西海岸から東海岸まで、全米を興奮の渦に巻き込んだ8月21日の日食、みなさんは楽しみましたか?皆既日食が見られる場所だけでなく、全米のほぼすべての地域で日食を楽しんだ様子はすでにメディアでも広く報道されていますよね。"星を見る"(太陽も星の一つです)という地味なアクティビティがこれだけ注目されるのは嬉しい限り。そして町中のいたるところから驚きの声が上がるさまを見るのはなんとも楽しい光景でした。
さて、筆者は友人・家族とともにオレゴン州マドラス近郊にあるキャンプ場で皆既日食を無事見ることができました。皆既日食の素晴らしさもさることながら、皆既日食で盛り上がるマドラスの街、これまで見たこともない交通渋滞など、さすが数十年に一回のイベントと再認識させられるような想定外の連続でした。ということで、今年の星空の楽しみ方最終回は皆既日食現地レポートを数々の写真とともにお届けします。
マドラスにある Safeway の一コマ。ビールを飲みながら日食を楽しもう!?各ビールメーカーが競うように作った日食をモチーフにしたディスプレイは日食目当てのビジターの心をすっかりつかんでいたようです。クーラーボックスとビールの組み合わせが飛ぶように売れてました。
スターバックスでは日食特別バージョンの Solare Macchiato と Solare Crème Frappuccino を用意。筆者は Solare Macchiato をオーダー。味は OK でしたが、どこが日食なのかはちょっとわからない、微妙な記念メニュー。
マドラスの街中には日食Tシャツを着た人がたくさん。スーパーだけでなく、道端にできたにわかストアでもさまざまなオリジナルTシャツが販売されていました。場所柄もあってどのTシャツも大きすぎてお土産Tシャツは見つけられず。ちなみにマドラスでは SolarFest というフェスティバルが開催され、日食当日は朝4時からイベントが行われていたようです。
オレゴン州が用意した日食リーフレット。日食だけでなく、オレゴン州の東側を中心とした実践的な観光ガイド。そうはいってもここはオレゴン。リーフレットの裏表紙には "See you in 2018 for Oregon’s next solar eclipse"。2018年ではありません。2108年、90年後です。
ワシントン州からは少し距離があるのでなかなか訪れる機会がないオレゴン州東側の自然。スミスロック州立公園は普段にはないような観光客の数で、日食前日の昼12時ころは入場制限をするほどの人出。公園職員がこんなに忙しいのは初めて、と言ってました。
日食に備える筆者一行。日食グラスとビールを片手に準備はバッチリ。
午前9時4分。部分日食の始まり。3時間のショーの幕開け。キャンプサイトはまだ散歩をしたり、ご飯を食べている人がちらほら。日食が始まってから10分くらいすると、そこかしこから「おー、始まったねえー」という声が聞こえてきて、30分もするとほとんどのキャンプサイトで日食鑑賞が始まってました。
皆既日食になる直前。
皆既日食。部分日食と皆既日食は全く違いました。99.999%の部分日食と皆既日食はまったく違う現象です。皆既状態になったときのあの驚きはどう表現していいのか、よい言葉が見つかりません。筆者一行は全員あまりの美しさとスケールの大きさに圧倒されてしまい、全員口を開けたまま2分間のショーにクギづけでした。
皆既日食中に見られた双眼鏡でもくっきり見られるくらい大きなプロミネンス。皆既中は周囲が暗くなるだけでなく、気温も下がり、かつそれまで聞こえていた鳥や動物の鳴き声が突然聞こえなくなる、とても不思議な2分間でした。
皆既日食の終わりを告げるダイヤモンドリング。これまでの人生で一番短くて長い2分間。
どこまでも続く交通渋滞。マドラスから帰りの交通渋滞はこれまで見たこともないような長さでした。北(ワシントン州)、西(オレゴン州ポートランド)、南(カリフォルニア州)いずれの方向もとてつもなく長い渋滞で、マドラスの街を抜けるだけで2時間以上かかった人もたくさんいたようです。筆者一行は The Dalles を経由してポートランドに行きましたが、通常2.5時間ほどで到着するところをほぼ6時間のドライブ。ちなみにこの渋滞は次の日も続き、I-5はポートランドからシアトル方向に数十マイルの渋滞が夜になるまで続いていました。
稀に見る交通渋滞を覚悟してまで皆既日食を見る価値はあったか?たとえ20時間かかったとしても見る価値のある素晴らしいイベントでした。ポートランドでは99%、シアトルでは92%でしたが、99%と100%、たった1パーセントがこれだけ違うのかとただただ驚き、心から見に来てよかったと思いながらマドラスからポートランドの渋滞を乗り切りました。
今回皆既日食を見逃してしまった方、アメリカはさすがに広いので日本に比べるとチャンスはたくさんあります。オレゴン州ポートランドで次回見られるのは2108年ですが、アメリカ全土だと2024年にテキサスからカナダにかけて、2044年にモンタナ、2045年に北カリフォルニアからフロリダを横断する日食があるようです。Washington Post にわかりやすい記事がありますので、参考にしてみてください。たくさんの写真やビデオが出ているのでそれで充分、と思っている方、皆既日食は自分の目で見て、肌で感じることでその素晴らしさがわかるイベントです。次の機会をぜひお見逃しなく!
掲載:2017年8月 写真・文:保坂隆太