大阪出身の佐久間実里(さくま・みさと)さんが2016年に創業した『Pastry Mitten』(ペイストリー・ミトン)。さまざまなケーキや焼き菓子の注文販売、レストランやグローサリーストアへの卸販売で人気を博し、2022年秋にシアトルのファースト・ヒルに実店舗を開店しました。天井が高く、柔らかな自然光がたくさん入る大きな窓のある店舗ですべての商品を製造しているので、入口のドアを開けた瞬間に美味しそうな香りが漂ってきます。
京都の調理師学校を卒業し、京都の懐石料理の店で油場、八寸場につき腕を磨くうち、任されることが多かったデザートに興味を持つようになったという佐久間さん。もともとお菓子を作るのが好きだったことから、京都のフレンチ・スイーツのお店に就職してパティシエとしての経験を積みました。
夫がシアトルのレストランに就職したことを機に、実里さんも2014年の秋にシアトルへ。飲食業のキャリアを続けることは予定していなかったものの、自宅で作った焼き菓子やケーキが友人に喜ばれたことから、「よし、やってみよう」と、共同の商用キッチンでテーブルを1台だけ借り、2016年の春に起業しました。
数種類のケーキを箱に詰め、自分でいろいろなカフェに売り込むところから始めて、卸先が少しずつ増えていき、数年後には実店舗を持とうという計画が持ち上がります。でも、場所を探していた最中、新型コロナウイルスのパンデミック宣言が出され、オーダー数も減ってしまいました。「一時は人を雇うこともできなくなり、一人でやったり、夫に助けてもらったりしてなんとか乗り切り、ここまで来ました」。
開店直後のショーケースには、抹茶のガトーショコラ、オレンジタルト、フルーツケーキなどのほか、アップルパイやスイートポテトパイ、ベーコンやチーズを使ったパイ、ショートブレッドなど、人気商品が並んでいます。「日本やフランスのデザートのテクニックや材料も使いつつ、アメリカでも受け入れられるよう、基本的なパイやショートブレッドに、かぼちゃやサツマイモ、ほうじ茶や胡麻などを入れ、トライしてもらいやすい形にしています」と佐久間さん。
「ローカルの農家のオーガニックのものを使うなど、材料にもこだわっています。例えば、アップルパイにはオーガニックのアップルを丁寧に煮詰めたものを入れていますし、柚子とオレンジのケーキには皮をピールしてキャンディにしたものを中に練りこむなど、手間をかけています。これからもいろいろ考えて、新しい商品を出していきたいですね」。
シアトル市内近郊各地に10数店舗を展開している『PCC』で購入できるほか、レストランの『Japonessa』『I Love Sushi』『山海』などでも食べられます。
MITTEN SWEETS & COFFEE
509 13th Avenue, Seattle(地図)
(206) 499-0508
www.mittensweetsandcoffee.com
※テイクアウトのみで、ドリップコーヒーやお茶も購入できます。
コーヒー:ワシントン州べリンハムにある『Camber Coffee』。ミディアムローストがケーキとよく合います。
お茶:ワシントン州サムナーにある、卸売りのみの『Apolis Tea』。味も香りも良く、おすすめです。