みなさま、はじめまして!ご紹介に預かりました、小百合です。
アメリカに来て4回目の春休みは、シアトルから車を3時間ほど南に走らせ、オレゴン州のポートランドに行ってきました。ダウンタウンとカフェや古着屋の多いホーソン通りを中心に回ったのですが、とてもお洒落な人が多く、服が好きな私はついつい興奮してしまいました。
平日でも昼間からお店の外の席でビールを飲みながら話していたり、家の外のベンチでリラックスしている大人たちは、なんだか自由な雰囲気そのもの。日本でも知られるようになったクラフトビールや Stumptown Coffee などのコーヒーショップ、そしてライフスタイルなどを含めたポートランド文化をもっと知りたくなりました。
それでは、『シアトル カフェ探訪』 第56回のスタートです。
今回ご紹介するのは、真美さんに引き続き、シアトルの東に位置するレドモンドにある、『Victor’s Celtic Coffee Company』です。
シアトルの中心部とは一転して、ゆったりした空気が流れるこの地域で1989年に創業したレドモンドでは老舗のカフェ。私が初めて訪れたのは約3年前なのですが、小さな自営業のお店が並ぶ一角に馴染んでおり、それでいて建物の色使いはどこかヨーロッパ風で一度見たら忘れないという印象でした。日本にいた時から古民家を改装したようなヴィンテージ感の漂うカフェが好きだったので、同店はシアトル地域のカフェの中でもお気に入りの一つなのです。
お店の中は奥行きがあり、とてもアットホーム。木をふんだんに使っているからか、ロッジの中にいるような雰囲気です。この日は朝からとても晴れていて、外から差し込んでくる太陽の光でいつもより店内が暖かいように感じました。
今回私が頼んだのはハウススペシャルメニューの一つで、同店でも人気があるとおすすめされた『Black Forest』というドリンク。ラズベリーまたはチェリー、チョコレート、エスプレッソ、ミルクが入っていて、チョコレートホイップクリームが上にトッピングされています。これまで食べたり飲んだりしたことのないものはすぐに挑戦したい派の私ですが、夏がもうすぐ来るのでダイエットを少し気にして、甘さ控えめとホイップクリームを少なめにしてもらいました(笑)。
一口飲むと、とてもまろやかで優しい味が口いっぱいに広がりました。エスプレッソとミルクとチョコレートを使用したモカに少し近い基本の味に、ほんのり香るラズベリー。チョコレートの深みのあるホイップクリームの食感もあわさって、なんだかすごく贅沢なものを飲んでいるような気がしました 。
ハウススペシャルメニューは全部で10種類あるのですが、もう一つのおすすめはヘーゼルナッツ、アイリッシュクリーム、チョコレート、エスプレッソ、ミルク、チョコレートホイップが入った『Irish Nudge』だそうです。
この日は朝ごはんを食べていなかったので、同伴者と一緒に『Roma』というサンドイッチと、トマトスープを注文。
サンドイッチは外がカリカリで、私の大好きなターキー、バジルソース、チーズがはさんであります。トマトも新鮮な味で全体的に無駄な味付けがまったくなくあっさりしていて、とてもおいしかったです。
自家製のトマトスープはさっぱりしていて、少しだけスパイスが効いていたので聞いてみると、胡椒とチリペッパーを少々加えているだけとのこと。トマトスープが好きな方にはおすすめです。
今回お話してくれたのは、マネージャーのヴィニーさん。
まず、カフェの名前について。『Victor’s Celtic Coffee Company』という店名の Celtic は「ケルト(人)の」という意味。ケルト人はローマ帝国に征服される前の古代ヨーロッパの先住民族として知られています。そして創業した当初のオーナーさんがアイルランド人だったことからこのお店の名前が付いたそうです。これまで注文したドリンクも、店がヨーロッパ風の外観であることも、つじつまがあいますね。
そして、扱っているコーヒー豆について。同店では豆を自家焙煎しているのですが、仕入れている原産国はグアテマラ、コロンビア、コスタリカ、ウガンダなどさまざま。毎週焙煎をして常にフレッシュな状態で提供できるようにしているとのことでした。
お店が扱っている豆の中にはイタリアとフランスのロースターから仕入れているものもあるそう。そういったヨーロッパで焙煎されている豆の特徴はヴィニーさん曰く「ダークな味わい」。エスプレッソより味が薄くなりやすいドリップコーヒーに使うとのことでした。
私が飲んだ 『Black Forest』 にはエスプレッソが入っていましたが、同店のエスプレッソドリンクにはお店のオリジナルのブレンドを使用していて、「それは僕たちのシークレットレシピ」とのこと。こんな風に自分たちのオリジナルなアイディアでお客さんを魅了し、それを守り続けるのも老舗ならではですね。
お店には写真に出ているもの以外にもたくさんの種類のぺイストリーがあったのですが、主な仕入れ先はシアトルにある Alki Bakery と Blazing Bagels のレドモンド店だそう。アップル・タルトとコーヒーケーキは自家製なので、次回ぜひ食べてみたいと思います。
最後に、お店に入ったときに目に入ったこの看板について。
「We Do Not Have WiFi. Talk to Each Other. Pretend It’s 1995」
(当店にはWi-fiは提供していません。1995年だと思って、会話をしてください)
店内を見渡すと、ラップトップを広げて作業している人はほとんどおらず、みんな楽しそうに会話をしていたり、お客さん同士で気軽に声を掛け合っている姿が見られました。
「僕自身、友人とカフェに行ったら満席で、見渡すとたくさんの人が一人で座ってラップトップと向かい合っているのを見た時、いい気持ちがしなかったんだ」と、ヴィニーさん。
「コミュニケーションが途絶えず、コミュニティが生まれ広がっていく場所であることが一番大事」。
アメリカや日本ではカフェが Wi-Fi を提供しているのが一般的で、シアトル地域でもカフェで勉強や仕事をするのが日常の風景となっていますが、そうなると減ってしまうのが人とのコミュニケーション。カフェを利用する目的がさまざまでも、インターネットが普及する前から存在していたカフェの姿を、老舗であるこのお店が教えてくれたように感じました。
みなさんも、Victor’s Celtic Coffee Company でぜひアイリッシュの文化の雰囲気とコーヒー、そして一緒に来た人や他のお客さん、お店の方との会話を楽しんでみてはいかがでしょうか。
Thank you for a good time and coffee!
次は春休みにニューヨークに行って、久しぶりに乗る地下鉄の便利さに感動した彩乃さんです!
Victor’s Celtic Coffee Co.
【住所】7993 Gilman Street, Redmond(地図)
【席数】店内約25席 / テラス席約3席
【公式サイト】victorscelticcoffee.com/coffee.htm
【Wi-Fi】なし
【電源】なし
辻小百合(Sayuri Tsuji)
ベルビュー・カレッジに正規生として2016年春から留学中。現在は同大学でデジタルマーケティングの学士号を取得するため、授業で山ほど出る課題とプレゼンに日々追われる毎日。2019年にやりたいことは、カフェ、古着屋巡りとハリーポッターの本を全巻読むこと。
掲載:2019年4月
このコラムの内容は執筆者の個人的な意見・見解に基づいたものであり、junglecity.com の公式見解を表明しているものではありません。