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世界が注目!新旧の最先端技術が学べる、ハンフォードの無料ツアー

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ハンフォード核施設

シアトルから車で東へ3時間ほどのハンフォード。ここには、長崎に落とされた原爆のプルトニウムを生産したハンフォード核施設のあるマンハッタン計画国定歴史公園と、2016年はじめに重力波の観測に成功し世界に衝撃を与えた LIGO 研究所があるのをご存知でしょうか。

第二次世界大戦中にたった18カ月で建設された世界初の本格的原子炉は、冷戦終了まで稼働し続け、今なお放射性廃棄物の処理と除染が行われています。そんなハンフォード核施設のツアーは内容がとても充実していて、歴史・科学・政治など多くの側面で学ぶことが多くあります。両者とも充実した無料ツアーがあり、シアトルからの日帰り/週末旅行が可能です。ハンフォードの周辺観光スポットやドライブルートとともに、ご紹介します。

LIGO(重力波観測所)のツアー

LIGO(重力波観測所

LIGO とは、Laser Interferometer Gravitational-Wave Observatory
(レーザー干渉計重力波天文台)の略で、重力波を観測する装置のこと。
重力波のごく微小な波動を受信し、地面や大気の揺れによって起こる信号との違いを
見分けるために、非常に高度な感度が必要で、その装置には今世紀最先端技術が使われています。

LIGO Hanford Tours
www.ligo.caltech.edu/WA/page/lho-public-tours
※事前予約が必要です。

現在ハンフォード周辺で最も人気のスポット、LIGO(ライゴ)。周辺住民も長い間その実態を把握していませんでしたが、2016年2月に世界中のメディアの一面ニュースとなり、いきなり注目を浴びることに。アインシュタインの仮説の中で、唯一証明されていなかった「重力波」の存在を、世界で初めて測定することに成功したのです。と言われても、一般人にはピンと来ませんが、これによって、地球上の物理学の根本が解明される可能性があります。「確実にノーベル賞モノ」と言われるこの功績と、「重力波」について学べる無料ツアーの存在はとても貴重です。

LIGO ツアーに参加するには、公式サイトで予約する必要があります。まずは、モダンなレクチャーホールで「重力波とは何か」「観測の歴史と仕組み」について、小一時間ほどの講義を受け、その後、所狭しとコンピュータが並んだコントロールルームと、平坦な土地に伸びる巨大な L 字型観測装置を見学します。ガイドしてくれるのは世界有数の科学者である LIGO 研究員で、どんな質問にも応えてくれるのは感動もの。所要時間は約2時間。屋外での見学が含まれるので、歩きやすい靴や防寒着があると便利です。周辺は電波が届かない可能性が高いため、携帯の GPS に頼らず、事前に道順をダウンロードして向かうこと。

LIGO(重力波観測所

ツアー内容は中高生以上向け。ただし、世界最先端の施設見学とあり、
幼い子どもや英語を解さない外国人観光客も、それなりに楽しんでいました。

ハンフォード核施設のツアー

ハンフォード核施設

Hanford Site Tours
manhattanprojectbreactor.hanford.gov/
※事前予約が必要です。

施設を見られるバーチャルツアーもあります。
vtours.hanford.gov/#page=home

ハンフォード核施設は、長崎に落とされた原爆のプルトニウムを生産したという意味で、日本人にも意味のある歴史遺産です。第二次世界大戦中にたった18カ月で建設された世界初の本格的原子炉は、冷戦終了まで稼働し続け、今なお放射性廃棄物の処理と除染が行われています。そんなハンフォード核施設のツアーは内容がとても充実していて、歴史・科学・政治など多くの側面で学ぶことが多くあります。

しかし、このツアーの公式ページにある「B原子炉国定歴史建造物は、世界初の本格的なプルトニウム製造用原子炉で、米国エネルギー省と国立公園局が管理するマンハッタン計画国定歴史公園の一部です。ツアーに参加し、第二次世界大戦の終結に貢献した原子爆弾の製造につながった人々、出来事、科学、工学について学びましょう」と説明を読むと、複雑な気持ちになることは否めません。

提供されているツアーは、次の2種類です。

  • B 原子炉(Hanford’s Histric B Reactor)
  • 町の歴史(Pre-Manhattan Historical Sites)

ツアーは事前予約制で、manhattanprojectbreactor.hanford.gov/から申し込むことができます。4月から11月にかけて日曜以外のほぼ毎日実施されていますが、予約がいっぱいの場合は、こまめにキャンセルをチェックするか、翌年3月の予約開始日に次年度分を申し込むようにしてください。

ハンフォード核施設

無数のつまみやレバーが並ぶコントロールルームは、今や一世代前となった20世紀の風景。

どのツアーも、マンハッタン計画(第二次世界大戦中のアメリカ政府による核爆弾開発のための極秘計画)とハンフォードという町の歴史についての15分程度のビデオ付き説明から始まります。その後、ガイドとともにバスでそれぞれのロケーションに向かいます。

私の参加した「B原子炉」ツアーでは、45分ほどの移動中も、町の歴史や周辺の自然環境などについての説明があり、退屈しませんでした。B 原子炉に到着すると、新たに二人のガイド(元技術者)が加わり、まず動画や図解とともに原子力爆弾と原子炉の仕組みについて解説を受けた後、原子炉内を自由に歩き回って見学します。コンピュータ化以前の施設で、複雑なプロセスをどのように管理していたか、実際のエピソードを交えて解説してくれるので興味深いです。参加者からはさまざまな質問が投げかけられ、活発な質疑応答は帰りのバス移動の間も続きました。ツアーの所用時間は4時間前後。

ハンフォード核施設

ハンフォードまでのドライブを楽しむ

シアトルから I-90沿いにカスケード山脈を超えて Cle Elum まで出ると、風景が変わります。温暖でみずみずしいエバーグリーンの山から、草原と潅木で覆われた亜乾燥地帯に入るためです。強い日差し、平坦な土地、乾燥した空気、ゆったりと流れるコロンビア・リバー。コンバーティブルで走り抜けたくなるようなエリアです。

ハンフォードまでのドライブを楽しむ

シアトルからハンフォードに向かう場合は、エレンズバーグ(Ellensburg)を過ぎてから、コロンビア・リバー沿いに243号-240号を南下するルートが、壮大で美しく、おそらく最短です。また、エレンズバーグから I-82に入り、ヤキマ経由でも行けます。途中で寄り道をし周辺観光を楽しむなら、このルートがおすすめ。

旅程に余裕があるのなら、やや時間はかかるが、マウント・レーニアの東側を通る410号や、マウント・レーニアとマウント・アダムスの間を抜ける12号を利用して、山間の風景を堪能することもできます。

ハンフォード周辺の観光スポット

ハンフォードから最寄りのリッチランド(Richland)は、もともと人口1500人程度でしたが、マンハッタン計画により、ピーク時には13万人の専門家が移住し作り上げられた町。そんなリッチランドにあるパブ「Atomic Ale Brewpub & Eatery」には、「アトミック・アンバー」や「プルトニウム・スタウト」など、ちょっと考えられないビール名がメニューに並日ます。

レッド・マウンテン AVA

ワイン産業で有名なトライシティーズ(Tri-Cities)は、リッチランドに、隣接するパスコ(Pasco)とケニウィック(Kennewick)の3つの街を合わせた都市圏。主要なワシントン産ブランドのワイナリーが多く存在し、ワイナリー巡りが楽しめます。

周辺最大の都市ヤキマ(Yakima)は、ワシントン州の農産業の中心地。常設ファーマーズ・マーケットの Fruit City は、オーナーがフレンドリーで、手ごろな価格で新鮮な果物や野菜を買うことができます。また、全米最大のホップの産地でもあるため、ブルワリーも見逃せません。上質ホップを用いた数種類の IPA がメニューに並ぶ「Bale Breaker」は、立ち寄る価値あり。もちろん、
ヤキマバレーのワイナリー巡りも、お忘れなく。

少し意外なスポットとしては、ヤキマから北西に車で30分弱のところにあるティトン(Tieton)のアート工房「Mighty Tieton」。工房の外までアートが溢れ、小さな田舎町に洗練されたインスタレーションが点在します。

掲載:2016年6月 更新:2023年8月 取材・文・写真:渡辺菜穂子・編集部

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