【公式サイト】 I Love Coffee
人気ブログ 『I Love Coffee』 の誕生
ブログを始める前に日本語教育に関わっていた経験が、ブログのコンテンツ作りに生きている。
日本の大学を卒業した後、英語を教えていたのですが、日本語をアメリカ人に教えるっていう逆アングルもあるなと考えて。コロラド大学大学院の東アジア言語文明学科の修士課程に入って、日本語教育を勉強しながら大学で日本語を教えていました。日本生まれ日本育ちで、日本語を勉強したわけではないので、生徒に質問を受けて初めて気づく日本語の難しいルールや日本文化の不思議は、私にとって新しい発見ばかりでした。その後はいったん日本に帰国して、外務省の日本語教育の専門家として2009年に在シアトル日本国総領事館に赴任しました。
コーヒーのサイト運営と日本語教育は、何気に作業としては似ている気がします。コーヒーについて不思議に思ったことや新しい発見などについて調べて、どうやったら読者にわかりやすく伝えられるかをまとめて文章にし、あわせてデザインをするというところと、日本語をどうやってわかりやすく簡潔に説明して理解してもらえるかを考えて教材を作って・・・というところは一緒なので、教えていた経験が実は役に立っているのかもしれません。
コーヒーの情報というと、すでにちまたにあふれているような印象だが、岩田さんは他にないものを発見。友人のビジネスを助けるためにウェブサイトのコーディングを習い始めたのが、サイトを立ち上げるきっかけとなった。
日本語を教えていた時に、教育ツールや学生向けのウェブサイトを自分で作れたらいいのになと思っていたのと、友達のサイトも作れるし、ということで、コーディングのクラスを取り始めました。かなり漠然としていますね、アラサーなのに危なっかしい(笑)。学校に行き始めて2ヶ月後に、学校で勉強したことを練習できるようにと、ブログを始めることにしました。
トピックはなんでもよかったのですが、せっかくシアトルにいるし、コーヒーを飲み始めたばかりで新しいことをたくさん発見していた時だったので、それを共有できればと思い、『I Love Coffee』 というタイトルでコーヒーのサイトを始めました。ネットの世界の平均滞在時間は2分弱なんですね。私自身、ネット上で文字ばかりの長い記事をじっくり読む忍耐力がないので、「じゃ、パッと見てパッと学べる形を作ろう」と、インフォグラフィックを使って情報を要約し、ビジュアルで伝えるという方法をとりました。それがうまくネットの流行りに乗っかった感じですね。
サイトを通して、新しい展開に
サイトの訪問者は98%が英語の人。それが功を奏し、英語での著書の出版につながった。
アメリカのコーヒー文化を日本に伝えようと思って始めて、「英語版も一応書いておくか」くらいの気持ちだったのですが、今はサイトの98%の読者は英語を話す人です。悲しいですが、日本語版を書いているのは日本にいる母が読んでいるからというモチベーションのみです。
ありがたいことに、こうしてインタビューを受けることも増えてきておかげで、いろいろな分野のいろいろな業種の方々に会う機会が増えました。道で「あ、コーヒーの人?」と声をかけられたのをキッカケに仲良くなったという友達もいます。
出版の世界はオドロキの連続。「読んでくれている人がいるからこそ成り立つ」と、読者ありきの姿勢は変わらない。幼い頃から絵を描くのが好きだったことも今につながっている。
本を出すなんて考えてもいなくて、出版のプロセスも業界のこともまったく知らなかったので、その作業量にびっくりしました。原稿が完成してから実際に出版されるまで1年もかかるんです。本が世に出る前に、私の方がこの世から消えてしまうのではないかと本気で心配していました。
90歳の祖母はインターネットの世界やブログが仕事になるという概念が理解できず、私がネットでコーヒー豆を売っているとずっと思い込んでいたので、本が出版されてやっと私の職業を理解してもらえたのが、実は一番面白かったことです。
気を付けているのは、読む人の立場に立って書くということですね。読んでくれる方々がいるからこそ成り立っている仕事なので、読者の方からの質問に答えるなど、コミュニケーションを取るようにしています。あとは常に、小さくてもいいから面白いことを探すっていうのを大切にしています。
小さい時から絵を描くのは好きでした。大きな声では言えませんが、大人になってからも会議中にメモを取っている振りをしながら、実は周りの人の似顔絵を描いたりしてました。あとは母が関西人で、幼いころから面白い親戚に囲まれて育ったので、面白いことに対する感覚が磨かれたのではないかと思っています。
これからのシアトルのカフェ、私の好きなカフェ & ロースター
「トレンドにはまったく興味がない」という岩田さん。では、シアトルらしいカフェとは?
シアトルのカフェはどちらかというと、日本の喫茶店のような、おしゃべりをする場所とか勉強・仕事をする場所というようなイメージがあります。最近はサードウェーブコーヒーが流行り始めて、シアトルにもベイエリアのような洗練されたデザインでコーヒーだけに集中するカフェ、というのが増えてきているような気がします。でも私は、シアトルのカフェにはこれからも長居できる喫茶店的な存在のままでいてほしいです。
フリーモントにある 『Milstead & Co.』 は私のシアトルで好きなカフェのひとつ。その豆に一番合った方法で淹れてくれます。こうやってどんどんコーヒーの飲み方も進化していくのでしょうね。特にここのラテが大好きです。
スターバックスのロースタリーも、もちろん行きました!観光スポットとしても魅力的ですし、カウンターに座ってコーヒーを淹れてもらいましたが、他のスターバックスと違って、シングル・オリジンで淹れ方も豆に合った方法で、という感じで、かっこよく出来上がったお店ですね。
シアトルで一番好きなロースターは 『Lighthouse Roaster』 です。自宅ではエスプレッソマシーンでもっぱらラテを作って飲みますが、Lighthouse のエスプレッソ用の豆はおいしいラテができます。このロースターで飲むアメリカーノはものすごくおいしいです。
今後してみたいことは、全世界の有名なカフェを巡ること。2年前に北欧に初めて行ったんですが、とにかくコーヒーがおいしかった!次はおいしいカフェがいっぱいあるというオランダへ行ってみたいですね。
掲載:2015年8月