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第3回 ~モメない相続のために~ 遺言書とエンディングノート(1)

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相続診断士、ファイナンシャル・プランナー 泉 三紀夫さん

一般社団法人 相続診断協会 企画推進部部長
相続診断士、ファイナンシャル・プランナー 泉 三紀夫さん

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第1回のコラムでは、相続財産が1,000万円以下の家庭でもモメているという実態。
第2回のコラムでは、相続税の大改正が行われること(今年の1月1日に改正されました)

今回のコラムでは、「モメない相続を迎えるために何をすべきか」という視点からお話を進めていきたいと思います。まず遺言(ゆいごん)について。

「遺言書を書いておくとモメない!」と一般的によく言われています。ところが実際は遺言書があったために、モメてしまう家族が非常に多いです。なぜモメてしまうのでしょうか?

そもそもなぜ遺言書を書かなければいけないかというと、1円単位まできちんと分けられないからです。平等に分けられるなら書く必要はまったくありません。しかし、家だったり土地だったり自社株だったり、きっちり平等に分けられないものがあれば、遺言書を書く必要があるということをご理解ください。

遺言書が原因でモメる3大要因

  1. 遺言書には、書き方、保管の仕方などいろいろ方法があります。これに従っていないことから、正式に遺言書として認められず、無効となってしまうケース。
  2. 遺言書として認められたとしても、民法上の相続財産の分け方から逸脱してしまっているケース。
  3. 遺産の分割については書かれているが、なぜそのように分けたのか、理由が全く書かれていないケース。

1. のケース

遺言には、公証役場で公証人に作成してもらう「公正証書」と、「自分で書いて、箪笥や自宅の金庫等に保管しておく」という「自筆証書」の、2種類があります。後者の遺言書には、日付が記入されていないとか、6月吉日など日付が特定できない、相続人全員の名前が書かれてなかったりといった、正式な遺言書の形式になっていないものが多くあります。そうなると遺言書そのものが否定され、遺言の内容を不服とする人から遺言書無効の訴えが起こされます。例えば、3人兄弟のうち一人の名前が抜けていたりすることもあります。親の最後の公的な文章に自分の名前が書かれていないなんて、悲しすぎますよね!

2. のケース

典型的な遺言書は、「全財産を宗教団体●●に寄付する」「●●●●(個人名)に全財産を遺贈する」といったものです。しかし、民法では、相続財産の相続割合が決められています。両親と子供2人の家庭で、夫が亡くなった場合であれば、妻2分の1、子供Aが4分の1、子供Bが4分の1。これが法定相続分として相続財産をもらえる権利です。蓋をあけてみれば相続財産が貰えるどころか、まったく知らない宗教団体や個人に寄付や遺贈すると言われたら・・・。ですので、そうならないように、民法では相続財産を貰える最低限の権利を認めています。これを「遺留分」といいます。今回のケースですと、「全財産を寄付・遺贈する」と記載された宗教団体や個人がもらえるのは法定相続分の半分で、妻は4分の1、子供8分の1を貰える権利があります。まったく遺留分を無視した一方的な遺言書も数多く出てきます。そんな遺言書が出てくると、裁判に発展することになります。

3. のケース

「自宅の土地・家屋は長男に相続させる。金融資産は2分の1づつ長男と次男で分ける」。遺言書にこうした分け方しか書かれていない場合にモメるケースです。この財産内訳が、自宅の価値は3,000万で、現金は1,000万円という場合、なぜこう分けたのか理由が全く書いていないと、弟としては現金500万円だけとなります。たいてい、「あまりに理不尽で納得がいかない」とモメてしまいますが、例えば、家に関しては、「先祖代々の土地なので、売らずに墓も含めて長男に引き継いで守っていってほしい」など相続財産に対する亡くなった方の想いが丁寧に書かれていると、弟としても納得しやすいものです。

遺言書の他に手紙が残っているケースもありますが、その手紙のおかげでで円満な相続になるケースもあります。

相続人達でモメないようにと書いた遺言書が、逆に遺言を書いてしまったがために、モメさせる火種になっている現実が数多くあるということを、ぜひここでご理解いただければと思います。遺言書を書く時は、きちんとした知識と想像力を持って書くようにしてください。

次回は、正しい遺言書の書き方のポイントについてお話します

(2015年1月)

コラムを通して提供している情報は、一般的、及び教育的情報であり、読者個人に対する解決策や法的アドバイスではありません。 読者個人の具体的な状況に関しては、直接専門家・弁護士にご相談下さい。

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