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シアトル留学生カフェ探訪 第46回『Moonshot Coffee』

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みなさん、こんにちは、文です。

匡洋さんのご紹介にもありましたが、ここ最近は朝から晩まで図書館にこもる生活を送っておりました。苦手な会計学の最初の小テストで赤点を取ってからというものの、単位を何としてでも取得すべく猛勉強した結果、期末試験ではほぼ満点に近い点数を取ることができました。今学期、一緒に勉強してくれた友人や分からないところを教えてくれたチューター(学生による講師)には感謝してもしきれません。

しかし先日何気なく、今学期毎日背負っていたかばんの重さを計ってみたところ、なんと7kgという数字が表示されました。さながら筋トレのような日々、会社員時代の肩こりも再発するよなぁと妙に納得してしまいました。今は心地よい疲労感と達成感に包まれながら、この記事を書いています。

それでは『シアトル留学生カフェ探訪』第46回のスタートです。

治らない筋肉痛、上がらない肩。次から次へと降ってくる課題に頭を抱える私が今回ご紹介するのは『Moonshot Coffee』。シアトルの南に位置するホワイト・センターという地域にあります。

Moonshot Coffee

こちらのカフェ、友人の勧めもあり以前から行ってみたいと思っていたのですが、シアトル中心街からはやや遠くに位置することもあり、なかなか訪れる機会がありませんでした。

小雨の降る中、車を運転し、黄色のレンガにブルーの看板が可愛らしい同店を発見。

Moonshot Coffee

落ち着いた色味の木のテーブル、真っ白な壁にアート作品や観葉植物の緑が映えます。

Moonshot Coffee

薄暗い外とは対照的に明るい店内。一歩足を踏み入れただけで気分が一新します。個性的な形の観葉植物にランプ。自分は何ひとつ変わっていないのになんだか急にオシャレになったような錯覚に陥りました。

Moonshot Coffee

壁に飾ってある絵はシアトル在住のアーティスト、ベン・カルホーンさんの作品で、その場で購入することもできます。

Moonshot Coffee

使用している豆は Olympia Coffee Roasters のもの。Olympia Coffee Roasters へは何度か足を運んだことがあるのですが、今回は Holiday Blend という新しい種類の豆を使用したドリップコーヒーを注文しました。

Moonshot Coffee

2種類のエチオピア産の豆をバランスよくブレンドしており、口当たりがよく、酸味やえぐみがまったくないため、サラサラと飲みやすいのが特徴です。ここでメニューの書かれたボードを見上げると、気になる言葉が。

Moonshot Coffee

「"WE CHOOSE TO GO TO THE MOON" JFK 1962 TOGETHER WE CAN」

知的な皆様ならこの言葉でもうお分かりかと思います。実はこれ、1962年にアメリカ元大統領ジョン・F・ケネディが行った演説の一節なのです。

ここに Moonshot Coffee というお店の名前の由来が隠されていると思った私は、オーナーのマットさんにお話を伺いました。するとこのカフェ、気概に富んだコンセプトを持つお店だということがわかりました。

Moonshot Coffee

コーヒーと歴史が好きだというマットさん。ホワイト・センターとの出会いはなんと、11年前にアイダホからヒッチハイクでアメリカ中を移動していた時だそう!

1962年当時、アメリカはソ連との冷戦の最中にあり、宇宙開発や軍備拡張においても緊迫した状況でした。その数年前からソ連が人工衛星の打ち上げ、有人地球周回飛行に成功したこともあって、アメリカ国内には「ソ連に負けてしまうかもしれない」という雰囲気が漂っていたそうです。

そんな中、当時の大統領であったジョン・F・ケネディが「1960年代の終わりまでに月に人間を送り、無事帰還させる」と宣言しました。この演説から1年後の1963年11月に彼は暗殺されてしまうのですが、演説から7年後の1969年にはアポロ11号が月面着陸に成功しました。

Moonshot という言葉、直訳すると「月への打ち上げ」という意味になるのですが、少し掘り下げて調べてみると以下のような解説が出てきます。

「未来から逆算して立てられた、斬新な、困難だが実現すれば大きなインパクトをもたらす壮大な課題、挑戦」

この言葉、組織の大がかりなプロジェクトや夢の実現を表す際に使われることもあるのです。

「歴史は人々の団結や思い、行動が繰り返された結果。いかにして日々を意味のあるものにしていくか、目標に向かって進んでいくという決意の表れでもあるジョン・F・ケネディの言葉に感銘を受けた。この地へたどり着いた自分に何ができるか考えた結果、日々いろいろな思いを抱えながらホワイト・センターで暮らす人々にコーヒーとカフェを通してローカルコミュニティーのサポートがしたいと思った」と、マットさん。

ホワイト・センターからさらに車で10分ほど南へ行ったビュリエン(Burien)に『Brienpress』 というカフェを2013年にオープン、その後かねてより構想を練っていた『Moonshot Coffee』をオープンしたそうです。

予想以上に壮大なお話にすっかり圧倒されながらも、他にも気になったことをいくつか伺いました。

まず、お店のドアやテイクアウト用のカップにも印刷されてある、幾何学模様のようなロゴ。

Moonshot Coffee

一見ただのオシャレなロゴなのですが、実はこのM字の右上に走る長さの異なる点と線、モールス信号でTWCという意味なのです!

TWCとは "Together We Can" の頭文字、こんなところにも演説の一節が隠されていたことに、ただただ驚きました。

そして実はこちらのカフェの公式サイトにアクセスしてみるとわかるのですが、ジョン・F・ケネディの演説を盛り込んだ BGM にこのロゴが流れるように出現します。

ロゴはザック・シュイットさんというシアトルのアーティストの方の作品で、右上のモールス信号はロケットが打ち上げられる姿もイメージしているそう。

さらにもう一つ気になったこと、それはエスプレッソ・マシンのメーカー。

Moonshot Coffee

シアトルのカフェでよく見るマシンは La Marzocco のものなどが多いなか、Moonshot Coffee で使用しているのは Synesso というメーカーの MVP Hydra という型。初めて見たのですが、こちらはシアトル市内にあるメーカーが一台ずつ手作りで製造しているそう。絵やロゴと同じく、地元のアーティストや職人をフィーチャーするところに、マットさんのこだわりが伺えます。

最後に、一番おすすめしたいドリンクを伺ったところ、コルタドという答えが返ってきました。一杯3.25ドルと安価でサイズも小さいため、そちらもオーダーしてみることに。

Moonshot Coffee

「お花の形のラテアートを描こうと思ったら、ニンニクの形になっちゃった」
と笑いながら小さなカップを差し出してくれたマットさん、思わず私も笑ってしまいました。

Moonshot Coffee

はにかみつつポーズを取ってくれたマットさん。

エスプレッソとミルクを1:1でブレンドしたものが4オンスほどの小さなグラスに入ったコルタド、まさしく「一口ラテ」といったドリンクで、気軽にオーダーしてくれたら嬉しいとのことでした。

シアトルはスタバやアマゾンなどの大手企業で知られる街ですが、同店でオーナーのマットさんのネーミングとロゴに込めた思い、起業家精神に触れ、これぞスモールビジネスの鏡だと思いました。大企業でなくても素敵なビジネスを展開するカフェがシアトルにはたくさんあるんです。

「未来から逆算して立てられた、斬新な、困難だが実現すれば大きなインパクトをもたらす壮大な課題、挑戦」

今の私にはとても心に響くものがありました。一日一日を無駄にすることなく過ごしていきたいと、心温まりつつ襟を正すような、今はそんな不思議な気持ちです。

Thank you for a good time and coffee!

Moonshot Coffee

ちなみに、紹介したM字のロゴではないもう一つの隠れロゴが存在しているので、ぜひ公式サイトにアクセスしてそちらも見つけていただけたらと思います。ヒントは「月面着陸の時の〇〇」です!

次は、応援しているサッカーチームの試合をテレビ中継しているパブに行き、他のお客さんたちと勝利の喜びを分かち合った伸介さんです。

Moonshot Coffee
9622 16th Avenue SW, Seattle(地図
【席数】約16
【公式サイト】www.moonshotcoffee.com
【Wi-Fi】 あり
【電源】 席によってはあり

伊藤 文

伊藤 文(Aya Ito)
1989年、神奈川県横須賀市生まれ。大学を卒業し、一般企業に約6年勤めた後、自身のキャリアを再度見つめ直すためアメリカ留学・インターンシップへの挑戦を決意。2018年4月からシアトルにて IBP プログラムに参加中。幼い頃から食べることが大好きで、食へのこだわりは人一倍。インスタグラムの8割を食事の写真が占める。また個人ブログでは会社員を辞めて渡米するまでのいきさつ、その後の生活を描いた記事が一部のコアな読者に共感を呼んでいる。

掲載:2018年12月

このコラムの内容は執筆者の個人的な意見・見解に基づいたものであり、junglecity.com の公式見解を表明しているものではありません。



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