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原爆の犠牲者の冥福を祈り、平和な世界を願う『From Hiroshima to Hope』

1945年に米国が広島と長崎に落とした原爆の犠牲者、そしてさまざまな戦争の犠牲となった人々を追悼し、平和な世界を願うため、シアトルで1984年から毎年8月6日に開催されている 『From Hiroshima to Hope』 に、今年も1,000人以上が参加した。

From Hiroshima to Hope

ダウンタウン・シアトルの北に位置するグリーン・レイクの会場では、午後6時から2時間にわたり、朗読、舞踊、琴や太鼓の演奏、合唱などが行われ、参加者は芝生に椅子やシートを敷いて聴き入った。

湖面に浮かべる灯篭を作るブースには長い列ができた。言葉や字を自分で、あるいは米国書道研究会やパンジャブ書道家のボランティアに書いてもらい、「世界平和」「祈」「愛」などの思いを込めた灯篭が次々と完成していく。

原爆投下直後の写真や、オレゴン州在住のアーティスト、ユキヨ・カワイさんが被爆した祖母の着物で制作した、原子爆弾 『Little Boy』 の彫刻作品の展示に見入る人たちも多い。

不安定な社会における宗教を超えたつながりを提案する基調講演を行ったのはインターフェース・コミュニティ・サンクチュアリのイマーム・ジャマール・ラーマン氏。イスラーム神秘主義の神聖さについて説明し、「今こそ己を知ることが大切」「己を深く知ることで人はより完全に近づき、他人と根本的なところでつながることができる」と語った。

日没が近くなった午後8時過ぎ、シアトル日蓮仏教会のシーダマン観心上人による読経が始まり、ボランティアが参加者の灯篭の中にあるロウソクに火を灯してまわった。墨で書かれた文字が小さな炎に照らされてあちこちで浮かび上がり、会場は厳かな雰囲気に包みこまれていく。

雲一つない空に輝く三日月に照らされながら、湖に入ったボランティアが参加者から渡された灯篭を次々と湖面に浮かべた。ゆるやかな風で湖面のあちこちにゆっくりと散った灯篭が光の数珠のようにつながって輝きを増していく。

ボランティアで参加したワシントン大学職員のリンダ・アンドウさんは、「この催しが特別なのは、さまざまな年齢・宗教・文化の人たちが参加するから」と語る。

「この催しでは、文字を書くボランティアの中に広島の生存者の方がいらっしゃいます。ワシントン大学やその他のコミュニティからも市民ボランティアが駆けつけてくれます。平和への思いを親に書いてもらった灯篭を手に持ち、湖に向かって歩いている幼い子供の中には、火を灯した灯篭を見ながら、"ここに神様が降りてくるの?" と聞く子供もいました。戦争や憎しみ、核兵器による脅威が存在する不安定な世界にあって、子供たちの好奇心・無垢・純粋な愛は本当に貴重だと実感させられます。そして、平和、愛、希望、調和などの言葉が書かれた灯篭が湖面を照らす様子を、子供からシニアまでが一緒に立って眺める - この催しには、そんな貴重な瞬間がたくさんあります。人はそれぞれ苦難や喪失、痛みを抱えていると思いますが、この日は失われた命を思い、より良い世界への希望を共有するのだと思います。私も数年前に亡くなった兄やこの世にもういない愛する人々の冥福を祈っています」。

今年は広島・長崎への原爆投下から71年目にあたる。Ploughshares Fund によると、現在世界で核兵器を保有しているのはアメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の9カ国。地球上にある核兵器は合計1万5,375個で、アメリカはその約45%にあたる6,970個を保持している。

掲載:2016年8月 更新:2017年7月

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