ワシントン州認定ソーシャルワーカー
角谷 紀誉子さん
2019年3月15日付で、コンサルティングのサービスは終了しました。
【公式サイト】 www.successabroadcounseling.com
私の悩みは自分の暴力です。今2年付き合っている彼がいます。彼も他の国から来ていて私たちは英語で会話をします。最初のころは口喧嘩で済んでいたのですが、一年たったころにお互い、物に当たるようになりました。今ではお互いに手を出し合います。お互い暴力を振るい終わったあと正気を取り戻すと謝りあい、何事もなかったかのように仲直りです。一時期は暴力がすごくはげしくなりましたが、2人でやめようと誓いあい、徐々に減ってきていますが、それでもカッとしたとき手が出てしまいます。私は父の家庭内暴力で育ったのでその影響が出ているのかなとも心配です。彼も彼の家族で問題を抱えています。今まで交際した人とはこういうことはまったくありませんでした。もし自分に子供ができた時にも同じことを繰り返すのではないかと心配です。
回答:家庭内暴力で育つと、自分がやられる恐怖や悲しみ、(このケースでは)父親への怒り、その状況をどうしようもできなかった周りの大人たち(母親や親戚など)への不信感や無力感、父親の機嫌だけを中心に家が回る不条理さなどを抱えるようになります。あなたの場合も既にわかっているように、そういった影響が彼との関係の中で出ているようです。よく暴力がある関係で聞かれるのが「あなたが私に殴らせる」とか「他の人とではここまで私は怒らなかった」ということです。相手が誰であれ、関係が深くなれば「強い怒り」を感じる時はいつかやってきます。問題は「怒りの処理」の仕方です。あなたも彼も強い怒りを暴力で処理していて、それがあなたに2人共が実家の問題を抱えているのではと警鐘を鳴らしたようです。
理想としては、2人共が個人カウンセリングで実家の問題を解決する必要があります。あなたの場合は、父親の家庭内暴力が家庭にどんな影響を及ぼしたか、他の家族のメンバーはどんなふうにそれを受け止めていたか、なぜ父親は暴力を振るったのか、今のあなたの人生にはどう関係しているのか、あなたの怒りの原因は何か、などを追求して解明していくのです。そうして初めて、あなたは健康な人間関係が持てるようになるのです。
家庭内の大人の行動を見て子供は育ちます。たとえば父親が外で嫌なことがあった日は決まって酒を飲んでは家族に暴力を振るっていたとすると、子供はそんな父親の姿を軽蔑はしても、外での嫌なことを上手に処理している他の男性を見る機会がないため、「大人になって嫌なことがあったら、お酒を飲んで暴れてもいい」と思うようになることがあります。その場合、子供が学校に行くようになり、友達の親や本やテレビを通じて、酒を飲んで家族に暴力を振るわない父親の存在を知っても、別世界の人のように感じるだけです。
あなたが父親の暴力のためにとてつもない怒りや悲しみを溜めているのはあたりまえです。そして今の彼が少しでもその怒りに触れるような言動をすると、あなたの怒りはコントロールがきかなくなるほど爆発してしまうのです。あなたがそんな自分に気づき、子供ができた時のことをも心配しているのはとても立派なことです。家庭内暴力であなたが辛い思いを経験したことは残念ですが、あなたは「この家庭状況はおかしい」「これは自分の心理にも影響をしているはずだ」「なんとかしてこの悪循環を断ち切らねば」と物事を客観視できる能力と向上心も備えています。自分の良さ・賢さ・強さを再確認し、よりよき人生のために、カウンセリングなどで今まで溜まりに溜まった怒りのお掃除をしてください。そうすることで、もっと自分を知ることができ、パートナーとしても母親としても自信がついていきます。
掲載:2005年9月
コラムを通して提供している情報は、一般的、および教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 このコラムから得られる情報に基づいて何らかの行動を起こされる場合は、必ず専門家に相談するようにしてください。