ビールの重要な材料であるホップ。アメリカで生産されているホップのほとんどがワシントン州で生産されていることをご存知でしょうか?
ワシントン州は全米ホップ生産量の74%を誇り、全米最大のホップ産地として圧倒的な存在感を示しています(2023年 農務省)。
ホップは毎年8月下旬ごろから9月の終わりにかけて収穫され、国内各地のブルワリーに送られたり、輸出されたりします。そして、期間限定の “fresh hop beer” として販売されるのです。
この記事では、そんなホップについて、まとめてみました。
ホップとは
ホップは、アサ科(Cannabinaceae)に属する多年生のつる性植物です。栽培ホップ(Humulus lupulus)の花の部分はビールの材料となり、味と香りを引き立てるだけでなく、保存性を高めるなど、いろいろな役割があります。
ホップの主な役割は以下の通りです:
- 苦味: ホップはビールに苦味を加え、麦芽(モルト)の甘さをバランスさせます。苦味はホップのアルファ酸から来ており、煮沸過程で放出されます。この苦味は麦芽の甘さに対抗し、バランスの取れた風味プロファイルを作るために不可欠です。
- 風味: ホップの種類によって、風味に違いが出てきます。その風味は、例えば、フローラル、シトラス、ハーブ、スパイシーなどのように表現されます。これらの風味は、ホップをビールの煮沸段階の後や発酵中に追加することでより際立ちます。
- 香り: ホップはビールの香りにも貢献します。香り成分(主にオイル)は揮発性が高く、発酵や熟成中にホップを追加することでより良い香りを保つことができます。
- 保存: 昔からホップは保存性のために使用されていました。ホップの成分には抗菌特性があり、ビールの保存期間を延ばすことができます。
- 泡の持続: ホップはビールの泡(ヘッド)の形成と安定性にも寄与します。ホップのタンパク質とポリフェノールが麦芽のタンパク質と相互作用し、ビールの泡が維持することにつながります。
ホップの種類や追加するタイミングによって、ビールの味わいや香りなどが大きく変わることがあります。
英語メモ:とれたてのホップは “fresh hop”、または “wet hop” と呼ばれます。”What do you have on tap?” とは、「生ビールは何がありますか?」という質問です。”tap” とは、樽など大きな容器からビールを注ぐ場合の蛇口を意味しています。
ワシントン州のホップ栽培
ワシントン州最大のホップの産地は、州の南中央部に位置するヤキマ・バレーです。
ヤキマ・バレーは肥沃な火山性土壌、カスケード山脈からの雪解け水、そして長い日照時間という最適な栽培条件が揃っているのです。
Yakima Valley Tourism と America Hop Museum によると、ワシントン州のカスケード山脈の東側にあるヤキマ(Yakima)で商業的なホップ栽培を推進したのは、ニューヨーク州から移住したチャールズ・カーペンターでした。チャールズは1868年にニューヨーク州の父親の農場から取り寄せたホップの根株を植え、1876年にはホップを出荷することができるほどになりました。1890年初頭にはホップ栽培が南東方向に広がり、ヤキマ郡はワシントン州で最も重要なホップ生産地となりました。
1920年から1940年にかけて、禁酒法や大恐慌、そしてそれに伴う過剰生産にワシントン州でのホップ栽培が脅かされることもありましたが、ヤキマ・バレーの農家は早期に種なしホップに切り替え、ホップの収穫品質を改善したことで高評価され、1939年から世界中に輸出されるようになりました。1940年代には手摘みから機械式のポータブルマシンへの移行が行われ、その後、固定式の収穫機と乾燥機でホップのつるやコーンを選別できるようになりました。1963年にはヤキマ・バレーがアメリカ合衆国全体のホップ生産量の50%を占め、1970年には70%に増加しました。
ホップの生産量と主な品種
2023年にワシントン州、アイダホ州、オレゴン州で生産されたホップの合計は1億400万ポンド(約4万7174トン)。2022年の1億200万ポンド(約4万6266トン)から2%増加しました。
米国農務省によると、ワシントン州産のホップはアメリカ全体のホップ生産量の74%を占め、押しも押されぬ全米最大のホップの産地の地位を維持しています(2位のアイダホ州は16%、3位のオレゴン州は10%)。
ワシントン州の上位5品種は、Columbus/Tomahawk/Zeus、Citra、Mosaic、Cascade、Simcoe で、生産の46%を占めています。
アイダホ州の Columbus/Tomahawk/Zeus、Mosaic、Citra、Cascade、Eureka! は、州の58%を占めています。
オレゴン州の上位5品種は、Citra、Mosaic、Strata、Cascade、Nugget で、州の64%を占めています。
2023年のアメリカ全体のホップ生産額は5億6,200万ドルで、前年から9%減少しました。
ローカルで注目の “とれたてホップ” のビールは?!
シアトル市内近郊で人気のクラフトブルワリーが次々と打ち出している逸品をご紹介。中にはグローサリーストアで購入できるものもあります。一年を通じて購入できるビールも、一定の期間中はフレッシュなホップで造られたものがあったりします。ぜひ、”fresh hop” などと書いてあるビールを
- Georgetown Brewing:ワシントン州最大のクラフトビールブルワリーの Johnny Utah Pale Ale
- Fremont Brewing:季節限定シリーズ
- Flying Bike: ワシントン州初のコープ式ブルワリーの Fresh Hop Harvest Ale
- Stoup Brewing: Fresh Hop Fiend など
- Reuben’s: Fresh Hop Amarillo
- Two Beers Brewing: Fresh Hop IPA
- Holy Mountain Brewing: Talus Fresh Hop
- Cloudburst Brewing: Fresh Hop IPA
- Black Raven Brewing Co.: レドモンド市で人気のブルワリーの Fresh Hop Pale Ale