日本ではキンキとメヌケとは区別されていますが、シアトルでは総称して “rockfish” と呼ばれています。
これは、”rockfish” の種類があまりに多いため、長年の経験がないと見分けが付かないためとも思われます。
また、日本人は、種類により、刺し身・煮付け・開き干し・塩焼き・粕漬け・味噌漬け・照焼き・蒸す・バター焼き・ムニエル・唐揚げ等の多様な食べ方をしますが、一般の米国人の家庭ではフィッシュ&チップス、ムニエル、バター焼き程度なので見分ける必要がないというのが、筆者の個人的見解です。
メヌケは深海魚であるため、水面に引き上げられた時に減圧で眼が飛び出すことから、「目抜」の名で呼ばれています。体色の赤色はマダイと同様のカロチノイド系の色素ですが、メヌケの仲間の方が色素量が多いため、粕漬けなどにしても鮮やかな赤色が残ります。
キンキ(キチジ、北海道ではキンキン)は、メヌケの類と同様、カサゴ目に属する魚です。
以前、商談のため米国の水産加工場に行きますと、この “rockfish” のフィレを流れ作業的に手作業で切っていましたが、美味しい頭の部分や背骨のあたりを含め、かなりの身肉が付いた部分が無造作に捨てられていました。終戦後(昭和26年頃)のドサクサ時の東京荒川区南千住でのひもじい生活を思い出し、また、貧乏に育ったためか甘い・辛い・酸っぱい・苦い等に関係なく何でも食べる習慣が残っている筆者にとっては、ただもうもったいない、何とかならないのか、捨てるならオレにくれと喉から手が出そうなのをグッと我慢して、あの頭を甘煮にしたら旨いなと一人つぶやきながら、うしろ髪を引かれる思いで加工場を出て行ったものです。
宇和島屋では、漁模様により種類は変わりますが、キンキ(idiot、channel rockfish)、メヌケ(yelloweye rockfish)、アラスカメヌケ(Pacific ocean perch)などの商品名で、各種の生鮮カサゴ目類を通年販売しております。日本人にはどちらかと言えばキンキなどの赤物、中国人には黒っぽい “quillback rockfish” が人気のようです。
ちなみに、当地の “rockfish” 類は次の通り際限なくあります:Idiot(kinki)、Pacific Ocean Perch、Yelloweye、Shortraker、Brown、Aurora、Rougheye、Red banded、Quillback、Canary、Rosethorn、China Chilipepper、Blue、Black、Redstriped、Tiger、Greenstriped 他(順不同)