タチウオは、世界の熱帯から温帯にかけて32種、日本近海に11種が分布し、大陸棚やその斜面、海山の周辺の表層から水深200mくらいまでに生息しています。
体長は70cm~1mで、色は鮮やかな白銀色で、背びれは黄色みがかり、腹びれはありません。大きな口に鋭い歯をそなえ、偏平で細長く伸長した尾びれを持つことなどが特徴です。
その姿形から太刀魚と呼ばれますが、米国の同業者仲間では belt fish の名称で売買されています。
成魚と幼魚では反対の日周性鉛直移動を行うことが知られています。幼魚は日中には海底から100mくらい上方で群れを作りますが、夜間には群れを解いて、表層に上がって餌を食べます。一方、成魚は日中に表層で餌を食べ、夜間には海底まで戻っていきます。
世界中で、釣り、引き網、延縄、定置網などで漁獲されており、日本では瀬戸内海と九州西岸での漁獲量が多く、スポーツフィッシングの対象としても人気があります。
タチウオの日本での2019年の漁獲量は6,374トン(40フィートのコンテナ換算で約320個分)、県別では愛媛11.4%(726トン)、長崎10.8%(689トン)、和歌山10.7%(685トン)となっています。ちなみに、2020年度の世界の国別漁獲量は、1位が中国903,435トン(40フィートのコンテナ換算で約45,170コ分)、2位インド146,000トン、3位インドネシア70,638トンです。
余談ですが、漁獲量が何トンと言ってもピンとこないため、水産業界で使う魚類をコンテナ船で運ぶ40フィートの冷凍コンテナの積載量を20トン(44,000ポンド)、半分サイズの20フィートの冷凍コンテナの積載量は10トン(22,000ポンド)として、筆者なりの目安にしています。
脂がのる夏期が旬で、大型魚は氷冷出荷され、小型魚はカマボコなどの練り製品の原料とされることが多いです。切り身は塩焼き、照り焼き、椀種、ホイル焼き、ムニエルなどで食されますが、煮付けにする場合は空揚げにしてから調理すると煮崩れしません。
以前、北海道の水産会社の社長さんが北海道の魚市場でタチウオを刺身にしてくれましたが、その包丁さばき及び盛り付けはまさに名人芸で大変感動し人間国宝に推薦してもおかしくないと思いました。
現在、宇和島屋では belt fish の名で、重さ約700g以上の白銀色で鮮度の良いものをショーケース(解凍品)で対面販売したり、筒切りにして冷凍販売しています。
インド系、中国系及び韓国系にも大変人気があり、欠品できません。中国人は頭・内臓を除去し、塩を軽くふり一昼夜塩になじませた後、筒切りし、コーンスターチをまぶし、卵に漬け、唐揚げまたは油炒めして食べるようです。また、インドではカレー粉をまぶしたタチウオの切り身をフィッシュカレーの具材としています。
掲載:2006年7月 更新:2022年4月
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