南樺太と同じ緯度にあり、温帯雨林から太平洋、雪山から砂漠まで、ダイナミックで多様な自然にあふれるワシントン州。カスケード山脈の西側と東側で気候がまったく異なるのも、日本の約半分の面積があると知れば納得です。そんなワシントン州の絶景スポットから夏の風景をご紹介します。
マウント・レーニア(Mount Rainier)
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Courtesy of Visit Tacoma-Pierce County
マウント・レーニアは、ワシントン州の最高峰で、標高14,411フィート(4392m)を誇る活火山。そして、マウント・レーニア国立公園は、1899年3月2日にオープンしたアメリカで5番目に古い国立公園で、総面積は235,625エーカー(95,354ヘクタール:954平方キロ)もあります。夏は短いですが、色とりどりのワイルドフラワーなどを見ることもできます。
晴れて空気が澄んでいる日は、シアトルの市街地からもその美しい姿を見ることができるので、シアトル地域で “The mountain is out!”(マウント・レーニアが見えてるよ!)と言います。このフレーズは、地元民がこの山に対して感じている愛と誇りを感じさせます。
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フリーモント・ルックアウトから見るマウント・レーニア
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Greg Balkin / Courtesy of State of Washington Tourism
マウント・フリーモント・ルックアウト・トレイル(Mount Fremont Lookout Trail)は、マウント・レーニア国立公園にある中級者向けトレイルです。車でアクセスできる地点としては最も標高の高いサンライズ(標高6,400フィート)から始まり、ソードーリッジの頂上まで穏やかに登ります。そこから西へ進んで、フローズン・レイクの五差路を通り、マウント・フリーモントへ向かうトレイルに入ります。岩の多い尾根を越え、1.3マイル進んだ先に、1930年代に建てられた歴史的なマウント・フリーモント・ファイヤー・ルックアウトがあります。ルックアウトはかつて山火事を監視する塔として使われていた場所で、現在ではハイキングの目的地となっています。晴れの日には、ワシントン州最高峰のマウント・レーニア、カスケード山脈、オリンピック山脈の眺めが楽しめるほか、ルックアウトの北側からグランドパークの野原が見渡せます。
このトレイルのベストシーズンは6月から9月。サンライズは秋から翌年の初夏まで雪のため通行止めとなります。
ディセプション・パス州立公園のロザリオ岬
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Jason Hummel / Courtesy of State of Washington Tourism
ワシントン州のウィッビー・アイランドは米国本土で4番目に大きな島で、169平方マイル(約437平方キロ)ある島の北部は海軍航空基地、南部は観光と農業の中心となっています。ウィッビー・アイランドとフィダルゴ・アイランドの間は、ディセプション・パス州立公園。キャンプ、ハイキング、ピクニック、ダイビング、魚釣りなどができるので高い人気があります。園内のトレイルを歩いて、フィダルゴ・アイランド南端のロザリオ・ヘッド(岬)に行ってみるのはいかがでしょう。ボウマン・ベイからスタートすると、約1.5マイル(2.4km)のループの簡単なハイキングが楽しめます。
ディセプション・パス・ブリッジは総工費48万2千ドルをかけ、1934年8月に建築が始まった橋で、翌年7月31日に開通式が行われ、1982年に米国文化財に指定されました。
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ポイント・ウィルソン灯台(Point Wilson Lighthouse)
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カナダとの間にあるフアン・デ・フカ海峡とアドミラルティ・インレット(入江)が交わるオリンピック半島の東端にあるポイント・ウィルソン灯台。ビクトリア様式の建物が保存されている町ポートタウンゼンドから車で約10分のところにあるフォート・ワーデン歴史州立公園に隣接していて、園内のフォート・ワーデン・トレイルから灯台まで平坦なトレイル(往復2.5マイル/4km)を歩けば、晴れていればサンファン諸島、マウント・ベーカー、カスケード山脈、カナダのバンクーバー・アイランドの素晴らしい眺めが楽しめます。
ワシントン灯台協会によると、この灯台はもともと1879年に管理人の家の塔に設置されていましたが、1913年に現在の灯台が建設され、設備が移転されました。5月から9月の土日はツアーもあり(土日 11am-4pm)。10月から4月は一般公開されていませんが、敷地内にある2棟の建物は、一年を通じて宿泊できるようになっています。キーパーズ・ハウスは2ベッドルームで最大4人、かつて沿岸警備隊が使用していたチーフズ・ハウスは4ベッドルームで最大8人が宿泊できます。
フォート・ワーデン歴史州立公園は、沿岸要塞「フォート・ワーデン(Fort Worden)」でした。ピュージェット湾への主要な入口であるアドミラルティ・インレットを防衛するため、フォート・ワーデン、フォート・ケイシー、フォート・フラガーの3つの要塞を連携させる「トライアングル・オブ・ファイア(三角防衛線)」を形成するため、1902年に完成。第一次世界大戦と第二次世界大戦の間は、兵士の訓練基地や指揮センターとしても使用されましたが、航空技術の発展とともに沿岸砲台の重要性が低下し、1953年に要塞としての役割を終えました。その後、少年矯正施設として運営された時期もありましたが、1971年に閉鎖され、1973年にワシントン州公園・レクリエーション委員会によってン歴史州立公園として開園され、現在に至ります。園内にはキャンプ場や博物館がありますが、砲台や兵舎などの歴史的建造物が保存されているので、当時の軍事要塞の雰囲気が少し実感できます。
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ダンジネス・スピット(Dungeness Spit)
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オリンピック半島の街スクイムにあるダンジネス国立自然保護区域(National Wildlife Refuge)は、アザラシや鹿などの野生動物や野鳥がたわむれるところ。そこからファン・デ・フカ海峡に向かって伸びているのが、米国最長の自然砂でできた長さ約6.8マイル(約10.9キロ)の砂塵(Spit)、ダンジネス・スピットです。
毎年約15フィート(約4.5m)ずつ伸びるそうで、1746年に建てられた灯台 『The New Dungeness Lighthouse』 まで駐車場から片道約5.5マイル(約8.8キロ)のハイキングをすることができます(詳細は WTA 参照)。晴れた日はカナダのバンクーバー島やあざらしなどの海洋生物、鹿の群れなどを見ることができます。海からの風が強いこともあるので、長袖のウインドブレーカーがあるといいかもしれません。
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マウント・コンスチチューション(Mount Constitution on Orcas Island)
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ワシントン州の本土とカナダのバンクーバー島の間にあるサンファン諸島最大の島、オーカス・アイランド。その最高峰で標高2,409フィート(734m)のマウント・コンスチチューションは島の東側にあり、その頂上まではワシントン州で最初の州立公園であるモラン州立公園から登ることもできますし、車でドライブして行くこともできます。途中にはマウント・レイクやマウント・ピケット、ツイン・レイクスなどに行くトレイルもあります。頂上からは、サンファン諸島の島々が一望できます。
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ケープ・ディサポイントメント(Cape Disappointment)
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コロンビア・リバーが太平洋に流れ込む河口のそばにある、ケープ・ディサポイントメント州立公園は、岬に激しい大波が打ちつける様子を間近に見られるスポットとして知られています。天気が穏やかな時は、原生林のハイキング、キャンプ、釣り、ビーチ、凧あげ、冬と春はグレーホエール・ウォッチングなどが楽しめます。
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Greg Balkin / Courtesy of State of Washington Tourism
ロングビーチ半島観光局によると、ここはもともと先住民のチヌーク族が住んでいたところ。スペインの探検家が毛皮貿易をしていたジョン・メアーズ船長がコロンビア・リバーの河口を見つけられなかったことから Cape Disappointment と名付けたとされています。また、ルイス&クラーク探検隊が到着したところとしても知られ、探検隊の行程と歴史を紹介するインタープリティブ・センターがあります。
ロス・レイクとディアブロ・レイク(Ross Lake and Diablo Lake)
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Jason Hummel / Courtesy of State of Washington Tourism
ワシントン州東部から西部に向かい、ノース・カスケード山脈のワシントン・パスを通過して下り坂を走ると右手にある、ロス・レイク・レクリエーション・エリア。その中にあるロス・レイク、ディアブロ・レイク、ゴージ・レイクという3つの貯水池(reservoir)は、シアトル・シティ・ライトの電力の源にもなっている湖です。最大級のロス・レイク周辺ではキャンプやハイキング、ディアブロ・レイク周辺では魚釣りやボート乗りが楽しめます。ディアブロ・レイクの名前は、初期のスペイン人探検家に影響を受けたネイティブ・アメリカンのチヌック族の言葉で “devil” を意味する言葉に由来しているそう。ディアブロ・レイクは、夏の晴れた日になると深い青緑色(ターコイズ色)になることで有名。国立公園局によると、これは「浮遊する微細な岩石粒子が太陽光を屈折させてできる色」で、氷河の融解が起こる7月~9月の晴れた日に、最も鮮やかになります。
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ワシントン・パス(Washington Pass Overlook)
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Weekend Sherpa / Courtesy of State of Washington Tourism
リバティ・ベル・マウンテン(写真)に代表される、ダイナミックな山岳地帯ノース・カスケード山脈を通る州道20号線(ノース・カスケード・ハイウェイ)にある二つの峠の一つ、ワシントン・パス(標高5477フィート、1669m)。
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ワシントン・パスは冬季は大雪が降るため、11月から4月は通行止めとなりますが、西へ約4マイル(6.4km)行ったところにある峠のレイニー・パス(標高4875フィート、1486m)から Washington Pass Overlook Trail を0.2マイル(約320m)の見晴台からは、リバティ・ベル・マウンテン(Liberty Bell Mountain: 標高約2,353m)を見ることができます。リバティ・ベル・マウンテンはロッククライミングに人気の場所でもあります。
エンチャントメント・レイクス(Enchantment Lakes)
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Jason Hummel / Courtesy of State of Washington Tourism
「ワシントン州で最も美しいエリアのひとつ」とされる、エンチャントメント。カスケード山脈の山々の狭間に小川で結ばれた大小さまざまな湖が点在し、訪れる人を魅了します。キラキラ光る湖を次々と通る約18マイル(約29キロ)のトレイルは、長いだけでなく、登り下りを繰り返すことによる高低差の合計が約1万フィート(約3千メートル)あるので、決して初心者向けではありません。でも、ある程度のバックパッキングの経験があり、キャンプで2、3泊できる人なら、ぜひ一度行ってみていただきたいところです。
大自然を保護するため、1日に入ることのできる人数が制限されています。日帰りなら特別な許可はいりませんが、毎年5月15日から10月31日までの間に1泊以上キャンプしたい人は許可が必要です。応募者が入場可能の人数より多いので、くじ引き制となっています。
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ケープ・フラタリー(Cape Flattery)
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アメリカ本土の最北西端には、先住民ネイティブ・アメリカンのマカー族の居住区(Makah Indian Reservation)があります。ここの見どころは、アメリカ本土(アラスカを除く)の最北西端ケープ・フラタリー(フラタリー岬)。太平洋と波に打たれてできた洞窟がいくつも並ぶ岬の様相に、大自然の厳しさを感じさせられます。ケープ・フラタリー・ライトハウスという灯台が立つタトゥーシュ島(Tatoosh Island)もここから見ることができます。片道約0.75マイル(約1.2キロ)のトレイルはきちんと整備されているので、子供からシニアまでが気楽にハイキングを楽しめます。
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オリンピック半島の美しいビーチ
オリンピック半島の太平洋岸には、開発され尽くしていない、静かなビーチがたくさんあります。
シャイ・シャイ・ビーチ(Shi Shi Beach)
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アメリカで最も美しい海岸の一つに数えられるシャイ・シャイ・ビーチ。先住民ネイティブ・アメリカンのマカー族の居住区内に入口があります(片道約3マイル(約4.8キロ)。途中は水溜りが多いことがあるので、ハイキング・ブーツがおすすめ。ビーチではキャンプができますが、ペットの同伴は禁止されています。
セカンド・ビーチ(Second Beach)
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ルビー・ビーチ(Ruby Beach)
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リアルト・ビーチ(Rialto Beach)
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