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シアトル留学生カフェ探訪 第54回 『Ada’s Discovery Café』

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同店は2020年に閉店しました。

みなさん、こんにちは。美紗さんのご紹介の通り、3月の帰国が近づきシアトルを去ることへの寂しさが日に日に増している成です。

2月は気合を入れてがんばろうと思った矢先、歴史的な大雪で2週間ほど家から出られずじまいでしたが、これもまた話のネタになる経験と考えることにします。

『シアトル留学生カフェ探訪』 では、バリスタの方の一杯のコーヒーへのこだわりを知り、お客さんに居心地の良い空間を提供しようとする姿勢を感じることができ、とても勉強になりました。カフェでさまざまなプロジェクトに頭を抱えたことが思い出にありますが、一杯のコーヒーを飲んでリフレッシュして、またがんばろうと思えたことも何度もありました。

また、ブログに書くという目的を持ってカフェの魅力を探ることができたのは貴重な経験となりました。半年間、読者の皆さんに読んでいただきながら執筆し続けることができたことに感謝しています。5人でバトンを繋いできた第2期の 『シアトル留学生カフェ探訪』 も、僕で最後となり、来月からは第3期が始動します。

最後に、僕のお気に入りの、日本とシアトルの技術をあわせ、こだわり抜いたコーヒーを提供するお店をご紹介したいと思います。

それでは、第54回 『シアトル留学生カフェ探訪』 のスタートです。

今回、僕がご紹介するのはキャピトル・ヒルにある 『Ada’s Discovery Café』。僕の通うシアトル・セントラル・カレッジからもほど近い場所に位置しています。

ようやく雪の止んだ2月中旬、まだまだ道には雪が残る中、どうしてもこのお店を紹介したくてやってきました。

実はこのお店、第17回のカフェ探訪で、沢田真洋さんが紹介した 『Ada’s Technical Books & Cafe』 の姉妹店で、たった4ヶ月前にオープンしたばかり。あえて最後にこのお店を紹介する理由は、日本とシアトルのテクノロジーが融合したアイスコーヒーが楽しめる、唯一無二のお店だからです。

水出しコーヒー抽出器 『Kyotobot』 を使って準備をするバリスタのマッケンジーさん

そのテクノロジーとは、この大きな水出しコーヒー抽出器 『Kyotobot』。

その名前からわかるように、至高のアイスコーヒーを提供するために活用されているのは日本のテクノロジー。ウォータードリッパーメーカーの株式会社オージの最高級の抽出器に、Ada’sが独自に開発したこのKyotobot(中心の長方形の装置)を組み合わせることによってコーヒーの美味しさをムラなく一定に保ちながらドリップすることができるそう。

毎日午前11時半に抽出を開始するのですが、なんと2秒に1滴ずつという、とんでもなく遅いペース。上の写真は抽出が始まってから1時間後を撮ったものなのですが、まだ2杯分あるかないかというところ。1滴1滴ゆっくりとドリップさせ、1杯のコーヒーを完成させるプロセスに Ada’s の徹底したこだわりを感じました。

そして、注文して出されたのがこれ。テーブルに置かれてすぐにその芳醇な香りがしました。アイスコーヒーでここまで香ばしさを感じたことが今までないくらいです。

一口飲んでみると、爽やかでフルーティな酸味の中に、ほのかな甘さを感じました。バリスタのコールさん曰く、Kyotobot によってコーヒー本来の風味を引き出すため、他の抽出方法と比べて苦み・雑味が抑えられ、甘みも感じられる仕上がりになるそう。抽出のプロセスを目の当たりにしているだけに、一気に飲むのがもったいない贅沢さを感じました。

同店ではアイスコーヒーはウォータードリップ(水出しコーヒー)、そしてホットコーヒーはサイフォン(水の蒸気圧を利用する方法)で淹れています。理科の授業で用いるビーカーやフラスコのような形からは実験室を想起させられ、視覚的にもお客さんを楽しませる工夫があります。

真洋さんの記事にあるように 『Ada’s Technical Books & Cafe』 ではプアオーバーとエアロプレスの2種類の抽出方法が用いられていますが、ここではそれとは違う方法で抽出されたコーヒーの味の違いを楽しんでみるのも良いと思います。

バリスタのコールさん

そんなこだわりについて、コールさんにもっと詳しいお話を聞かせてもらいました。

同店ではシアトルのロースターである Verve Coffee RoastersOlympia Coffee Roasting Company から計6種類以上の産地の異なる豆を取り寄せ、使い分けています。コールさんは4か月前のオープン当初から勤務されているそうですが、お客さんが気楽に会話したり、思い思いの時間を過ごせる空間であるところが一番好きなポイントだそう。落ち着いた空間の中で最新のテクノロジーで淹れた一杯を提供することにこだわっている、ということも教えてくれました。

また、コールさんは日本人のバリスタの友人がたくさんいるそうで、彼らとコミュニケーションをとりながら、日々美味しいコーヒーを研究しているそう。コールさんの勉強熱心な姿勢に、身が引き締まる思いでした。

Espresso Old Fashioned

そんなコールさんがぜひ飲んでほしいとオススメしてくれたのが、この Espresso Old Fashioned。オレンジの実をすりつぶしたものをエスプレッソと混ぜ合わせ、その水分を抽出したドリンクです。最初に飲んだ時、あまりの美味しさに衝撃を受けました。正直飲む前はエスプレッソにオレンジって合うのかなと疑問に思っていたのですが、飲んだ瞬間にオレンジの甘みが口いっぱいに広がり、その後エスプレッソのコクが追いかけてきます。オレンジの甘みと酸味、エスプレッソの苦みが見事に調和していて、まさに「味の化学反応」。オレンジもエスプレッソも単体では主張が強いはずなのに、絶妙なバランスでお互いの味を引き立て合っていて不思議な味わい。エスプレッソが苦手な方でもぜひ試してみてほしいドリンクです。

アメリカ大手の通信会社AT&Tのラウンジも併設されていて、最新のタブレットを体験できるようになっています。コーヒーを楽しむとともに、テクノロジーに触れることができるなんて、シアトルらしいですね。

そんなテクノロジーを使った場所でも、バリスタのコールさんやマッケンジーさんの温かい接客のおかげで居心地のいい空間になっていました。雪がまだ積もる中来店したお客さんに、温かい言葉をかけているところをかなり目にしました。もうすでにキャピトル・ヒルの地に根付き、お客さんに愛されているのですね。

これまでシアトルでさまざまなカフェを巡ってきましたが、心から実感したのは、シアトル市民にとってカフェは「活力を得る場所」として欠かせないものになっているということです。

僕が2年半アルバイトをしていた東京の飯田橋というオフィス街のカフェでは、平日にスーツの大人で賑わうのはランチタイムと就業時間の前後の時間だけでした。

ですが、シアトルのカフェは仕事をしている人で溢れているのが当たり前。カフェで美味しいコーヒーを飲み、気持ちをリフレッシュして仕事に打ち込む。MicrosoftやAmazonのような大企業の成長を支えているのは、もしかしたら居心地の良い空間を提供してきたシアトルのカフェなのかなとも思いました。

日本でも働き方改革でリモートワークが推進されていますが、これからはカフェも働く場所のひとつとなり、カフェがより日本人の生活に密接な存在になっていくと良いなと思います。僕も帰国後はシアトルでの学びを日本に還元できるようがんばります。

そして僕たち第2期のメンバーの執筆はこれで最後となりますが、第3期のメンバーに引継ぎ、4月より再スタートいたします。

シアトルには僕たちが伝えきれていない魅力的なカフェがまだまだたくさんあるので、これからも留学生が彼ら独自の視点でご紹介するシアトルのカフェを楽しみにしていただければ嬉しいです。

これまでどうもありがとうございました。そして引き続き、『シアトル留学生カフェ探訪』 をよろしくお願いいたします。

Ada’s Discovery Cafe
800 East Thomas Street, Seattle(地図
【席数】約50
【公式サイト】www.discovery.adasbooks.com
【Wi-Fi】 あり
【電源】 席によってはあり

池野成(Sei Ikeno)
1995年、石川県金沢市生まれ。大学を休学してシアトル・セントラル・カレッジに留学中。東京都内のカフェ・ド・クリエで2年半にわたりアルバイトし、カフェのような居心地の良い空間づくりに興味を抱いた。セーフコ・フィールドではノリで参加したサイレント・オークションにて10キロ近くあるベースを購入することになってしまい、どうやって日本に持ち帰ればよいのか、今から頭を悩ませている。

掲載:2019年2月

このコラムの内容は執筆者の個人的な意見・見解に基づいたものであり、junglecity.com の公式見解を表明しているものではありません。

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