10月2日午前、シアトル市のノースゲートとユニバーシティ・ディストリクトを結ぶライトレールの「ノースゲート・リンク」が開通しました!
2012年に建設工事が始められた、ノースゲート、ルーズベルト、ユー・ディストリクトの新しい3つの駅を結ぶ4.3マイル(約6.9km)の区間です。
さっそく初日の2日に乗ってきましたので、レポートをお届けします。
ユー・ディストリクト駅
今回オープンした3つの駅のうち、一番ダウンタウンに近い駅。ワシントン大学のキャンパスから2ブロックという、とても便利なロケーションです。これまでのライトレールの駅と比べると、デザインがモダンで、広々としているように感じました。
当日は午前11時過ぎにキング郡のコンスタンティン行政長官、シアトルのダーカン市長、サウンドトランジットの CEO ピーター・ロゴフ氏、ワシントン大学のアナ・マリ・コース学長、シアトル市議などが出席して、スピーチとリボンカッティングを行いました。ワシントン大学のマスコット、着ぐるみのハスキー犬の名前は Harry the Husky。リボンカッティングを盛り上げてくれました。
ライトレールに乗る場合、ORCA を使う人は、乗る前にスキャナでタップ、降りた後にもまたタップ。切符を買う場合は、タッチスクリーンで簡単に買うことができます。ちなみに、すべて各駅停車で、快速や急行はありません。切符売り場にいた職員さんが、使い方がわからない人に説明していました。
大多数の駅に自転車のケージ(cage)、ラック(bike rack)、ロッカー(bike lockers)があり、各駅に階段、エレベーター、エスカレーターがあります。
今はまだパンデミックの最中なので、駅構内でもライトレールの車両内でも、マスクをする必要があります。車内のドアの近くには、無料でもらえるマスクが入った透明の箱がついていました。
数十秒かかる長いエスカレーターを2本も乗り継いで、ようやくプラットフォームに到着。最初にプラットフォームに入ってきた車両は、サウンドトランジットが使用されてきた近畿車輛製のライトレール車両。
2019年に「ドイツのシーメンス・モビリティ社製のS700型車両(車両自体はサクラメントで製造されています)を発注し、ノースゲート・ラインにも使用する」とサウンドトランジットが発表していたので楽しみにしていたのですが、この日に乗った計6本の車両はどれもシーメンスの車両ではなくて残念~。
サウンドトランジットがシーメンスに発注したのは152台で、1台410万ドルなので、合計6億2400万ドル。ライトがもっと明るいLEDであること、どこを走っているかの表示が文字だけが表示される電光掲示板ではなく画面つきの路線図になっていること、窓がより大きいこと、自転車をかけるフックが1車両に4つあり(畿車輛の車両では1車両に2つのみ)通路にはみ出さない配置になっていること、車内のスペースが大きいこと、70席の座席のカバーは布製であること、などといった特徴があるそうです。特に車両の前面のデザインと車内の現在地表示が一番分かりやすい違いだと思うので、これから乗る方は、それを目印にしてみてください。
ルーズベルト駅
ルーズベルトといえば住宅街のイメージですが、ルーズベルト駅もこれまた便利なロケーションにあるんです。プラットフォームから、2つの長いエスカレーターを使って南口に出ると、左斜め前にはホールフーズやダイソーが入っているルーズベルト・スクエア、西側には朝御飯に人気のポーテージ・ベイ・カフェが入っている建物があります。カフェやレストランがひしめく市民の憩いの場グリーン・レイクの東岸までは西へ約5ブロック。
ここでも駅構内外に設置されているアート作品に注目してみてください。それぞれの作家の思いを、サウンドトランジットの公式サイトで読んでいくのもいいかもしれません。
ノースゲート駅
今回オープンしたユー・ディストリクト駅とルーズベルト駅は地下駅ですが、ノースゲート駅は高架駅。横を走る高速道路のI-5より少し高い高さにあるので、見たことのない高さから高速の西側と東側を眺めて、「ずっと車で走って来たこの区間をライトレールで走れるようになったんだなあ」と、余計に感慨深くなりました。実際、これまで電車のあるところに住んだり旅行したりしたことがなかった人にとっては、すごいインパクトがあるわけですね。
ノースゲート駅から、I-5で分断されてしまった西側の湿地帯、その向こうにあるノース・シアトル・カレッジの駐車場まで全長1900フィート(約580m)の新しい橋ジョン・ルイス・メモリアル・ブリッジでアクセスできるようになりました。ジョン・ルイスとは、公民権運動の活動家の一人で、下院議員として活躍した故ジョン・ルイス氏のこと。オープニングの日は、カレッジの駐車場で式典が行われ、歩く人、ストローラーを押す人、自転車やスケートボート、キックスクーター、車椅子に乗る人、子どもが乗ったストローラーを押す人などがのんびり歩いていて、コミュニティ感がありました。
このノースゲート駅からユーディストリクト駅までは5分。車両には、自転車の人、ストローラーの人、リーシュでつないだペットの犬を連れて乗っている人もいました。「犬も乗れるなんて、日本とは違うなあ」と思うかもしれませんが、実はバスでもライトレールでも許可されているのは補助犬のみで、やはりペットは小型のキャリアに入れるのが規則となっています。(ちなみに、同じ地域でキング郡が運行しているバスのメトロは、例外はあるものの、基本的にペットの犬もリーシュにつないでいれば同伴できます)
本当に基本的なことですが、サウンドトランジットの公式サイトを改めて見てみると、シャツと靴は常時着用、寝転んだり、座席に足を載せたりしないことなどの規則がリストされていました。
FBI「ヘイトクライムを体験・目撃したら通報を」
シアトル市「バイアス(偏見)にもとづく行為を体験・目撃したら通報を」
車内には、ヘイトクライムやバイアス(偏見)にもとづく行為の通報を呼びかける表示が。ユー・ディストリクト駅のオープニングのイベントでも、サウンドトランジットの CEO が「サウンドトランジットはヘイトクライムやバイアスを許さない」とスピーチの中で述べていて、観衆から拍手が起こっていました。以前にスタッフブログでご紹介した『「HOLLABACK! バイスタンダーのワークショップで学んだ「5つのD」』を改めて見直したいと思います!
運行スケジュールライトレールは、ピーク時には毎8分に1本運行する予定。主な駅までの所要時間はこんな感じ。
ノースゲート駅~ユニバーシティ・ディストリクト駅: 5分
ノースゲート駅~ワシントン大学駅: 7分
ノースゲート駅~ウエストレイク駅(ダウンタウン): 14分
ノースゲート駅~スタジアム駅(ソードー): 20分
ノースゲート駅~シアトル・タコマ国際空港: 49分
ルーズベルト駅~キャピトル・ヒル駅:8分
ユニバーシティ・ディストリクト駅~ウエストレイク駅(ダウンタウン): 8分
これでシアトル大都市圏のシアトル市内と南北の移動がますます便利になったわけですが、2023年に「イーストリンク」をベルビューまで、2024年にさらに北のリンウッド、東のレドモンド、南のフェデラル・ウェイまでつなげる工事が進められています。
「ライトレールって、どうやって作られてるんだろう?」と思った方は、サウンドトランジットが公開している動画をぜひ。
シアトルの中心地は建設ラッシュが続いていますが、中心地と周囲の地域を結ぶライトレールのおかげで、駅の周辺も開発が進み、シアトルの街が広い範囲で変化しています。人口が増え続け、パンデミックで少し空いた道路が今また渋滞し始めていることを考えると、次世代のためにもライトレールというオプションはなくてはならないものですね。