3月から夏にかけて沖縄周辺海域から黒潮に乗って回遊するカツオは、南九州から関東、東北、北海道南東へと北上しながら成熟し、通常は40cmから50cmで5kg程度、大きいものは全長1.2m、7kgから8kgにもなります。10月を過ぎる頃には南下し、日本近海からは姿を消します。
カツオの群れには、他の生物や流木に付く群れと、カツオだけで回遊する群れがあり、前者は付く物によって「木付き群」や「サメ付き群」と呼ばれ、後者は「素群」(すむら)と呼ばれます。カツオ漁業で、古くから行われて来たのは一本釣り。カツオの群れを見つけると、活きたカタクチイワシをまくと同時にポンプで散水して群れを足止めし、擬餌針や活餌を付けた針でカツオを1尾、1尾、豪快に釣り上げます。最近では巻き網でも漁獲されるようになりました。ここ数年、カツオの漁獲量は約30万トンの水準で推移し、輸入は5万トンから6万トンと、横ばい状態です。
江戸中期に珍重された初鰹とは、北上途中のカツオを伊豆沖や神奈川沖で漁獲したもの。初夏に漁獲されるカツオは 「目には青葉山ほととぎす初がつほ」と詠まれた「上りガツオ」で、大変美味です。一方、秋に漁獲される南下途中のカツオは「下りガツオ」、あるいは「戻りガツオ」と呼ばれ、これも脂が乗って美味。現在は輸送力の発展に伴い、小型の土佐ものが早々と市場に出回っています。
カツオ料理といえば、定番はたたき。初カツオのたたきには、ショウガ、ニンニク、ネギ、ぽん酢など、戻りガツオの刺し身にはワサビ醤油があうと言われています。東京では通常、刺し身として賞味されます。その他にも、照焼きや煮物、角煮、あら炊き、カツオ飯(刺し身を酢と醤油で味付けし、すし飯と混ぜる)、茶漬けなどがあります。カツオの腸で作る塩辛は酒盗と呼ばれ、オツな酒の肴です。また、カツオの中落・血合・腹皮を蒸して布巾で水気を取り、ほぐして塩味をつけて炒ると、フリカケができます。
宇和島屋では現在、近海物カツオを本場静岡焼津加工処理した逸品の真空パック入りを販売しています。解凍すれば手軽に美味しく食べられますので、ぜひご賞味ください。
掲載:2006年3月
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