米国に来て30余年が過ぎましたが、日本でよく食べていたもので、米国に来て以来今日まで一切口にしていない食べ物は何かと考えましたら、それは鯨肉でした。現在は資源調査捕鯨として定められたクジラの捕獲以外は商業用としては1986/87期の漁期が最後となりました。保護動物として国際間の問題にもなっています。帰京する度に近所の東京足立区にあるスーパーマーケットに立ち寄りますが、残念ながら、鯨肉は販売されていなかったと記憶しています。改めて、次回帰京の際には確認してきます。
50年以上前から食べていたクジラの味覚が頭にこびり付き、「何とかもう一度あの味を食べたいなあ」と、最近特にこの思いが強くなってきました。貧乏な筆者の家では食べ盛りの息子3人を抱え、母はボリュームのある安い食材として、クジラを頻繁に使ったと思われます。クジラの肉と言ってもいろいろあるようで、安い肉は硬く、何度も噛まないと飲みこめませんでした。調理法はクジラ肉特有の臭いを消すためか、カレー粉を使用したカレー風味クジラカツでした。トンカツを買う余裕がなかったため、これはよく食べさせられたものです。確かに美味しかった記憶がありますが、さすがに何度も食べさせられると飽きてしまい、またかとウンザリした覚えがあります。赤く表面を染めたクジラのベーコンは食感が良い上に非常に美味で、フライパンで焼き、熱いご飯の上に乗せ、醤油をかけて食べたものでした。また、クジラの大和煮缶詰は肉もやわらかく大変美味で、ベーコンと共にぜひもう一度食べてみたい味です。
現在商業用としてはなくなりましたが、捕鯨業は母船式捕鯨業が一般的で、1隻の捕鯨母船と数隻から十数隻の捕鯨船(キャッチャー・ボート)が船団を組み、南氷洋(ナガスクジラ、シロナガスクジラ、ザトウクジラ)や北洋(ヒゲクジラ、マッコウクジラ)で行われていました。捕鯨船で捕獲したクジラは、捕鯨母船に引き渡され、捕鯨母船は鯨体の処理、加工または保蔵を行い、捕鯨船に対する補給も行っていました。また、日本沿岸では沿岸大型捕鯨業(ヒゲクジラ、マッコウクジラ)、沿岸小型捕鯨業(ミンククジラ)があり、日本の本土を根拠地として漁獲したクジラを陸上で処理加工していました。
掲載:2007年3月
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