シアトルは「セカンドウェーブ」を牽引したスターバックスが創業した街として知られていますが、1980年~2000年代初期から人気の老舗カフェやロースターカフェもシアトルのコーヒー文化の発展に欠かせない存在です。ぜひ足を運んで、シアトルのコーヒー文化の変化を感じてみてください。コーヒー豆を自家焙煎するロースターカフェ(roaster cafe)として大成功しているところもあるので、自分好みの豆を見つけるのもシアトルでの楽しみの一つです。
ユニバーシティ・ディストリクト:Cafe Allegro
創業1975年
ワシントン大学シアトル校のキャンパスから1ブロックのところにある小さなロースターカフェ。裏通りに面しているので目立ちませんが、むき出しのレンガの壁や使い込まれたテーブルや椅子、カウンターなどが年月を感じさせます。コーヒー豆は、世界各地の小規模コーヒー農家から輸入した豆を店内で少量ずつ焙煎したもので、深みのあるシアトルスタイルが味わえます。シアトル市内近郊で開催されるイベントのポスターや、ローカルのアーティストの作品を展示し、コミュニティのためのイベントの場としても使われています。
ダウンタウン&サウス・レイク・ユニオン:Monorail Espresso
創業1980年
名前の由来は、シアトルのモノレールの線路の下に置いたエスプレッソ・カートと呼ばれる移動式屋台で営業を始めたこと。今は歴史的建造物に指定されている重厚な石造りの建物の一角で営業しており、テイクアウトのみの窓口にはいつも行列ができています。支払いは現金のみ。使用している豆はワシントン州ラングレーにあるマカティオ・コーヒー・ロースターズのもの。2015年にダウンタウンの南端にあるコロンビア・タワー(75階は有料の展望台になっています)のロビーに2号店、2018年4月にサウス・レイク・ユニオンに3号店、2024年にコンベンション・センター『SUMMIT』に4号店を開店しました。
ベルタウンなど:Uptown Espresso
創業1984年
“Home of the Velvet Foam” という謳い文句で知られるロースターカフェ。ベルベットのように柔らかく、なめらかな舌触りのフォーム(ミルクをスチームした時にできる泡)を乗せたラテが人気。コーヒー豆は自家焙煎して袋売りしており、パイやケーキなども販売しています。長年にわたり経営してきたダウ・ルクレル氏が2018年7月に他界した後、シアトルの Fonté Coffee Roaster のオーナー、ポール・オドム氏が買収しました。クイーン・アンにあった1号店は2021年に閉店しましたが、2024年9月現在、ベルタウン、マグノリア、ピア70、ウエスト・シアトルのデルリッジとジャンクションで5店舗を展開しています。
キャピトル・ヒル&サウス・レイク・ユニオン:Espresso Vivace
創業1988年
豆の品質、エスプレッソ・ドリンクの味、バリスタのスキルなど、すべての面でトップクラスのロースターカフェの創業者としてシアトルのカフェ・シーンを牽引してきたデビッド・シュマーさん。1994年に教材として発売したラテ・アートのビデオも大評判を呼び、コーヒー界の伝説的存在となりました。もともと1号店があった建物は2008年に取り壊され、今はライトレールのキャピトル・ヒル駅となっていますが、同年に同じ通りに新しい店を開店。2021年9月現在、キャピトル・ヒルに2店舗、サウス・レイク・ユニオンに1店舗を展開しています。ここでバリスタになれるのは1年間のトレーニングを修了できた人のみだそう。デビッドさんのインタビューはこちら。
ダウンタウン&ベルビュー:Fonté Coffee
創業1992年
有名ホテルなどへのコーヒー豆卸業者としてビジネスを展開していた同社が2009年8月にフォー・シーズンズ・ホテル・シアトルの1階に開店したロースターカフェ。スターバックスでマスター・ロースターとなったポール・オドム氏がシアトルで創業しました。世界中の良質の豆の中からさらに厳選された10種類以上の豆は、どれも生産量が限られている貴重なものだそう。シアトル店では、ワインやビール、カクテル、軽食も揃っています。2016年にシアトルの東にあるベルビュー市に2号店を開店しました。1984年創業の 『Uptown Espresso』を2018年に買収し、シアトル市内近郊の店舗をそのまま維持しています。
グリーンウッド、ケンモアなど:Diva Espresso
創業1992年
シアトル市内のグリーンウッドで、2人のパートナーが創業したカフェ。コーヒー豆は2001年にノース・シアトルにオープンした姉妹会社の Highlands Coffee Company で焙煎しています。2021年9月時点で、シアトル市内のグリーンウッド、ダウンタウン、ファースト・ヒル、ウォーリングフォード、そしてケンモア市などに店舗を展開しています。
フリーモント:Lighthouse Roasters
創業1993年
小規模のコーヒー農家から仕入れた豆を自家焙煎しているロースターカフェ。シアトルのバリスタたちの御用達と言われていますが、フリーモントの閑静な住宅地にあるためそれほど混んでおらず、隠れ家的スポットと言えます。店内にある大きな機械で少量ずつ焙煎し、各地のカフェにも豆を卸しています。ローカルのミュージシャンによるライブがある日も。
クイーン・アンなど:Caffe Ladro
創業1994年
創業当初からサステナブルで道徳上正しい形で生産されたコーヒー豆を扱うことにこだわってきたロースターカフェ。1号店はアッパー・クイーン・アンにありますが、2018年5月現在、市内近郊に10店舗以上を展開しています。2000年の時点ではフェアトレードのコーヒー豆のみを扱うカフェでは最大規模で、2011年にロースターとしての事業も始めました。現在はシアトル市内近郊に10店舗以上を展開しています。カフェではアメリカンな自家製のケーキやスコーンも販売しています。「Caffe Ladro」とはイタリア語で「コーヒー泥棒」という意味。
キャピトル・ヒルなど:Caffe Vita
創業1995年
フェアトレードのシステムを飛び越し、コーヒー農家から直接仕入れるシステムを始めたロースターカフェ。2020年にシアトルのオーガニック・カフェ『Fiore』の創業者、デミング・マクリースがオーナーとなり、2021年現在はワシントン州各地、オレゴン州ポートランド、そしてニューヨークにも展開しています。1号店はスペースニードルのあるシアトル・センターに近いローワー・クイーン・アンにありますが、キャピトル・ヒルの East Pike Street の店舗が最大規模。奥にはドイツ製の大きな焙煎機があり、直営店で使用する豆も卸売り・小売の豆もすべて一ヶ所で焙煎しています。コーヒー豆を均等にローストするため、今でも手作業を重視。その成果もあって、シアトル近辺のカフェやレストラン約500店舗にコーヒー豆を卸すようになりました。になりました。『Fiore』は現在、『Caffe Vita』のオーガニックラインのコーヒーを代表しています。
ユニバーシティ・ディストリクト:Ugly Mug Cafe & Coffee Roasters
創業1995年
ワシントン大学から数ブロックのところにある小さなカフェ。名前もロゴもインパクトがあります。コーヒー豆をペルー、ブラジル、メキシコ、エチオピア、グアテマラなどから仕入れ、自家焙煎しています。
グリーン・レイクなど:Zoka Coffee Roaster & Tea Company
創業1996年
スターバックスがまだ5店舗しかなかった1979年当時から15年にわたり同社の焙煎部門を担当した、業界では豆の焙煎に関して最も権威あるロースターの一人と言われるティム・マッコーマックさんが、友人でスペシャリティ・コーヒー協会副会長を務めていたジェフ・バブコックさんと1996年に創業しました。豆の焙煎やバリスタの教育などにこだわりを持ち、ドリンクのクオリティの高さでは定評があります。
パイオニア・スクエア:Zeitgeist Coffee
創業1997年
シアトル発祥の地、パイオニア・スクエアのカフェ。むき出しの煉瓦、木を多用したインテリアがパイオニア・スクエアらしさを感じさせます。アーティストのサポートにも積極的で、常にさまざまなアーティストの作品が展示されています。
キャピトル・ヒルなど:Victrola Coffee Roasters
創業2000年
キャピトル・ヒルでも北部の15th Avenue にまだカフェが少なかった時代がありました。そんな時にオープンした同店は、一躍人気カフェに。数年後には店舗を拡張し、2021年現在はシアトル市内に数店舗を展開しています。創業から数年後にコーヒー豆の自家焙煎もスタート。今も変わらず落ち着いた雰囲気の店で、根強い人気があります。
パイオニア・スクエア 1号店:Caffe Umbria
創業2002年
イタリア出身のエマニュエル・ビザーリさんが2002年に創業したロースターカフェ。ビザーリ氏の祖父は1940年代にイタリアでコーヒー焙煎業を始め、父親は移住先のシアトルで1986年にトレファチオーネ・イタリア・コーヒー社を創業した起業家一家。人気が高かったトレファチオーネは2003年にスターバックス社に買収され、2005年にブランド自体が廃止されてしまいましたが、エマニュエルさんはそのトレファチオーネの1号店があった店舗にカフェ・ウンブリア1号店を開店しました(2005年)。カウンターの向こう側にエスプレッソ・マシンを置き、立ち飲みができるようにしているのがイタリア風。照明やカップもイタリアから取り寄せています。2024年11月現在、シアトル、ポートランド、シカゴ、マイアミビーチにもカフェを展開中。