ホヤは原索動物ホヤ綱の一種で、マボヤともいい、東北地方の海の珍味としてよく知られています。海の中にはさまざまなホヤがいて、芽を出して仲間を増やし、小さい個体の集団をつくる群体ボヤもいますが、マボヤは単体で、高さ20cmくらいになります。一般に外側は褐色系で皮袋のようになっており、その上に円錐形の乳頭状突起が密生しています。
東北地方特産のように思われていますが、北海道から本州・四国・九州、さらに朝鮮半島から中国大陸の山東半島などにも生息しています。幼生の時は海中を漂いますが、成体は固着生活をします。およそ100年前から宮城県気仙沼沿岸で始められた伝統的な養殖方法では、ヤマブドウのつるを編んだものを海中に吊るしておくと、それに幼生が泳ぎつき、やがて成体になります。マボヤは1年で1cm、2年で10cm、3年もたてば20cmくらいの立派なものに成長します。皮をむいて、中の筋肉や内臓の部分を二杯酢などにして食べると美味しいのですが、特有のにおいをもつので、慣れない人には食べにくいようです。刺し身・酢の物・焼きボヤ・炊き込みご飯・雑炊などがおすすめ。秋になると筋肉がやせてしまいますが、春の産卵後に再び筋肉が太るので、5月ごろからおいしくなり、需要期は主として夏です。
地中海でも同様のホヤを産し、南フランスには好んで食べる人がいるそうです。
また韓国でも、皮をむいて内臓を取り出し、コチジャン(粉状の唐辛子を味噌にまぜたペースト状のもの。英語表記は “Fermented Hot Pepper Paste”)・酢・砂糖で作ったタレに漬け、刺し身として食べるそうです。余談ですが、韓国ソウルの一流レストランではどうなのかわかりませんが、庶民が行くような一般的レストランの卓上に醤油は見かけませんでした。韓国でも養殖はしていますが、需要に供給が追いつかないため、日本からも輸入しているようです。ソウルの南大門市場の魚屋さんでは、マボヤが山積みにして売られていました。
それでは、ワシントン州にはこのホヤが存在するのか。魚に詳しいと自他共に認める弊シアトル店の鮮魚部マネージャーに写真を見せたところ、初めて見たとの由。どのようにして食べるのか、大変興味を示していました。どうやらこの単体のマボヤは、ワシントン州には生息してないようです。
掲載:2007年8月
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