2009年に 『White on Rice』 で在米日本人を笑いに包んだデイブ・ボイル監督の最新作で、ロサンゼルス映画祭でグランプリを受賞した 『Man From Reno – リノから来た男-』が、4月30日からシアトルでも公開される。それに先駆けて、ボイル監督と藤谷文子さんにお話を伺った。
ボイル監督は日本語を身につけられ、この脚本もご自身で執筆されたそうですね。どのようにして日本語を身につけられたのですか。
ボイル:19歳のとき、モルモン教の宣教師としてオーストラリアに2年間滞在しました。その時、日本人コミュニティーでボランティア活動をし、日本語がしゃべれるようになりました。脚本自体は英語で書いたのですが、日本語に翻訳する際、(主演の)藤谷さんや北村さんと相談しながら、自然な日本語のセリフになるように努力しました。
ハリウッド映画では日本人の役でも日本語ネイティブでないアジア人が演じることが多いですが、日本人役に日本語ネイティブの俳優を選ばれたのはなぜですか。
ボイル:僕はなるべく、"authentic" な作品が作りたかったので、いつものハリウッドの日本人じゃなくて、本格的でリアルな日本人を描きたかったのです。ハリウッドの作品では、日本人が出るとしても、芸者の役とか忍者とかステレオタイプの役が多いです。僕はそういうものは好きではありません。
ボイル監督は当初から北村さんと藤谷さんを想定して執筆されていたのでしょうか。藤谷さんとは以前にお仕事をされたことがあったとのことですが、藤谷さんのどのようなところがこの作品にぴったりだと思われましたか。また、北村さんはアキラ役として、どのようなところが魅力的でしたか。
ボイル:藤谷さんとは前にも一緒に仕事をしたことがあったので、脚本を書く時、彼女を念頭に置いて書きました。藤谷さんの独特な雰囲気はミステリー作家にぴったりだと思ったからです。北村さんの場合は日本のキャスティング・ディレクターに紹介していただきました。脚本を気に入ってくれて、出演を決めてくれました。アキラ役には強いカリスマを持つ人が必要だったので、北村さんは俳優としても強い存在感を持っているし、お芝居もすごく面白いので、この役にパーフェクトだと思います。
藤谷さんは、どのような理由から、この作品に出演したいと思われましたか。また、制作に関わる上で、この作品ならでは、ボイル監督ならではと思われるユニークな体験がありましたら、お聞かせ下さい。北村さんとの共演についてのご感想をお聞かせ下さい。
ボイル監督の 『デイライトセイビングス』 に少しだけ出演させていただいたのですが、その時に非常に気が合い、互いにまた一緒に仕事ができたらと思ったことが本作に出演するきっかけになりました。監督はとても寛容な方で、スタッフや役者、みんなの意見にどんどん耳を傾けられては、作品にどんどん反映されるのでいつも感服しています。北村さんは、とてもお忙しい中、本当に真摯に脚本や作品と向き合われていて、とても刺激になりました。
制作現場でのスタッフは必ずしも日本語と英語のバイリンガルとは限らなかったのではと思いますが、どのような工夫をされましたか。監督として、出演者として、どのような経験をされたか教えてください。また、それは今後の作品にどのようにいかせられるとお考えですか。
ボイル:撮影現場は国際色豊かだったので、面白い環境でした。一応、英語がメインでしたが、英語でも日本語でも何語でもいいという感じでした。監督として日本語で演出したことは前にもあったのですが、今回は日本語の単語が増えたというか、勉強になったというか・・・。国際的な作品が作りたかったのですが、今回の現場は本当に国際色豊かでした!
藤谷:現場はアメリカ人の方が多数でしたが、監督が日本語が堪能なので、言語の架け橋の様な存在でした。そのおかげでみんなが安心して日本語のお芝居も英語のお芝居もできたと思います。こういったバイリンガル映画の成功は、今後の国際社会においての希望になると思います。私はそれに関わることができて、とても幸運です。
これからのボイル監督のご予定やお仕事に対するお気持ちを教えて下さい。ボイル監督は次の作品をお考えですか。お考えの場合、どのような作品でしょうか?
ボイル:しばらくは今作の宣伝活動が続きますが、それが終わってからは、再びミステリー作品を作りたいと思っています。そして、近い将来、再び、日本人を描いた作品を作れたらいいなとも思っています。藤谷さんとも、北村さんとも、また一緒に仕事をしたいとも思っています。
藤谷:私の中では、アメリカや日本だけでなく、どんどん様々な国の才能ある方々と出会って色々な映画や仕事をやっていけたらと思っています。
ありがとうございます。
『Man From Reno – リノから来た男-』
www.manfromrenomovie.com
4月30日(木)-5月4日(月)
【会場】 Northwest Film Forum (1515 12th Avenue, Seattle) (地図)
【上映開始時間】 木~日 8pm; 月 3pm & 8pm
【問い合わせ】 (206) 329-2629
【公式サイト】www.nwfilmforum.org
掲載:2015年4月