幼稚園での教育活動の傍、「おはなしおばさん」として50年以上に渡り日本全国各地で日本の民話や手遊びを子供達と楽しむボランティア活動「おはなし会」を行って来た藤田浩子さん。約20年前からアメリカ各地でも開催していたが、今回、シアトル市内近郊に住む母親たちの企画で、シアトルとベルビューで 『わくわくおはなし会』 の開催が実現した。
4月16日から19日までの4日間には、2歳から9歳を対象にした公演が7回開催され、約350人の親子が参加。18日にベルビューのラーニングパークで開催されたおはなし会にも約40人の親子が集まった。母親達の手作りのお手玉が配られ、「何が始まるの?」と、興味津々の様子の子供達。藤田さんがお手玉を使って歌いながら遊び始めると、子供達も真似を始め、お手玉が頭の上に乗ったら「頭に乗ってる!」と笑い、首を傾けてお手玉が落ちたら「落ちちゃった!お団子みたい!」とまた笑い、教室はすぐに大きな笑いに包まれた。優しいリズムの日本語の歌を歌いながら、ストローと紙で作った花が咲いたり、仕掛け絵本の「いないいないばあ」で開閉するたびに顔が変わったりすると、子供達は「いったいどうなってるの?」と、目を丸くしながら体を前に乗り出していく。種明かしをしてもらえばシンプルな仕掛けだが、それを考え付いて遊びに組み込んでいくのは新鮮だ。さらに、少しも止まることなく、次々と遊びを取り出してくる藤田さんはマジシャンのようでもある。
今回初めてシアトルを訪れた藤田さんは、「シアトルのお母さん方が “ぜひ” と言ってくださって、やって来ました。こうして日本の遊びをする機会を作ろうとしてくださるその熱心さが嬉しい」と、疲れも見せずに終始笑顔で取材に応じてくれた。「これまでお会いしたお子さんたちもとても喜んでくれて。それにしても、こちらのお母さん方は、とても器用。日本なら “売っているから買ってくる” のが普通になってしまっているものでも上手に手作りされていて驚きました」。
このツアーを実現させたわくわくおはなし会実行委員会の伊藤美保さんが初めて藤田さんの「おはなし会」を体験したのは4年前。さまざまな電子機器やおもちゃが溢れる現代において、昔から受け継がれて来た人間の知恵や工夫、お話を共有する藤田さんに惹きつけられ、3年前からシアトルでもぜひと提案していたという。会場では母親達が作ったお手玉などの遊び道具も販売。「藤田浩子さんの世界を少しでも一緒に体験してもらうために、お手玉を作りました。中には、着物の羽織の糸を解き、お手玉に生まれ変わったものもあります。昔の人が大切に使用した着物が、現代の子ども達の手の中で、息を吹き返していくことが、とても素敵なことだと思います」。
自分が幼い頃に遊んだわらべ歌や手遊びで自分の子供が無心に大笑いする様子を見れば、親ももっと楽しんでしまう。「子供はなんでも喜ぶのよ」と言いながらも結局はさまざまな機能がついたものを使いがちの現代においては、とても新鮮な体験になった人も多いのではないだろうか。「”ただ楽しく遊ぶ体験こそが、人とのかかわりを学び、沢山の知恵を学び、沢山の力をつけさせます” “歌いながら(声を出して)身体を動かし(リズミカルに)友達と一緒に、この3つを備えた遊びが子どもの発達にとても大切です” “心を育てる遊びをもっと子供たちに体験させたい。これらの遊びの真髄を次世代に伝えることが、私の役割です” という藤田さんに共感しました」と、伊藤さん。「子ども達が眼を輝かせながら、観て、聞いているのが、印象的でした。大人向けワークショップでは、大人が声をあげて笑い、遊びました。大人も子どもと同じお手玉遊びで、思いっきり笑って遊べることに、驚きを感じました。どの公演においても、笑顔がいっぱい。そのことが、素晴らしいな、と、思いました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました。楽しかった昔遊びを、子ども達と一緒に楽しんでくれると、嬉しいです」。
藤田さんは手遊びやお話を親子で楽しむさまざまな書籍も多数出版している。詳細は一声社の公式サイトで。
掲載:2014年4月30日