール製品に健康警告ラベルを貼る必要性を訴えています。さらに、医療専門家や政策立案者に対しても、アルコールとがんの関連性についての教育や啓発活動を強化する必要性を強調しています。
ドライ・ジャニュアリーを成功させるためのヒント
でも、1月は新年会などの社交的な場が多い月なので、せっかくドライ・ジャニュアリーを始めても、誘惑される機会も多くなりますよね。そこで、Harvard Health や Health.com などは、1月をアルコールなしで過ごすためのヒントを提供しています。ぜひ参考にしてみてください。
- 現実的な目標を設定する。
- まず、アルコールの代わりとなる、ノンアルコールの飲み物を見つける。社交的な場面や、一日の終わりにアルコールを飲みたくなる時には、スパークリングウォーターやソーダ、またはモクテル(ノンアルコールカクテル)などを選ぶ。甘いドリンクには砂糖が多く含まれている場合があります。ノンアルコールビールやワインもオプションですが、アルコール分が0.5%まで含まれていることがあるため、ラベルを確認しましょう。
- 誘惑を避けるために、家にアルコールを置かない。誰かの家に招待された際には、自分のノンアルコールドリンクを持参するのも一案です。
- 新しい趣味に没頭する、新しいスキルを学ぶクラスを受講する、ジムなどで運動するなど、アルコールを飲む以外のアクティビティを見つける。
- ドライ・ジャニュアリーを一緒に実行できる仲間を見つける。家族でも、友人でも、一緒にできる人がいれば続けられる確率が高くなります。
- イギリス発のアプリ『Try Dry』を使ってみる。目標設定、飲酒記録、飲まないことで節約できたお金やカロリーといったモチベーションを高める情報も揃っています。飲酒量を減らしたい人や、将来的に完全にアルコールを断つことを目指している人はチェックしてみてください。
注意点
このように、ドライ・ジャニュアリーには多くの利点がありますが、いくつかの注意点指摘されています。
- 1月に禁酒をしても、その翌月から飲酒量が増加する「リバウンド効果」にも注意が必要です。
- アルコール依存症の方が突然禁酒を始めると、禁断症状が出る可能性があります。禁酒を始める前に、医療機関や専門家に相談してください。
ドライ・ジャニュアリーは、アルコールとの関係を見直し、健康的な生活を始めるための良いきっかけとなるかもしれません。これから挑戦してみてはいかがでしょうか?