来月25日にシアトルと成田を結ぶ新規路線の運航を開始する ANA(全日本空輸)が28日、レントン市にあるボーイング・カスタマー・エクスペリエンス・センターで記念式典を開催し、関係者らおよそ200人が出席した。
「シアトル-成田間の運航は、ボーイング787を受注した時から計画として持ち上がっていました」と、 米州総支配人の平子祐志(ひらこ・ゆうじ)氏。「シアトルと日本を結ぶだけでなく、日本を経由してアジアとも結ぶことで、より多くの方にご利用いただければと思っています」。同路線は週7便のデイリー運航を予定しており、日本国内やアジア大都市への同日乗り継ぎも可能なダイヤが組まれている。
当初は次世代中型旅客機ボーイング787型機(ドリームライナー)を投入する10月頃を目処に就航する予定だったが、「長距離需要」と「接続需要」に重点をおいた「ネットワークキャリア」としてのビジネスモデルを一層強化していくことを視野に入れ、予定よりも早い就航を実現した。「シアトルは夏の気候が素晴らしいため、就航を前倒しにすることで需要が高まることを見込んでいるほか、弊社がシアトルと日本を結んでいると周知させる意味も込めています」と平子氏。ボーイング787の投入開始時期については10月頃と発表されているが、具体的に決定次第、同社の公式サイトで発表される予定だ。
同社は2004年、世界で最初にボーイング787型機を発注した航空会社。ローンチカスタマー(最初に発注した航空会社)として社員をボーイング社に派遣し、その開発に深く関わってきた。高性能のロールスロイス Trent 1000 のエンジン採用と機体の軽量化による燃費向上や騒音軽減などの基本構造面に加え、環境に配慮した設計と機内環境の改善にもそのこだわりが感じられる。全座席数のうちおよそ3分の1を占めるビジネス・クラスは、180度のリクライニングが楽しめる座席が魅力。足を伸ばして横になれるうえ、適度にプライバシーを保つ個室のような空間が安らぎと安心感を与えてくれる。また、全ての座席が通路に面しているため、他人に気を遣う必要もない。ビジネス・クラスの中では業界最大を誇る17インチの液晶画面も見やすく、ファースト・クラスに近い快適さとなっている。一方エコノミー・クラスも、座席を倒すのではなく前後に動かして傾斜をつける設計にすることで、後ろの席に座る相手に与える影響を最小限に抑えるよう配慮。機内のプログラムもさらに充実したものになっているほか、iPod と USB ケーブルの差し込み口や電源がエコノミー・クラスの各席にも配備されているので、パソコンや電子機器なども使いやすい。そのほか、顧客の要望に合わせてトイレにウォシュレットを装備したり、非常口を日本の一般的な非常口のデザインに合わせたりするなど、細かいところまで考慮されている。式典ではこれらのビジネス・クラスとエコノミー・クラスの座席や機内食の見本が公開され、試してみた参加者からは驚きの声が上がった。
式典では、太田総領事やボーイング787型機のチーフ・プロジェクト・エンジニアのマイク・シネット氏、シアトル観光局 CEO のトム・ノーウォーク氏らが挨拶し、同路線運航を祝うとともに、シアトルのさらなる発展に期待を寄せた。米州総支配人の平子氏も「シアトルは自然が豊かであると同時に、ボーイングを始めとする有名企業が多く、産業と自然が一体化しているところが魅力的。就航決定に関してもシアトル側の反応が良く、日本の航空会社に対する期待の大きさを感じさせました」と語ってくれた。
同社における米国路線は1986年のグアム-成田間の運航を皮切りに、ロサンゼルス、ワシントン D.C.、ニューヨーク、ホノルルなど計8路線を運航中。本年度中にシアトルに加え、サンノゼ-成田線の新規開設も予定している。
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掲載: 2012年6月29日