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シアトルでサーモンを釣る

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シアトルの釣りを代表する魚は、なんと言ってもサーモンである。それも、名の通りサーモンの王者、キング・サーモンを釣り上げることは、釣り師なら誰にとっても夢だが、これほど釣るのが難しい魚も滅多にない。

もくじ

シアトルでのサーモン釣りの今と昔

もっとも、かつて「サーモン・キャピタル」とまで称されたシアトルでは、エリオット湾にもサーモンがひしめいていたそうで、当時はもっと簡単に釣れたのであろうが、それはすでに昔話。

今ではカナダやアラスカにまで遠征しないと、キング・サーモンは滅多に釣れなくなってしまったし、そもそも一年のほとんどが禁猟期になってしまって、釣りに行くことすらままならないというのが実情である。

餌を食わないサーモンを釣る難しさ

しかし、それだけがサーモン釣りが難しい原因ではない。サーモンを釣るのが至難の業である理由は、サーモンはエサを食わないからである。アラスカ沖でたらふくエサを食べて、産卵のためにシアトル沿岸に回帰してきたサーモンは、すでに産卵モードに入っていて、母川を目指してただひたすらに泳ぎ抜いていく。目の前にエサを垂らしてやっても、たいていは見向きもしない。たまに食い意地の張ったやつがエサに食いつくかもしれないが、飲み込まずにポイと吐き出してしまう。エサを食わない魚を釣るというほど、難しいことはないのである。

サーモン釣り

そこで、釣り師はいろいろなことを考える。エサのイワシやニシンにヘルメットをかぶせて、ハリを胴体に引っ掛けた形でボートからトローリングしてやる。こうすると死んだエサが生きた小魚のように、水中でクルクルと回って泳いでいるように見える。これが目の前に現れると、食欲の失せたサーモンも、つい本能的に手を、いや口を出してしまうという計算だ。これが駄目ならば、金属製のピカピカ光るスプーンを引いてやるという手もある。このキラキラした光が、泳ぎ回る小魚の鱗の光に似ているのではないか、と少なくとも釣る側は信じて疑わない。 いや、食べたいのではなくて、目の前にいきなり変なものが現れたので、条件反射で噛み付いただけだという説もあるが、どちらでも魚が掛かれば良いのである。

サーモン釣り

川での投げ釣りでは、こうしたスプーンで釣ることが多いが、なぜかサーモンの卵、すなわちイクラで釣るというのも定石のひとつである。これもなぜだかはわからないが、産卵期のサーモンは、水に流されていく(ように見える)イクラを守ろうとして口にくわえるのだ、という説もあれば、エサと間違えたのだという御仁もいる。が、釣れれば良いのだ、どちらでも。

9月のシルバー・サーモン(銀鮭)

8月に回帰してくるキング・サーモンよりも数が多い9月のシルバー・サーモン(銀鮭)のほうが、釣れる可能性はずっと高い。何といっても数が10倍ほど多いし、シルバーのほうがまだ食い気の残っている魚が多いのである。

シーズンには Buzz Bomb と呼ばれるジグを桟橋から投げ入れ、竿をしゃくりながら糸を巻けば、意外に掛かることが少なくない。しかし、今年は2年に一回大量に回帰するピンク・サーモン(カラフトます)の年であるから、これを逃す手はない。

こちらは魚体は小さいが、数が圧倒的に多い種族なので、シルバーのさらに何倍も釣りやすい。スプーンでも Buzz Bomb でも、なぜか色はピンクがいいとされている。初心者の方は8月中旬から下旬にかけて、チャーター船に乗り合いで海に出て見られたらよろしい。ピンクならば、腕のよいガイドに下駄を預ければ、一匹や二匹は間違いなく釣らせてくれるはずである。

詳しくは、フィッシング・ガイドの www.seattlefishing.com などを参照されたし。

ワシントン州で魚釣りや潮干狩りをするには、ライセンスを購入する必要があります。また、量・数には制限があります。ワシントン州魚類野生動物管理局(WDFW)の公式サイトでライセンスを購入し、規則を読んでから出かけましょう。

文:光岡則夫
1952年、横須賀生まれ。小学生の時に2年間をアメリカで過ごす。東京大学卒業後に電通に入社、旅行会社への転職を経て、1981年にロサンゼルスの DENTSU AMERICA へ。その後、オイル・チェンジのバルブを販売する会社をシアトルで起業。普段は釣りや松茸狩りなど、ワシントン州の四季を満喫する日々を送っている。『ぶらぼおな人』での取材記事はこちら。ワシントン州での釣り、松茸狩り、栗拾い、山菜取りなどについてまとめた 『人生そぞろ歩き』 を文芸社から出版。

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