執筆者:川合由佳子さん
1年を通じてさまざまなアクティビティが楽しめるのはワシントン州ならでは。「何でもやってみよう!」という気持ちで、いろんなことにトライしています。
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仕事の採用面接を受けたときのこと。
「お給料の心配とかしなくてよかったら、何の仕事をしたいですか?」と聞かれ、
「パーク・レンジャーの仕事をしたいです」
と即答したことがありました。
結局、その時は採用されませんでしたが、「あの答えが悪かったんじゃないか」と後で聞いてみると
面接担当官に
「あれは質問の答えから、本当のあなたがわかるんじゃないかと思って聞いただけ。他の人は野球選手とか、保育園の先生とかいろいろあったわ」
と、笑われました。
そうなんです。私は日頃から、国立公園に骨を埋めたいと本気で思っているのです。なので、パーク・レンジャーとして働けたらこんなにうれしいことはありません。
ワシントン州にはマウント・レーニア国立公園、オリンピック国立公園、そしてノース・カスケード国立公園がありますが、お隣のオレゴン州にはクレーター・レイク国立公園があります。
今回は、番外編として、ワシントン州ではありませんが、そのクレーター・レイク国立公園を訪れた時の話をしましょう。
1日目
シアトルを早朝に出発し、ポートランドに10時過ぎに到着しました。ブランチを食べて、せっかくなので寄り道も考えましたが、まだ道のりの半分以上が残っていますし、早くクレーター・レイクを見たい気持ちで一杯だったので、そのまままっすぐに公園を目指すことに。
ポートランドを出てから5時間後の午後3時過ぎ、予約していたロッジにやっと到着。わかってはいたものの、シアトルからは遠いですね。長いドライブは疲れます。
(余談ですが、オレゴン州のガス・ステーションは、セルフではないフルサービスで少し高いので、オレゴン州に入る前にガソリンを満タンにするといいでしょう)
クレーター・レイク国立公園にはクレーター・レイク・ロッジがありますが、今回はロードトリップで愛犬も一緒だったので、公園から車で約30分のクリスタルウッド・ロッジに宿泊。
犬は国立公園内を自由に歩き回れないので、犬好きというロッジのオーナーに事前に相談し、私達が公園に行っている間にドッグシッターをしてくれることになったので安心でした。
チェックインはあっという間に済みましたが、夏なのでまだまだ外は明るいし、まわりには何もない・・・。
なので早速、私達のホテル側に位置するファントム・シップ・オーバールック(幽霊船のような島)とピナクルズ・オーバールック(山が雨で削られて尖った岩が残った風景)を見に行きました。その後、夕飯は Annie Spring 国立公園入口 近くの Annie Creek Restaurant で食べ、就寝。
2日目
いよいよ Rim Village(クレーター・レイクの観光拠点)の Sinnott Memorial Overlook へ。
車を停めて、ビューポイントに向かって歩き出します。
すると、真っ青な湖が目の前に広がりました。
「すごい!」
昨日の長いドライブでの疲れもぶっ飛ぶくらいの美しさ。見た人ならわかってくれると思いますが、この青を言葉で言い表すのは不可能に近い。空の青が水の青に溶け込んで、この世で一番美しい、深く透き通った青が輝いています。まるでその青に吸い込まれていくような気持ちになりました。
「ほんと、来てよかった」
古代マザマ山の頂上の噴火口に雨水と雪解け水がクレーターに溜まってできた火口湖。
その湖の中にウィザード島(魔法使いの帽子のような形)がまるで浮かんでいるかのように見えます。
その後、Crater Lake Lodge のカフェで朝食。ついでにロッジの中も見学。
ここのビューポイントから写真を100枚くらい撮った後(冗談じゃなく・・・)、湖を一周しながら観光して回ろうということに。
夏の間だけオープン(大体7月から10月くらいまでだそうです)しているリムドライブの湖一周コースは全長33マイル(約53キロ)なので、2~3時間あれば一周できます。
でも、22ヶ所のビューポイントがあるので、全部に立ち寄っていたらもっと時間かかります。リムドライブを周遊する有料トローリーも走っています。
まずは Steel Visitor Center at Park Headquarters に立ち寄って、公園についての約30分の映画を見ました。
クレーター・レイクがどのようにしてできたか
年間平均降雪量が1300センチを超え、冬がとても長いこと
水深593メートルは全米一、透明度は世界一レベル
なぜこんなに青い色が作られるのか
などが学べて勉強になるので、皆さんもここに立ち寄ることお勧め。
そして Cleetwood Cove Trail へ。ここは唯一、水際まで行けるトレイルです。
このトレイルは島まで行ける Crater Lake Boat Tour/Wizard Island tours に参加する遊覧船乗り場への道と同じです。
私達は、「ボートに乗ってしまうと時間の融通がきかず、帰りたいときに戻って来れないし、一日かかってしまう」ということで、ボートには乗らないことにしました。
ボートツアーに行った人は、終わったらトレイルを上らないと帰って来れません。ハイキングしたくなくても、ボートに乗りたかったら選択の余地はありません。
途中途中に休めるベンチなどが置いてあるとはいえ、お年寄りなどちょっと大変そう。かなりの急斜面です。炎天下の中、ぜいぜい言いながら上がって来る人達とたくさんすれ違いました。
このボートツアーは人気で、チケットは売り切れる可能性が多いそうです。行きたい人はここでまずチケットをゲットしてから次のプランを立てるといいかも。
たくさんの人が水に飛び込んでいましたが、私は足をつけただけで終わり。見ていると気持ち良さそうですが、水はかなり冷たいし、私はオープン・ウォーターは苦手。足に藻とかが触ったりすると、いやなのよね。
お昼は、Plaikni Falls に立ち寄り、滝の横で買ってきたサンドイッチをパクリ。
晴天、水しぶきの音、飛び回る蝶。
なんとも贅沢なランチスポットでした。
夜は、パーク・レンジャーが主催してくれる Watchman Peak Sunset Hike ツアーに参加。繰り返すようですが、本当に周りに何もないので、夜のアクティビティとして、このツアーはお勧めです。
午後7時半に Watchman Overlook に集合なので、夕飯はまたまた昨日と同じレストランで食べました。
残念ながら、レストラン系の選択もかなり少ないです。
このツアーのガイドをしてくれたレンジャーのダービーさん、見た感じ、30歳前後といったところ。ツアーの間、いろいろな話をしてくれたのですが、彼のお父さんもパーク・レンジャーだったそうで、「息子よ、この仕事はお金は稼げないが、国立公園で美しい夕日が沈むのを見ながら生活できたら、お金では買えない人生が送れるよ」と言われながら育ったそうです。
今はシェアハウスに住んでいて、2人のハウスメートがいるとか。それに加えて、冬の間はレンジャーも人数削減があるらしく、たくさんのレンジャーは季節限定で雇われ、一年の半分はアルバイトをして生活しないといけないとか。
やっぱり生活は大変なのですね・・・。
なんだか私のパーク・レンジャーになるという夢が音を立てて崩れていった感じでしたが、それでも彼らパーク・レンジャーあってこその国立公園。ダービーさんを含め、自分の夢を追いかける皆さん、とっても素敵です。
3日目
ここからオレゴン・コーストへ行き、最後にマウント・セント・ヘレンズに寄ってシアトルへ戻る予定だったので、名残惜しくもクレーター・レイク公園を後にしました。
主要の観光ルートから離れているためか、訪問する観光客も他の国立公園に比べるとかなり少ないそう。
でも、もしも、もしも、あなたにもクレーター・レイクを見に行けるチャンスが来たのなら、ためらわず、ぜひ行ってみてください。湖の青色を自分の目で見たら、一生忘れることができないくらい感動することでしょう。
ただ、シアトルからは本当に遠いので、週末だけしか休めない場合は、ちょっと大変。何日か続けて休みが取れるときに、ぜひ足を伸ばしてみて下さい。
Enjoy the nature!
掲載:2015年7月