
ナースプラクティショナー・助産師・看護学博士
押尾 祥子さん
Sachiko Oshio, CNM, PhD, ARNP
Nadeshiko Women’s Clinic
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子供というのは思いがけない行動をするものです。どんな事態が起こっても「子供にはやさしく対処しなさい」と犬に教えるのは、ちょっとした工夫が必要です。今回は、犬が自分の餌やドッグボーンを守ろうとして子供に噛み付く事故を防ぐために、どんなことに注意し、どんなしつけをしておいたら良いかについて書いてみます。
すでに基本的なしつけができた犬の場合は、特に新しい準備はいらないかもしれません。ここで言う基本的なしつけとは、次のようなことです。
- 呼ばれると喜んで飼い主の手元に来る。
- 飼い主が耳や歯や爪の手入れをしてもいやがらない。
- 食事の時に、飼い主の食べているものを欲しがらない。
- 餌を食べているときに飼い主が餌を取りあげても怒らない。
- 手から餌をあげると、飼い主の手を傷つけないよう、そっと受けとる。
- よその人に吠えていても、飼い主が制止すると止める。
- 決められた場所でじっとしていることができる。
こうしたしつけができていると、犬は飼い主を信頼し、飼い主の地位が自分より高いことを認識し、自分の牙を飼い主に向けてはならない、ということを覚えているので、飼い主にとって大切な存在である赤ちゃんを、自分も大切にしようとしてくれます。
気の強い犬や、シェルターからもらってきたばかりで経歴のわからない犬などには、赤ちゃんが動き出して犬と関わりあうようになる前に、次のような訓練をしておくと事故の可能性が少なくなります。
- 餌をだらだらと食べていると、食べ残しがいつもそこにあり、それを守ろうとする可能性があるので、決まった時間内に食べるように教えます。だらだら食べるくせのある犬の場合は、タイマーをかけておき、10分待って食べ終わらない場合、取り上げてしまい、次の食事時間までは何も与えません。いつもこうしていると、ちゃんと時間内に食べるようになります(これを教えておくと、食べ残しの犬の餌を赤ちゃんが食べてしまう、という事故を防ぐことにもなります)。
- 一度にたくさん餌を与えるよりも、朝と晩の2回に分けた方が、途中でお腹がすき過ぎて怒りっぽくなることを避けることができます。
- 犬が自分の餌を守ろうとする場合には、次のような手順で慣らしていきます。
- まず、犬が餌を食べ始めたら、犬の名を呼び、犬の大好物(チーズやソーセージなど)を手に持っているのを見せながら近づき、手早く餌の上に置きます。
- それに慣れたら、犬に好物を見せながら、犬の食器を少し持ち上げ気味にし、好物を乗せてから戻します。
- 餌入れを取り上げて、好物を入れてから犬に返すことができるようにしていきます。
- これができるようになったら、遊びに来た友達や、小学生以上の子供に協力してもらって、餌を持って近づくところから始めてもらいます。
- これをときどき繰り返したり、違う人に好物を入れてもらったりしていると、犬は餌を食べている時に人が近づいてくるのを待ち望むようになり、餌を食べている時に子供が近づいても、むやみに噛み付く可能性が低くなります。
- 手から餌をもらう時は、優しく取るように教えます。これは、あまりお腹がすき過ぎていない時をねらって教えます。握りこぶしの中に小さく切った犬の好物を入れ、少し覗かせておきます。噛もうとしたら、握ってしまって、取れないようにします。舌でなめようとしたら、少しこぶしを開いて、1つづつ食べられるようにします。これを繰り返していると、ガブッと取ろうとすると好物がもらえない、ということを覚え、そっと取るようになります。
- 「お預け」「ちょっと待て」という言葉を教えておきます。子供が犬のドッグ・ボーンなどを持ったときに、すかさず、「ちょっと待て」とか、「お預け」と犬に言うことによって、犬が子供の手からドッグ・ボーンを取ろうとするのを防ぐことができます。子供には、別のおもちゃを与え、犬にドッグ・ボーンを返します。
- 餌なら取り上げられても大丈夫なのに、ドッグ・ボーンだけは守ろうとする犬もいます。そういう場合は、クレート(犬のかご)トレーニングをし、クレートの中に入っている時にだけ、ドッグ・ボーンをあげるようにします。
クレート・トレーニングや「ちょっと待て」の教え方などは、犬の躾に関するウェブサイトを見てください。私の好きなトレーニング法は、クリッカーを使い、褒めながら、楽しみながら教える方法です。クリッカー、犬のしつけ、とサーチ・エンジンで検索するといろいろなウェブサイトが出てきますので、参考にしてください。
掲載:2006年2月