在シアトル日本国総領事公邸で1日、ワシントン州日米協会の主催する学校訪問プロジェクト 『Japan in the Schools』 のこれまでの実績を讃え、さらなる協力を求めるレセプションが開催された。
ボランティアと難波総領事（最前列中央）。総領事の両隣は、積極的なボランティア活動に対する感謝状を総領事から授与されたリリー・マックマハンさん（左）と根岸幸子さん（右）。
ハワイ州に次いで米国で2番目に日本語を勉強する生徒人口の多いワシントン州。1994年に開始された同プロジェクトは大きな発展を遂げ、15年間でおよそ1,300クラス、30,000人の生徒に日本文化を紹介してきた。高校生を対象にした 『日本語クラス訪問』 と、小学生を対象にした 『ジャパン・イン・スーツケース』 の2つのプログラムに分かれており、今年は約50人のボランティアが13高校・34小学校を訪問し、約2,300人の生徒に日本文化を紹介。日米協会を代表してプレゼンテーションを行った小林めぐみさんは、「特に小学校などで異文化を教えることは、生徒が大きくなった後、異文化や外国語に対する抵抗感を少なくすることにもつながります」と、その意義を語った。
小学校で行なわれる 『Japan in the Suitcase』 の実演
プレゼンテーションの後は、英語を話すリーダーと、日本語を母国語とするアシスタントが一組になって行なう 『ジャパン・イン・スーツケース』 の実演が行われた。日本を中心にした世界地図やランドセル、黄色い通学帽などを用いながら、アメリカの小学校と日本の小学校の類似点、相違点について、生徒とコミュニケーションを取りながら分かりやすく説明し、子供たちのやる気を引き出していく。生徒役としてこの実演に参加した矢吹颯麻（やぶき・そうま）君の母親で、ボランティア歴3年の矢吹亜紀子さんは、颯麻君が小学校に入学してからこのボランティアを始めたとのこと。「事前にワークショップで練習した後、初めは経験者と共に学校を訪問しました。急に全てをやるのではなく、段階を踏んで行くのであまり心配はないですね。ボランティアを始めてから、子供たちから受ける質問がきっかけになって、自分でも日本の文化をもっとよく知ろうといろいろ調べるようになりました」と話してくれた。また、この実演に参加した小学校1年生・2年生・4年生の男女3児の母親、シャリリン・リップマン さんは、英語のリーダー役のボランティアを始めたばかり。「とても楽しくて、勉強になります。子供たちはもっと知りたいと言いますし、ものすごい集中力で参加してくれますよ。」
レセプションの後半には、プログラム開始当初からボランティアとして積極的に活動しているリリー・マクマハンさんと、同じく長年ボランティアを続けている根岸幸子さんに、難波充則・在シアトル日本国総領事から感謝状が授与された。根岸さんは「すぐに答えられないような難しい質問が飛んでくることもあります。そんな時は、正直にそれを伝え、”後で調べて先生にお伝えします” と答えれば良く、心配ありません。また、”gifted” の子供たちのクラスでは、担任の先生が質問の答えを自分で見つけるように言うと、子供たちがちゃんと自分で辞書で調べて答えを見つけたこともありました」と過去の経験を振り返り、マクマハンさんも、「子どもは吸収が早いので、目に見えるように変化していきます。プレゼンテーションが終わった後に絵や手紙を送ってきてくれるのも嬉しいですね」と、やりがいを語ってくれた。 ボランティアの力で15年も続いている 『Japan in the Schools』。他州でも同様のプログラムが試みられたこともあったそうだが、このように継続して提供されている州は他に例がない。ボランティア一人ひとりの生き生きとした表情からは、『Japan in the Schools』 によって変化するのは子供たちだけではないことを教えられた。
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※ボランティア希望者は9月・10月に開催されるワークショップに参加し、10月から翌年6月にかけて、平日昼間に学校を訪問。
※高校の 『日本語クラス訪問』 はほぼ日本語で行われる。
※小学校の 『ジャパン・イン・スーツケース』では、日本人は基本的に日本語担当者として参加するため、英語の能力は特に問われない。
掲載：2009年10月5日
