皆様、お久しぶりです!第2期シアトル留学生カフェ探訪ブログメンバーの伊藤 文です。
『シアトル留学生カフェ探訪』 も第3期として新たな4名を迎え、今やこのコーナーで取り上げたお店はなんと55店舗。しかし、これまでに取り上げたお店だけでなく隠れた名店など、シアトルにはまだ広く知られていないカフェやコーヒーの魅力がたくさんあります。
そこで私たちも実際に自分たちでコーヒーを淹れてみよう!そしてもう一度コーヒーについての知識を深めてみよう!ということで今回、シアトル市内の5つのロースターの5種類の豆、3種類の抽出方法を用意してコーヒーを淹れるという飲み比べ会を開催しました。
ちょっと本格的に看板も用意してみました(笑)。
ちなみに「OK, BUT FIRST COFFEE」とはコーヒー界隈では有名で、最近はSNSのハッシュタグでもよく使われるフレーズなのですが「そんなにバタバタと焦らないで、まずはコーヒーでも飲んでからにしようよ」といった意味合いがあります。この日、朝から集まった私たちもこの合い言葉と「Enjoy Coffee」をモットーに、準備に取りかかりました!
講師を務めるのはもちろん、『シアトル留学生カフェ探訪』第1期のリーダーで、シアトルのフリーモントにある Lighthouse Roasters でバリスタ、焙煎士として修行中の沢田真洋さん。
一同、真洋さんの話に真剣に聞き入っています。
今回、私たちが選んだコーヒーは次の5つ。
- Slate Coffee Roasters(浅煎り・エチオピア産)
- Herkimer Coffee(浅煎り~中煎り・エチアピア産)
- Broadcast Coffee(浅煎り~中煎り・ミャンマー産)
- Fundamental Coffee(深煎り・ケニア、グアテマラ、ニカラグア産のブレンド)
- Lighthouse Roasters(深煎り・グアテマラ、コロンビア、エチオピア、スマトラ産のブレンド)
これらをカッピングと呼ばれる手法(耐熱グラスに決まった量のコーヒー豆とお湯を入れ、一定時間で抽出するなど同じ条件下でコーヒーを淹れる方法)に基づいて味わいます。このカッピング、コーヒー豆のバイヤーが生豆を買い付ける際に品質をチェックする際に用いる手法で、ワインでいうところのテイスティングのようなものだと捉えていただければイメージしやすいかと思います。
抽出器具として用意したのは手前左からハリオ V6、エアロプレス、フレンチプレスの3種類。この日に選んだ抽出器具は、エアロプレスとフレンチプレスの2種類でした。
エアロプレスとは、プラスチックでできた注射器のような形をした抽出器具のことです。実はこれ、コーヒーメーカーが開発した商品ではなく、エアロビーというフリスビーの会社が2000年代に入ってから発明した比較的新しい抽出器具なのです。チャンバーとプランジャーと呼ばれる筒状の器具にコーヒーとお湯を注ぎ、上からフィルタをつけ蓋をします。1分ほど待った後、ひっくり返してカップの上にセットし、そのまま上からゆっくりと押すだけというシンプルなものです。金属のフィルタもありますが、今回は紙のフィルタを使用しました。一度に淹れることができるのはカップ1杯分です。ちなみに私もマイエアロプレスを持っていますが、軽くて持ち運びにも便利なのでキャンプやピクニックなどのアウトドアシーンでも活躍する優れものなんです!
フレンチプレスとは、ガラスでできたポットのような形をした抽出器具のことをいいます。ポットの中に挽いたコーヒーの粉を入れ、100℃のお湯を全体に行き渡るように注ぎ30秒ほど待ちます。その後、残りのお湯を注ぎ4分ほど待ったら完成です。
金属のフィルタを使用しているため、紙のフィルターを使用した抽出方法よりもコーヒーの油分が染み出て香りとコクがあるコーヒーができると言われています。この方法では一度に3~4杯のコーヒーを淹れることができます。
フレンチプレスはお湯を注いでから4分ほど待つ必要があるため、さまざまな成分がじっくり染み出たコーヒーが出来上がるのに対し、エアロプレスは空気圧を使用して1分程度で抽出するため、すっきりとした味わいに。
まず、5種類すべての豆を同じ粗さになるように挽き、お湯を入れる前の状態のコーヒーの粉の香りをチェックします。よく見ると挽いた後の粉も、浅煎り~深煎りになるにつれて色が濃くなっているのがわかりました。
同じ産地の豆でも違った香りがして、早くも盛り上がります。
次は先ほど挽いた豆の中に少量のお湯を注ぎ、香りを嗅いでみます。水分が加わったことにより先ほどとはまた違った、それぞれのコーヒー豆の特徴が引き出された印象を受けます。浅煎りの Slate Coffee や Broadcast Coffee が比較的軽やかな香りがするのに対し、深煎りの Lighthouse Roasters の豆は渋くて大人な香り。お湯を注ぐだけでこんなに香りが違ってくるものなのかと、飲む前から驚きました。
香りを嗅いだ後は、お湯を注いだコーヒーの表面に浮いた粉を濾して、それぞれスプーン一杯ほどのコーヒーを口に含んでみます。
一口飲んだだけでも5種類5通りの異なる味わいがします。その中でも微妙に似ている部分や共通点を探したりしてみました。
それぞれの違いがわかったところで、いよいよメンバー各自飲んでみたいコーヒー豆、使ってみたい器具を選んで抽出に挑戦です!
トップバッターは第2期、匡洋さんと成さん。匡洋さんは Herkimer Coffee、成さんは Broadcast の豆を選びました。
器具はエアロプレスで挑戦です。チャンバーとプランジャーをセットしコーヒーの粉を入れ、お湯を回し入れて攪拌します。タイマーをセットし1分待った後、エアロプレスの上にカップをセットし、ひっくり返します。このひっくり返す瞬間が一番緊張するのですが、2人ともこぼすことなく見事に成功!(笑)
Herkimer Coffee は、私が第31回の記事で取り上げたロースターカフェで、たくさんあるカフェの中でもお気に入りの一つなのですが、私はここのラテが好きなのでいつも同じようなラテを頼んでしまうことが多いのです。でも、取材した際に「ラテだけでなくドリップコーヒーやコールドブリューもおすすめだからぜひ飲んでみてほしい」と言われたことを思い出しました。エアロプレスで抽出した Herkimer のコーヒーは紅茶のようにするすると飲みやすい味で、Bellden Café でつい先日まで3ヶ月にわたりバリスタとしてのトレーニングを受けた匡洋さんも大満足の様子。
続いて第2期の美紗さん、第3期の小百合さんはフレンチプレスをセレクト。美紗さんは浅煎りの Broadcast Coffee、小百合さんは深煎りの Lighthouse Roasters の豆をそれぞれ選びました。
お湯の分量と攪拌、待ち時間を計りながら2人とも楽しそう。ちなみに私もフレンチプレスで淹れた Lighthouse のコーヒーを一口いただいたのですが、今回用意した豆の中でも一番の深煎りであるにもかかわらずエグみが一切なくとてもクリーンな味わい。第1期メンバーの瑠菜さんが第14回記事の中でも書いていたように、Lighthouse のコーヒーは今すぐデニッシュやクロワッサンが食べたくなるほど、食欲が刺激されました。
第3期の香織さん、真美さんは Broadcast、彩乃さんは Slate Coffee の豆を選択。抽出方法はエアロプレスです。
このエアロプレス、腕の力の弱い人は結構、力いっぱい押さないとうまく抽出できなかったりするのですが、3人とも均等に力を入れつつスムーズにプレスしていました。
彩乃さんはお湯の注ぎ方とタイミングを計るのがとっても上手でした!
ちなみに彩乃さんが選んだ Slate Coffee Roasters は第41回の記事にて取材したのですが、バリスタのサムさんが「うちの豆はシアトルでも1番と言っていいくらい浅煎りのバリエーションが豊富。深く煎りすぎずサラっとして飲みやすい、親しみやすい味に仕上げている」と言っていたことを思い出しました。
また、Broadcast をセレクトした真美さん、普段はほとんどブラックコーヒーを飲まないそうですが、その口当たりがよい味わいに「これなら飲めます!」とのこと。
それから、Fundamental Coffee は、ジャングルシティが 『起業家に聞く、シアトルらしい働き方』 にてオーナーのスコットさんに取材したロースターで、今回選んだ5種類のロースターの中で唯一のマイクロロースターです。マイクロロースターとは生豆を仕入れ、コーヒーショップにスペースを間借りして焙煎、販売を行う卸売業者のこと。卸売業者のためカフェという店舗を通じてのコーヒーの提供はしておらず、豆を手に入れる方法はオンラインか一部ローカルのスーパーマーケットのみ。スターバックスで19年間働いた後、ご自身でスモールビジネスを展開されていらっしゃるというスコットさん。今回初めてそのコーヒーをいただきましたが、燻製品のような芳しい香りと味に、違う種類のものもぜひトライしてみたいと思わずにはいられませんでした。
さらにこの日は、シアトル近郊のカークランドにて注文制のペイストリーショップ 『Fumie’s Cakes』 を営んでいる日本人パティシエの熊谷ふみえさんが作ってくださったレモンカードタルトとクッキーも一緒にいただきました!
レモンカードタルトはさわやかなレモンの酸味とサクサクしたタルト生地で、何個でも食べられそう。
クッキーはアメリカでよくある柔らかいものではなく、固めかつ厚切り。歯ごたえがサクサクで、こちらもコーヒーによくマッチします。
5種類のコーヒーを2種類の抽出方法を用いて飲み比べるという今回の試み。やってみて思ったのは、どのコーヒーもそれぞれ特徴があり、似ているようでまったく異なるということです。まるで多様性に満ちた街シアトルを象徴しているように感じました。
そしてそれぞれのロースターがこだわり抜いて生産した豆には、コーヒーの味だけでなくその先にあるお客さんへの思いが詰まっているのだということを改めて実感しました。
シアトルに住み始めて1年が経過した私ですが、その中で出会った多くの人々がそれぞれお気に入りのコーヒー、お気に入りの味を持っていました。コーヒーが当たり前のように生活に溶け込んでいて、「あそこのお店はああだよね」「ここのコーヒーのこういうところがいいんだよね」とコーヒー談義に花を咲かせているのを耳にすることも多くあります。ローカルカフェのマグカップを集めている人、いろいろな抽出器具を持っている人も多く、コーヒーライフを楽しむ人と彼らの知識の多さに圧倒されることもしばしばあります。
今や大企業となったスターバックスをはじめ、シアトルだけで店舗を展開しているサードウェーブ系など、どんな種類のコーヒーとも出会える街・シアトル。ここに来たからこそ、私たちもお気に入りの味や淹れ方を見つけることができたのですね。
皆さんも、お気に入りの淹れ方、とっておきの味を見つけてみてはいかがでしょうか? きっと新たな発見があること間違いなしです!
伊藤 文(Aya Ito)
1989年、神奈川県横須賀市生まれ。大学を卒業し、一般企業に約6年勤めた後、自身のキャリアを再度見つめ直すためアメリカ留学・インターンシップへの挑戦を決意。2018年4月からシアトルにて IBP プログラムに参加中。幼い頃から食べることが大好きで、食へのこだわりは人一倍。インスタグラムの8割を食事の写真が占める。また個人ブログでは会社員を辞めて渡米するまでのいきさつ、その後の生活を描いた記事が一部のコアな読者に共感を呼んでいる。
掲載:2019年3月