ルーフトップ・ガーデンを導入している、シアトルで唯一の日本食レストラン
Sushi Kappo Tamura (田むら)
【住所】 2968 Eastlake Avenue East, Seattle, WA (地図)
【電話】 (206) 547-0937
【公式サイト】 sushikappotamura.com
京都出身の北村太一さんがオーナーシェフを務めるイーストレイクのレストラン 『田むら』 。今年の夏にルーフトップ・ガーデンを導入し、隣接するレストラン 『Ravish』 と共同でコンドミニアムのルーフトップを利用してナズナやラディッシュ、シソなどのオーガニック野菜およそ10種類を栽培している。
「ローカルでサステナブルな食材にこだわる私たちにとって、これ以上ローカルな食材はないですね」と北村さん。レタスやラディッシュは1ヶ月、シソは2ヶ月で育ち、ラディッシュやシソは毎日収穫できるという。「特に高価で手に入りにくいシソは、育てる方が経済的。味や香りの良さは、仕入れ食材と比べものになりません。」
シアトル・アーバン・ファーム・カンパニーによる管理のもと、栽培する野菜は様子を見ながら相談して決めている。現在、約600平方フィートのルーフトップ・ガーデンで採れた野菜が占める割合は全食材の3分の1。冬はほうれん草やケールなど、気温が低くても収穫できる野菜を中心に育てていく予定だ。「ローカルならではの食材をどう和食に取り入れていくかが、腕の見せ所でもあります」と北村さん。ケールやシソの天ぷらは、色合いが濃くて美しく、さくさくした衣の食感と風味が引き立つ。シソは刺し身に添えたり、おまかせ料理の一品に使ったり、カクテルに入れたりと、活躍の幅も広い。「ルーフトップなので根菜を育てるのが難しいですが、今後可能であれば大根や山椒も育ててみたいです。」
ルーフトップ・ガーデンを通したコミュニティの結びつきも強まっている。「ガーデンを共同利用している 『Ravish』 はもちろん、コンドミニアムの住民とのつながりも生まれています。家庭でも野菜を育てる動きが広まっているので、このような取り組みに対する興味がさらに広がれば良いですね。そのためにも、ここで栽培したものをおいしく調理してアピールし続けていきたいです。」
掲載:2012年11月
個人やレストランの農作物栽培をサポート
The Seattle Urban Farm Company
【住所】 11550 North Park Avenue North, Seattle, WA (地図)
【電話】 (206) 547-0937
【公式サイト】 www.seattleurbanfarmco.com
シアトル市内を中心に個人やレストラン、学校における農作物栽培を支援する 『シアトル・アーバン・ファーム・カンパニー』。菜園の導入・管理から運営に関する相談はもちろん、クラスやワークショップの開催まで、多岐にわたる業務内容を展開している。
共同オーナーのコリン・マックレイトさんが初めて農業に興味を持ったのは大学時代。当時借りていた家で家庭菜園に関わり、作物よりも栽培する過程への興味の方が高まっていったという。卒業後、出身地のオハイオ州の農場に勤務し、ワシントン州へ移ってオーカス・アイランドやポルスボの農場で経験を積んだ後、2007年に大学時代の友人であるブラッド・ハルムさんと起業した。
「作物を栽培する上で重要なのは、土地の大きさではなく、どれだけ栽培に従事できるかということ。それをビジネスを通して人々に伝えていきたい」と語るコリンさん。一般家庭なら150~250平方フィート(約14~23平方メートル)、レストランなら1200平方フィート(約111平方メートル)の大きさがあれば、十分必要な量の作物は栽培できるという。「作物は土から栄養を吸収するので、まず良質な土の確保は大切です。もちろん、十分な量の太陽光も欠かせません。」
そこでコリンさんが目をつけたのが、屋上だった。2009年、バラードのレストラン 『バスティーユ・カフェ・アンド・バー』 の屋上に完全オーガニックのルーフトップ・ガーデンを導入。当初は3、4種類の作物を栽培・管理していたが、年々種類を増やし、現在は4,500平方フィート(約420平方メートル)のスペースを利用してレタス、アルグラ、ラディッシュ、トマト、ハーブ類など約25種類の栽培を手がけている。「管理は基本的に私たちが担当し、レストラン側には収穫のみをお願いしています」とコリンさん。夏は週に2、3度、冬は1週間に1度訪れて問題がないかチェックし、限られた面積でいかに多くの野菜を育てるかを考えながら効率化に取り組んでいるという。チューブを行き渡らせて定期的に水をやったり、建物の熱を利用して冬も適度な温度を保ったりと、屋上ならではのさまざまな工夫が凝らされている。「おかげさまで4年目の今年は最も収穫が多く、『バスティーユ・カフェ・アンド・バー』 では現在ほぼ毎日何かが収穫できる状態を保っています。」
今夏からはレストラン 『田むら』 と 『ラヴィッシュ』 が共同で利用しているイーストレイクのルーフトップ・ガーデンも管理しているが、「レストランの多くはスペースを賃貸しているため、屋上が自由に使えないところが多いのが現在の課題です」とコリンさんは語る。「しかし、ここ数年でオーガニックやローカルの作物に対する関心は確実に高まってきているので、今後ルーフトップ・ガーデンに興味を持つ経営者や理解を示す人々は間違いなく増えていくでしょう。」
夏から秋の毎週水曜にコリンさんが 『バスティーユ・カフェ・アンド・バー』 のルーフトップ・ガーデンで開催しているツアーの盛況ぶりを見ても、地元の人々の関心の高さが伺える。「このような取り組みに力を入れているレストランをできるだけ応援していきたい」と、参加者たちの意識も高い。コリンさんもこのような取り組みをより多くの人に知ってもらうよう、今後もツアーやイベントを積極的に開催していく予定だ。
今年春には 『Food Grown Right, In Your Backyard』 という本を発売したコリンさんとブラッドさん。家庭菜園の作り方から管理方法まで、基本的な知識やノウハウが詰まっているので、家庭菜園に興味のある人はぜひ読んでみよう。
掲載:2012年11月
シアトルのレストランでは最大規模のルーフトップ・ガーデン
Bastille Cafe & Bar
【住所】 5307 Ballard Avenue NW, Seattle, WA (地図)
【電話】 (206) 453-5014
【公式サイト】 bastilleseattle.com
バラードにある 『バスティーユ・カフェ・アンド・バー』 は、2009年にシアトルで初めて完全オーガニックのルーフトップ・ガーデンを始めたレストラン。シアトル・アーバン・ファーム・カンパニーの管理のもと、4,500平方フィート(約420平方メートル)のスペースを利用してレタス、アルグラ、ラディッシュ、トマト、ハーブ類など約25種類の食材を栽培している。
「管理はシアトル・アーバン・ファーム・カンパニーに全て任せていますが、収穫は私たちがするので、食材との向き合い方が変わりました」と語るのは、エグゼクティブ・シェフのジェイソン・ストーンバーナーさん。「その日に採れる食材を中心にスペシャル・メニューを考えたり、メニューを変更したりしています。調理をする時も、野菜本来の味や風味を今まで以上に生かすようになりました。」
ルーフトップ・ガーデンで採れた野菜が占める割合は約2割。育てる野菜はシアトル・アーバン・ファーム・カンパニーと相談しながら決めており、一年中ほぼ毎日収穫できる状態を保っているという。「レタスなどの葉物野菜は育ちが早く、約3週間で収穫できます。冬は夏よりも多少時間はかかりますが、野菜が育てられないということはありません。私たち自身も毎年さまざまな気付きを得て、非常に勉強になっています。」
ルーフトップ・ガーデンはそれ以外にも意外な効果ももたらしているという。「調理場は時間との戦いでストレスがたまりますが、そんな時に屋上へ上がると良い気分転換になるんですよ」とジェイソンさん。「これまで以上に無駄なく食材を使うようにもなり、ごみの量も減りました。ルーフトップ・ガーデンの存在はシェフの意識を確実に変えていると思います。」
11トンもの土の重さに耐えられるよう建物の補強工事を行うなど、ルーフトップ・ガーデンの導入には費用もかかっているが、ジェイソンさんはコスト以上の価値を見い出している。「短期的に考えれば食材を仕入れる方が安くつくと思いますが、長期的に考えればこちらの方が経済的であると私たちは考えています。何より、仕入れる野菜とは味や香りが格段に異なるので、ルーフトップ・ガーデンを導入して本当に良かったと思っています。」
掲載:2012年11月
屋上に設置した蜂の巣箱から蜜を採取
Farimont Olympic Hotel(フェアモント・オリンピック・ホテル)
【住所】 411 University Street Seattle, WA 98101 (地図)
【電話】 (206) 621-1700
【公式サイト】 www.fairmont.com/seattle
ダウンタウン・シアトルにある高級ホテル 『フェアモント・オリンピック・ホテル』 では、屋上にミツバチの巣箱を設置し、独自に蜂蜜を採取するプログラムを導入している。
フェアモントは20年以上にわたり環境保護を考慮した経営を心がけ、『グリーン・パートナーシップ・プログラム』 という独自のプログラムでさまざまな環境保護プロジェクトを展開してきたが、北米でミツバチが危機にさらされているとの報道を受け、屋上にミツバチの巣箱を設置することを発案。現在、米国ではワシントン DC やサンフランシスコ、ソノマやダラス、カナダのバンクーバーやウィスラー、ビクトリアやトロント、そのほかには中国やケニヤでも屋上にミツバチの巣箱が設置されているが、シアトルでは以前にジャングルシティでもご紹介したバラードにある 『バラード・ビー・カンパニー』 がコンサルタントとして協力し、エグゼクティブ・シェフのギャビン・スティーブンソン氏の尽力で2011年春に実現した。
屋上を使った巣箱の設置はダウンタウンではこのプロジェクトが初めて。ミツバチの数や蜂蜜の量を予測するのは非常に困難とされるが、健康的な状態の場合、5つの巣箱には最高50万匹のミツバチが集まり、年間30~40ポンドの蜂蜜を採取できるという。
そして、設置から約1年がたった今年の春、この蜂蜜がさまざまな料理に使われるようになった。ホテル内の 『ジョージアン・ルーム』 では蜂蜜を使ってスモークしたサーモン、『シャッカーズ』 では蜂蜜をかけて焼いたサーモン、そして朝食にはジュースやヨーグルトパフェ、チョコレートマフィンなどに蜂蜜を使った 『ルーフトップ・ハニー・ブレックファスト』 が楽しめる。また、シアトルで人気の観光スポットとして知られるパイク・プレース・マーケット内にある 『パイク・ブリューイング』 と協力し、この蜂蜜を使ったビール 『オリンピック・ハニー・エール』 が完成した。スティーブンソン氏は、「今後さらに蜂蜜をさまざまな料理に使っていきたい」と意欲を見せる。なお、このエールはフェアモントのメニューには載っていないので、口頭でサーバーに確認する必要がある。
※残念ながら、この屋上は一般には公開されていない。
掲載:2012年11月
シアトル市の運営するルーフトップ・コミュニティ・ガーデン
UpGarden P-Patch Community Garden
【住所】 300 Mercer Street, Seattle, WA (地図)
【電話】 (206) 684-0264
【公式サイト】www.upgarden.org
シアトル・センターの北側にあるマーサー・パーキング・ガレージ屋上に2012年6月1日にオープンしたコミュニティ・ガーデン 『UpGarden P-Patch Community Garden』。総面積3万平方フィート(約2,787平方メートル)という広さはバスケットボールのコート6面分に相当し、ルーフトップ・ガーデンとしては全米最大規模を誇る。
これはシアトル市と非営利団体 『P-Patch Trust』 の運営するコミュニティ・ガーデン・プログラム 『The P-Patch Community Gardening Program』 の一環。地価の高いシアトル・センター周辺で公共地を確保することが長年の課題になっていた中、シアトル市近隣局職員でプロジェクト・コーディネーターのローラ・レイモンドさんが目をつけたのが駐車場の屋上だった。「1962年のワールド・フェア開催時に建てられたこのマーサー・パーキング・ガレージは、現在は大きなイベント時にしか使用されていません。駐車場の有効利用にもつながるということで、国内初のルーフトップ・コミュニティ・ガーデンが実現しました」と、『UpGarden』 のツアー & イベント・コーディネーター、ナンシー・コーさんは語る。
2011年12月に最初のミーティングを開き、3月に工事を開始。造園家のエリック・ヒグビー氏とニコル・キスラー氏による監督のもと、ボランティアの意見も積極的に取り入れながら、これまでになく多目的なコミュニティ・ガーデンを造り上げた。「車いすの人でもアクセスしやすいように腰の高さに底上げしたガーデンや、フード・バンクへの寄付専用のガーデン、ピクニックが楽しめる芝生エリアなどもあります」とナンシーさん。廃車に土を入れて巨大なプランターに仕立てるなど、駐車場という特別な環境に遊び心も加えている。「車も自分たちでペイントしました。窓にはジミ・ヘンドリックスの歌の歌詞を書いて、シアトルらしさを出しています。」
ルーフトップ・ガーデンが初の試みだったこと、駐車場の屋上が緩やかな傾斜になっていることなどから、通常のガーデンを設置する際には見られない問題も多かったという。「土の重みを考慮して、ガーデンには鉢植え用の土を使っているのですが、水分が流れやすく、栄養が行き渡りにくいという難点があります。排水トラブルも起こっているので、しばらくは試行錯誤を続けながら改善していかなければなりません。ただし、問題を共に解決していく過程で周辺住民との結びつきはますます強くなっています。」
各区画は100平方フィート(約9.3平方メートル)で、現在は98区画全て使用されているという人気ぶり。今後は鳥の巣箱やミツバチの巣なども設置していく予定だ。コミュニティ・ガーデンの利用条件や申し込み方法については、シアトル市の公式サイトで確認しよう。
掲載:2012年11月
ルーフトップ・ガーデンを眺めながらの食事も楽しめる
Terra Plata
【住所】 1501 Melrose Avenue, Seattle, WA (地図)
【電話】 (206) 325-1501
【公式サイト】 terraplata.com
シアトルのシェフ、タマラ・マーフィーさんが昨年10月にキャピトル・ヒルのメルローズ・ビルディング内にオープンした 『テラ・プラタ』。”terra” はラテン語で「地球」という意味を表し、”earth to plate(地球からお皿へ)” をコンセプトに、ローカルの旬の食材をふんだんに取り入れた料理にこだわっている。
今年6月に導入したルーフトップ・ガーデンもそのコンセプトの一環。70席の広々とした屋上テラスをぐるりと囲むようにプランターを並べ、トマトやキュウリ、ハーブ類などをオーガニックで育てている。「今年はルーフトップ・ガーデンを始めたばかりで、育てたものを補助的に活用する程度でしたが、来年以降は本格的に取り組む予定です」とタマラさん。「全てスタッフで管理しているので、手間が増えて大変ではありますが、好評なので、やりがいがあります。」
これまでフル・サークル・ファームやスカジット・リバー・ランチなど、サステナブルなローカルの農場や牧場と長年にわたって信頼関係を築いてきたタマラさん。ここ数年はファーマーズ・マーケットなどを通して一般の人々の間でも、地元の生産者にこだわって食材を購入する傾向が高まっていると話す。「かつては料理を通してローカルの生産者について知ってもらおうとしていましたが、今ではお客様も知識が豊富で、私たちのこだわりについて理解してくださっている方が多いように思います。シェフが自分たちで野菜を育てるという試みも、今はまだ珍しいかもしれませんが、そのようなレストランにこだわって食事をする人が今後増えるだろうと期待しています。」
現在ルーフトップ・ガーデンは来春に向けて準備中。育てる野菜の種類を増やすほか、テラス部分にはテントを設置し、雨の日でも利用できるようにするという。
掲載:2012年11月