日本・世界一周クルーズ・米国で合計30年以上にわたり料理人としてキャリアを積んできたシアトルのベテランシェフの一人、種子田英明(たねだ・ひであき)さんが、レストラン激戦区のキャピトル・ヒルに寿司会席の店『たね田』を開店しました。カウンター9席でコース料理のみを出す小さな店を選んだ種子田さんのこだわりについて伺いました。
―長年にわたりシアトルで働いてこられて、ご自分の店を持つことにしたきっかけは。
東京で料理人として腕を磨き、シアトルに来て長く経ちますが、自分だけの店を持ちたいとは漠然と考えていました。ですが、以前の職場もやりがいがあり、日々の忙しさにかまけて、月日が経ってしまったのです。
でも、昨年夏頃から、「自分の目の届く範囲で、若い頃に日本で修行した料理を出せる店を作りたい」という気持ちが大きくなってきたのです。ちょうど子供たちも手がかかる時期が過ぎ、年齢的にも今しかないかなと、あまり計画も立てず、勢いで始めてしまいました!(笑)
―新しいお店の特徴を教えてください。
日本の大工さんと打ち合わせをしていた時から、日本の銀座の料理屋にできるだけ近い、あたたかい木をベースにした造りをイメージしました。カウンター9席の寿司場の材木は日本から取り寄せたものです。また、お客様側の床を12センチ程底上げし、カウンター側の板前と座ったお客様とが、同じ目線で会話できるように工夫しました。
店が入っている建物は、1918年にできたとても古いものです。なので、店内に入った時のギャップが面白いと思いますよ。
先付け、八寸、強肴の器なども寿司会席をイメージし、京都の友人から譲っていただいた物などを使用しています。季節によって使い分けていきたいですね。
―種子田さんのこだわりについて。
私の料理人としてのキャリアのスタートは東京の寿司会席店です。東京で伝統的な技法を習得し、ワシントン州の豊富な魚介類にあった調理法もシアトルでの経験で身に付けました。
当店では、日本だけの食材にこだわらず、東京でも味わえないシアトルの寿司会席をイメージしています。ワシントン州には他では味わえない本当にたまらなく旨い食材があります。料理では王道が一番大切ですが、時には基本を踏まえて遊び心を加えることも必要だと思います。
魚の旬もシアトルと日本とでは少し異なりますので、日本の寿司を食べてこられた方でしたら、それも不思議な感じがして面白いと思います。
出汁ををとる水は地下水を使い、醤油もカツオ節を効かせたオリジナルブレンド、寿司酢も赤酢ベースで、3種類の酢をブレンドしています。
コース料理のみご提供している一番の理由は、来ていただいたお客様に旨い物を全部食べて帰っていただきたいからです。そして、最後に、料理を通じてお客様と気持ちが伝わりあえば本当に嬉しいですね。
―ありがとうございました。
種子田英明さん 略歴
宮崎県出身。調理師専門学校を卒業後、神奈川県の和食料亭と東京・青山の寿司・日本料理店で14年にわたり経験を積み、クルーズ船の料理長に。世界一周クルーズや短期クルーズで2年にわたり寿司と日本食を担当し、世界一周クルーズでは世界を4周。日本にいったん帰国するが、2003年に渡米し、日本食レストランの料理長に就任。2018年に退職し、2019年2月に『Taneda: Sushi in Kaiseki たね田』を開店。