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本格的な庭園が勢ぞろい ポートランドとその近郊

Portland Classical Chinese Garden

世界的な庭園都市として知られ、世界文化遺産指定の庭園が9つもある中国・江蘇省の蘇州(Suzhou:上海から西へ50マイルの地点に、紀元前525年に建設された都市)で生まれた庭園様式を踏襲した古典庭園 『蘭蘇園』。さびれた感のあるチャイナタウンにこんな立派な庭園があるとは想像できないかもしれないが、一歩中に入ると別世界が広がる。

蘇州に多く見られる私家庭園は、住環境に自然を取り入れ融合させるという理想の元に設計されているが、ポートランドのこの『蘭蘇園』 はその理想を実現した例としては中国以外の国では唯一だそうだ。ポートランドに蘇州様式の私家庭園を造る構想が提案されたのは、1980年代初期。その後、1988年にポートランドと蘇州が姉妹都市関係を結んだことを機に本格的に計画が進められることになり、約9年後の1999年7月、ついに造園が開始された。蘇州からの資材と職人を採用し、総工費約128万ドルをかけた 『蘭蘇園』 が完成したのは、2000年9月のことである。

青々とした水をたたえる池には、夏には柳が垂れ、黒い瓦屋根と白い壁にマグノリア(玉蘭)や睡蓮など10種類以上の花が色を添える。1年を通してさまざまな草花が見られるので、季節ごとに訪れてみるのもいいだろう。

庭園を一通り見て周ったら、池を見渡せるティーハウスへ。BGM で流れる胡弓の演奏を聴きながら、蓋がついた中国製の器で出されるお茶をすする。メニューにある中国茶は約10種類。前菜から甘味までいろいろな点心も楽しめるので、一息つく場所としておすすめだ。

エリア チャイナタウン
住所 239 Northwest Everett Street, Portland (地図
電話 (503) 228-8131
公式サイト www.lansugarden.org

International Rose Test Garden

ダウンタウンの西側に位置する広さ129.51エーカー(221万平方メートル)の広大なワシントン・パークの一部で、米国で最も長い歴史を誇るバラの交配試験場。広さ5.12エーカーの土地に400種類以上のバラが咲き乱れ、珍しいバラも多いため、全米各地から観光客も訪れる。最も多くのバラが見られるのは6月から7月にかけてだが、8月でもまだバラを見ることはできる。

1888年に開拓者の妻が友人たちをバラの鑑賞会を開いたことがポートランド・ローズ・ソサエティの始まりとなった。1905年には、バラに縁取られた市内の道路は合計200マイルに及び、ポートランドは “City of Roses” という愛称で呼ばれるようになった。交配試験場が作られたのは、アメリカン・ローズ・ソサエティの役員だったジェシー・A・カレー氏(1873-1927)が、第1次世界大戦中にヨーロッパで交配されたバラを戦火から守るため、ポートランドをバラの避難所にしようと市の有力者を説得したことがきっかけ。現在も世界各地から多数のバラを受け入れている交配試験場は世界でもここだけである。起案者となったカレー氏の横顔が彫られたベンチを場内で見つけてみよう。

また、ポートランドはバラに世界で認識されている賞を与えることができる北アメリカ唯一の都市。この試験場にあるバラは常に評価されており、1969年に設置されたゴールド・メダル・ガーデンでは、1919年に受賞制度が始まってから金賞を受賞したバラを見ることができる。

エリア ワシントン・パーク
住所 400 SW Kingston Avenue, Portland (地図
電話 (503) 823-3636
公式サイト www.portlandoregon.gov/parks/

Japanese Gardens

ワシントン・パーク内の高台にある、総面積5.5エーカーの広大な日本庭園。日本庭園の専門家として国際的に知られる遠野教授がデザインを手がけた、日本国外では最も伝統的とされる日本庭園の1つで、1967年から一般に公開されている。

駐車場から無料シャトルに乗れば10秒程度で入り口に着くことができるが、歩くことに問題がないなら駐車場のすぐそばにある門から木々に囲まれた道を登って行こう。園内に入るまでに心が落ち着き、静かな気持ちになっているはずだ。

この日本庭園は、池泉回遊式庭園(ちせんかいゆうしきていえん)・路地庭(ろじにわ)・平庭(ひらにわ)・縮景園(しゅっけいえん)・枯山水(かれさんすい)と禅庭(ぜんにわ)からなる。庭園の東側からはダウンタウン・ポートランドが見え、晴れた日にはマウント・フッド(標高3,424m)まで眺めることができる。池・苔・花などに彩られた池泉回遊式庭園に建てられている五重の塔は、1963年に姉妹都市の札幌市から寄贈されたもので、その足元にある石は北海道の形をしている。札幌の所在地が赤い石で示されているのを見てみよう。そのすぐ先にある月橋や、清流が滝から渓谷を下り、海に見立てた池へと流れる様子、石や砂利だけで山や海の風景を表す枯山水などでは、時を忘れたようにたたずんでしまう人たちもいる。隠れるように建てられている東屋などで和むのもいい。ここは日本の良さを改めて実感させてくれる場所だ。

2005年7月9日には、新潟中越地震で被害を受けた小千谷市内の養鯉業者、片岡哲太郎さんが寄贈した錦鯉10匹が園内の池に放たれた。ポートランド在住の Rie Nakata さんが学校や教会を通して地元の子供たちに呼びかけ、片岡さんら養鯉業者に励ましの手紙や絵を贈ったことに対するお礼だという。のんびりと池を泳ぎまわる鯉にもこのようなエピソードがあったのだ。

なお、日本庭園は植物園ではないので、草木に名称を記載した札をつけていない。草木に興味がある人は、入り口でリストを購入しよう。

エリア ワシントン・パーク
住所 611 SW Kingston Avenue, Portland (地図
電話 (503) 223-1321
公式サイト japanesegarden.com

The Oregon Garden

1997年に造園が開始され、2004年にすべての建物が完成を迎えた 『ザ・オレゴン・ガーデン』。ダウンタウン・ポートランドから南へ車で約1時間(約45マイル)のウィラメット・バレーを臨む丘の上にあり、今ではオレゴン州の主要な観光地の1つとして、世界中から観光客が訪れている。

この庭園の中心的存在である樹齢400年の樫(かし:oak)が茂るこの丘をシルバートン市が購入したのは1990年代半ば。そこで採取できる再生水の用途を探していた同市と、大量の水を必要とする植物園を建設する場所を探していたオレゴン州養樹園主協会(Oregon Association of Nurserymen)との利害が一致し、この地に植物園が作られることとなった。

園内には40種類以上のバラが咲くバラ園、オレゴン州で収穫される果物や野菜など147種類の農産物が栽培されているマーケット・ガーデン、子供向けのアクティビティなどもあるチルドレンズ・ガーデンなど20種類以上のスペシャリティ・ガーデンと特別展があり、そのうちの多くは2005年に入って造られたもの。中でも、感覚の庭 “Sensory Garden” やペットに害のある植物に関して学ぶことができる、”Pet Friendly Garden” などはユニークだ。庭を壊さずにイヌ科(canine)の動物の習性に順応するための情報も提供してくれる。また、今後は1803-1805年に米国西部を探検したルイス&クラークが描いた植物の絵を展示した “Lewis & Clark Plant Collection Garden” も予定されている。

ビジター・センターでは、園内の情報ももらうことができる他、新しく拡張されたギフト・ショップとカフェで買い物や食事が楽しめる。夏にはオレゴン・シンフォニーによるクラシック演奏やロック、カントリーなど、さまざまなジャンルの音楽が楽しめる屋外コンサート・シリーズなどが開催されている。また、秋や冬にはワイン・テイスティングやお茶会なども予定されているので、公式サイトでチェックしてみよう。

エリア シルバートン市
住所 879 West Main Street, Silverton (地図
電話 (503) 874-8100/(877) 674-2733
公式サイト www.oregongarden.org

掲載:2005年8月

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