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シアトルでアウトドア: シアトルからポートランドまで自転車で走ってみよう!

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2016年にはバイク・フレンドリーな都市ランキングで1位(※)となるなど、数々のサイクリング関係のランキングで上位にランク入りしているシアトル。そんなシアトルからオレゴン州ポートランドまでの約205マイル(約328キロ)を自転車で走る 『STP』 は、約1万人が参加する人気イベント。わりとなだらかなコースなので、長距離サイクリングの第一歩にピッタリです。今回は、その STP を走った体験をお届けします!
※不動産情報サービス Zillow 発表

STP って?

STP とは Seattle To Portland のことで、一般的にその頭文字を取って「エス・ティー・ピー」と呼ばれます。登録して参加費を支払いさえすれば、誰でも参加できるのが魅力の一つ。筆者がこの STP に挑戦することになったのは、少年の頃からサイクリングが趣味の夫に誘われたからなのですが、「ちゃんとトレーニングすれば、STP は誰でも走れる」という言葉に、「じゃあやってみようか」と言ってしまいました。

タンデムに乗る?

でも私は視力がかなり悪く、乱視もかなり入っているので段差などが見えづらいなどの不具合があります。「それで車を運転できるの?」と聞かれますが、同じ道路でも、太いタイヤが4輪もついた車で走るのと、人間がバランスを取らないといけない2輪の自転車で走るのとでは、全然違うんですよね。自転車はちょっとした判断のミスが命取りになりかねません。

そこで夫が提案してきたのが、「タンデムで走る」ということ。タンデムって、つまり、あの2人が一緒に乗るヤツです。たまにカップルが乗っているのを見かけては、仲良さそうだな~と思って見ていたのですが、まさか自分があれに?それより、1人で十二分に走れる夫が、わざわざタンデム?でも本人はやる気満々で、「一度やってみたかったんだよね」と、ネットでいろいろ調べ、さっさと買ってきました。

タンデムは意外と長い!そして重い!でもそれだけではありません。近所で乗ってみてわかりましたが、2人のコーディネーションがとても大切なのです。乗る時や降りる時、こいでいる時、止まる時、道路の変化や周囲で気をつけるべきことなどの声かけなど、あれこれ工夫しないと喧嘩になりそう(というか、なりました)。また、前に乗る人はナビゲーションをし、2人分の体重を支える必要がありますが、後ろの人もちゃんとトレーニングして一緒にこぐのが前提です。チャイルドシートの子供じゃないので、ただすわってればいいわけではないんですね。「後ろにいる人は乗ってるだけで、こがなくてもいいから楽でいいよね」と言う人は、"やったことない人" と断言できます。

毎年7月開催の STP には、「特に何もしてない状態なら、2月から週末にトレーニングをすれば十分」とのこと。でも、トレーニングって?「とりあえず乗って走行距離を伸ばしていくこと。体力もいるし」。というわけで、それから毎週末がサイクリングとなりました。

トレーニングの目的地はレストラン

でも最初は、お尻も痛いし、股も手も肩も首も痛い。ジェル入りのバイクショーツと女性用サドルを買ってがんばるしかありません。ショーツもメーカーによってさまざまで、あれこれ試着してようやく決めました。で、モチベーションを高めようと、目的地をレストランかブルワリーにしたら、全然やせません。

でも、少しずつ走行距離を伸ばしていくと、数ヵ月後にはお尻も足も強くなり、100マイルぐらいではそこまで痛くならなくなるものです。

シアトル周辺のサイクリング事情

アメリカでは初対面でも気軽に話す、スモールトーク(世間話)の文化がありますが、タンデムで走っていると、"Nice bike!" と声をかけてくれる人が多いです。同じタンデム同士となると話に花が咲きますし。

車で走っているとわからないことも、自転車で走ると見えてくるのも面白い。ほぼ平らだと思っていた道路が自転車だと大変な坂だとか、車だとあっという間に走り終わるところが自転車だとすごく長いとか、車から見るのとは違う景色が見えるとかいったこともそうなのですが、こんな店があったのかとか、こんな道があったのかという、発見もあります。また、長い距離を走ると、空気の匂いが変わり、体感温度が変わり、景色が変わるのがとても気持ちいいのです。

初春のスカジット・バレー

でも、車と自転車しか通らないような郊外の街では、道路わきにビールの瓶や缶の投げ捨てが多いのが残念。自転車と車の共存が難しいこともあって、車で接近して威嚇してくるドライバーや、バイク・レーンも何もない道路なのに、"Get back in the bike lane!" と怒鳴るドライバーもいました。マナーの悪いサイクリストがいるのは事実ですが、なんだかそのとばっちりを受けてる感じがしないでもないですね。でも、そうした経験から、車でサイクリストを追い抜く時は、できるだけ離れてゆっくりと走るようになりました。

STP 当日

さて、約6ヶ月のトレーニングを終え、いよいよ STP 当日。一緒に走る夫の同僚と午前4時過ぎにワシントン大学の駐車場で合流しました。日の出前でまだ暗いので、お祭り騒ぎはないものの、みんな笑顔でワクワク感いっぱい。

出発直前のスタートライン

STP は1日または2日のどちらで完走するか選べますが、私たちは1日で完走するグループだったので、午前4時45分に出発!私は寒がりなので、サイクリングジャージの上にウールの長袖ジャージ。最初から半そでの人たちもいます。走っていると、だんだん夜が明けてきて、レイク・ワシントン沿いから見た湖と山々の美しいこと。「わ~、こんな景色を見ながら走れるんだ~」と感動しました。

午前6時過ぎ、ケント市にある REI の本社に到着して軽食やドリンクをゲットしたら、また出発。途中でサドルから落ちそうなほどの睡魔に襲われた時はスターバックスのお世話になりました。

セントラリア

午前11時20分過ぎ、中間地点のセントラリアに到着。晴れていて暑く、ジャージ1枚で十分になりました。昼ごはんを食べたら、後半です。

コロンビア・リバーを渡り、オレゴン州へ

午後5時前にはコロンビア・リバーにかかった橋を渡ってオレゴン州へ。思えばこの後が一番きつかったかもしれません。ポートランド市内に入る手前のハイウェイの景色は美しくないし、お尻もやっぱり痛くなり、手も肩もミシミシ。

フラット(パンク)の修理中

さらに、3回のフラットタイヤ(パンク)もありました。夫がサクサク修理しましたが、パンクってペースが乱れるんですね。その他のメカニカルな問題がなくて良かったですが、3回目のパンクがわかった時は、「一緒に待つ」と言ってくれた夫の同僚に先に行ってもらうことにしました。

ゴールの公園に近くなると、たくさんの人が集まっている雰囲気が伝わってきました。かつては私もここで夫がゴールするのを待っていたことがありましたが、今は自分がそのゴールに向かって走っている。公園の入口からゴールまで設けられた花道(?)の両側にはたくさんの人がいて、拍手をしたり、歓声をあげたりしながら、入ってくる人達をたたえてくれていました。気持ちいいですね~!テンションがあがりました。

そして午後8時過ぎにようやくゴール!サドルから降りられる!ヘルメットを取れる!ビールで乾杯!

ONE DAY RIDER という刺繍したワッペンのようなメダルをもらい、あたりを見回してみると、公園はお祭り騒ぎ。夜遅くまで騒ぎが続きました。

STP のメダル

ポートランドも全米で指折りのバイク・フレンドリーな街なので、レストランなどで「何しにポートランドへ?」と聞かれ、「STP で」と答えると、"Wow! Congrats!" と祝ってもらえますよ。

STP は1人で参加することもできますが、グループで乗った方が楽しいですし、スキルも学べ、仲間ができます。交代で先頭を走ることで向かい風をよける助け合いもできます。STP を主催するクラブが実施しているトレーニング・シリーズやグループ・ライドのイベントに参加するのはとてもオススメだそうです。

ハイエンドな自転車は軽量で走りやすいといった利点がありますが、まずは今乗っている自転車で練習して経験を積んでから、自分にあう自転車を探してみましょう。自転車を持っていない、今の自転車があわないという場合は、REIGregg’s Cycles といった一般向けの店をチェックして、自転車のフィッティングをしてもらうのがいいですね。自分の体より大きい自転車は疲れやケガのもとになりかねません。ハイエンドなものを買う場合は専門店がオススメ。そこまでいけば、カスタム仕様も、なんでもござれ。こだわればこだわるほど値段は天井知らずです。

次は、シアトル地域の主なサイクリング・イベント、そしてブルベやランドヌールと呼ばれる、国際基準のイベントについてご紹介します。

掲載:2016年6月 文・写真:オオノタクミ

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