「ちょっと島まで日帰りで行ってみよう」
そう思い立ったらすぐに実現できるのがベインブリッジ・アイランド(Bainbridge Island)への小旅行。シアトルのウォーターフロントからワシントン州フェリー(Washington State Ferries)に乗って、わずか約35分で到着します。
自然の美しさ、文化的なスポット、地元の味覚を気軽に楽しめることから、「シアトル 日帰り旅行」「シアトル フェリー観光」のキーワードで常に人気のスポットです。
歴史ある島、ベインブリッジ・アイランド

ベインブリッジ・アイランドは、何千年もの間、スクワミッシュ族(Suquamish)などのネイティブ・アメリカンが暮らしていた場所です。1792年、イギリスの探検家ジョージ・バンクーバーの航海隊がこのエリアを探検し、ヨーロッパ系移民の入植が始まりました。19世紀後半には、製材業や造船業が盛んになり、1880年代には日本をはじめとするアジアからの移民も増加。やがて軍事基地としても活用されるようになりました。
2020年の国勢調査によると、現在の島の人口は24,825人。歴史的背景と自然の美しさを併せ持つ、静かで洗練されたリゾート感のある街として注目されています。
日系アメリカ人差別・強制収容の歴史

日本からの移民がアメリカ北西部に移住し始めたのは1880年代。農業などに従事する日本人は増え、アメリカで生まれた子どもたちはアメリカ人として育ち、1941年は54家族が住んでいたそうです(参考:国立公園局)。
しかし、1941年12月7日(現地時間)、日本はハワイの真珠湾を攻撃して太平洋戦争に突き進み、アメリカと戦争をすることを選びました。その結果、1942年3月24日にルーズベルト大統領が大統領令9066号を発令し、米国西海岸に住んでいた約12万人の日本人(日本から移住した一世)と日系アメリカ人(日本から移住した一世の子ども)の自宅からの強制退去と強制収容所への収容が実行に移されることになったのです。
当時、ベインブリッジ・アイランドに住んでいた276人の日本人・日系アメリカ人は、1942年3月30日に強制収容所に送られてしまいました。米国西海岸から強制収容された最初のケースです。
太平洋戦争の間に強制収容された日本人・日系アメリカ人は約12万人にのぼりましたが、そのうち3分の2はアメリカで生まれたアメリカ市民でした。
シアトル出身の作家による小説を工藤夕貴とイーサン・ホークの共演で映画化した 『Snow Falling on Cedars(ヒマラヤ杉に降る雪)』 もベインブリッジ・アイランドの日系人の収容の様子とその前後を描いています。
強制収容の当日に撮影された写真で最も有名なのは、幼い娘を抱いてフェリーを待つフミコ・ハヤシダさんの写真。ハヤシダさんは強制収容を乗り越え、2014年11月に103歳で亡くなりました。

日系アメリカ人強制退去記念碑
このようなことが二度と繰り返されないようにするためには、事実を伝え続ける必要があります。2011年には日系人の強制収容の歴史を伝えるメモリアル 『Bainbridge Island Japanese American Exclusion Memorial』 が完成し、公開されました。
ワシントン州フェリーでのアクセスと注意点

- フェリーはシアトルのコールマン・ドック(Colman Dock, Pier 52)から出発。乗船時間に余裕を持って並ぶのが安心です。
- 車ごと乗船可能ですが、日帰りなら徒歩+公共交通やレンタサイクルでの移動が便利。
- 平日と週末で運航スケジュールが異なるので、ワシントン州フェリー公式サイトで事前確認がおすすめ。
- 乗船券を購入し、アナウンスに従って乗船します。
- ベインブリッジ・アイランドからシアトルにフェリー通勤している人も多いので、通勤帰宅ラッシュ時は人が多いですが、天気のいい日は観光で島を訪れる人も多くなります。

ベインブリッジ・アイランドの観光スポット

2023年秋、リサイクル素材を使って制作した巨大なトロールの彫刻が、シアトル市内近郊5カ所に設置されました。その一つが、ベインブリッジ・アイランドで見られます。「トロールを見るためにアウトドアに出かけることで、環境について考えることに繋げよう」と、世界規模で行われているパブリック・アートのプロジェクトの一環。少なくとも3年、長ければ15年にわたり保存されるそうなので、次のお天気の日にぜひ出かけてみてはいかがでしょうか。見物はもちろん無料です!

その横にはベインブリッジ美術館があります。ローカルのアーティストの作品も多いので、ぜひ立ち寄ってみましょう。子ども連れなら、その裏にあるキッズ・ディスカバリー・ミュージアムに行くのはいかがでしょう。子どものインタラクティブな遊びが楽しめます。
フェリー乗り場からすぐのウィンスロー(Winslow)と呼ばれる町には、おしゃれなショップやレストラン、カフェやベーカリーなどが軒を並べています。
ガーデニング好きにおすすめの 『Bainbridge Gardens』、日本語と英語で俳句が書かれた碑があるベインブリッジ公共図書館の 『俳句の庭』、日本庭園がある広大な森林公園 『Bloedel Reserve』(要予約)、ベインブリッジ歴史博物館などもおすすめです。

ベインブリッジ・アイランドでの食事

グルメなレストランやカフェ、ベーカリーが多くあります。焼きたてのクロワッサンなどが味わえるフレンチベーカリーの『Coquette Bake Shop』、「あそこのパイが食べたい」と言うシアトル住民も多い 『Blackbird Bakery』はいかがでしょう。

朝ごはんも食べられる 『Pegasus Coffee House』、アメリカのレトロなブレックファストとランチが楽しめる 『Madison Diner』、シーフード料理がおいしい 『Café Nola』、ローカル食材が楽しめる『Cafe Hitchcock』、ビール好きに嬉しい 『The Harbour Public House』、『Restaurant Marche』などが人気です。ワイン好きなら 『Bainbridge Vineyards』 でテイスティングを楽しんでみては。