Anemone Wall アネモネ・ウォール
構内のいたるところに美術品が展示されているワシントン大学。卒業生からの寄贈品も多く、中でもミーニー・ホールのロビーにある 『アネモネ・ウォール』 は世界に名だたるガラス工芸家デール・チフーリから贈られたものとして有名です。
アネモネとは、イソギンチャクのこと。絵の具のチューブから出したばかりのように鮮やかな赤と黄色のアネモネは、一つがおよそ6フィート四方。コンクリートがむき出しの壁に点在し、広いホールに華やかな雰囲気を醸し出しています。
1941年にタコマで生まれたチフーリは、ワシントン大学でインテリア・デザインを学ぶうちガラス・アートに出会い、ウイスコンシン大学大学院で美術を専攻した後、フルブライト奨学金を得てイタリアで吹きガラス工法を学びました。1971年にパートナーと共にワシントン州のスタンウッドでピルチャック・グラス・スクールを開校し、自身の制作活動を行なう一方で、後進の教育にも努めています。
現在、シアトルで活躍しているアーティストの市川江津子さんもこのピルチャックで学んだ後にチフーリと仕事をした方。また、ガラス・アーティストの常澤拓也さんも日本で著名なガラス作家である生島賢さんのアシスタントとしてピルチャックでの制作を経験した方です。
1976年に自動車事故で左目の視力を失ったチフーリは、一旦制作チーム主任を退くが、のちに優秀なパートナーを得て、より大規模なガラス・アートに挑戦。貝殻をモチーフにした 『Seaform』(シーフォーム)、『Persian』(ペルシャン)、『Venetian』(ヴェネチアン)などのシリーズを次々に発表し、世界各地にある150以上の美術館に所蔵されるようになりました。
チフーリの作品は、2012年5月に完成したシアトル・センターのチフーリ・ガラス・ガーデン、そしてダウンタウンのベナロヤ・ホール、ウォーターフロントのシアトル水族館、そしてタコマ市のユニオン・ステーションやガラス美術館などでも見ることができます。