2014年の NWSL シアトル・レイン FC 期限付き移籍で、そのプレーをシアトルに印象付けた川澄奈穂美選手。6月に完全移籍のニュースが流れた時は、シアトルのサッカーファンが歓喜に湧いた。その期待に応え、移籍後2試合で3ゴールを決め、連続して最優秀選手に選ばれている。そんな川澄選手の魅力に迫る。
―― 移籍直後から大活躍していますが、一番嬉しかった瞬間は?
川澄:まずは、シアトル入りした時に、大歓迎ムードで迎えてもらったこと。あとは、試合で個人的にゴールを決めた時も嬉しいのですが、やっぱりチームが勝つことが一番なので、勝利の瞬間です。
―― 川澄選手から見て、シアトル・レインはどんなチーム?
川澄:個性豊かで、一人一人いい特徴を持った選手がいます。でも、サッカーはいい選手がいるだけで勝てるスポーツではないので、それをしっかりとコントロールしてくれる監督がいるというのが、強みだと思います。メンバーが皆、仲がいいのもいいですね。
―― 前回の期限付き移籍の時も、すぐ馴染んでいましたね。
川澄:はい、自分でもすぐ打ち解けたと思います。日本リーグ(なでしこリーグ)INAC で一緒にプレーをしていたベブ選手がいたので、彼女がパイプ役になってくれたのも大きいです。そういう人とのつながりもあり、いい仲間に恵まれていると思います。
―― 前回はチームメイトに体幹トレーニングを教えて「SENSEI(先生)」と呼ばれていたそうですが?
川澄:あの時は、体幹トレーニングが目新しいのか、みんな興味を持ってくれましたね。今回もそのうちの一人の選手に頼まれて、すでに新セッションをやりました。
―― 瞬発力、持久力、リーダーシップなど、これまでいろんな評価をされてきたと思いますが、自分で考える自分のウリは?
川澄:90分間、相手と駆け引きをし続けられるところだと思っています。世界レベルで、特に足が速いわけでも、パワーがあるわけでも、ドリブルがうまいわけでもないのですが、相手の動きを読んで苦手なところを突いたり、裏をかいたりするのが得意です。
―― 日頃から相手選手の研究をしているのですか。それとも、試合中に他の選手をよく観察している?
川澄:試合前に、相手選手の試合の様子をいくつか見るようにはしているのですが、実際に面と向かってプレーしてみないとわからないことも多いです。ですから、試合の立ち上がり15分ぐらいで、例えばボールを取られるリスクを冒してでも、相手に突っ込んでみて、特徴を引き出し、それを90分間のゲームでどう生かすかを考えます。
―― 川澄選手のブログにはいろいろな人が登場しますが、「相手に突っ込んで特徴を引き出す」のは、普段の人との付き合い方にも通じますが?
川澄:人のキャラを立てるのが好きなんです。ブログでは登場人物のキャラが立っていると、ストーリーも面白くなります。すべてとは言わないけど、ピッチでも同じかもしれません。人間観察をして、相手となる選手の特徴や技術を見極めているんですから。
―― 「前向きで凹んだことがない」「うざいくらいにやる気に満ちている」という過去のコメントが、気になります。そのポジティブな性格はどこから?
川澄:よく聞かれるのですが、生まれつきだと思います。意識的にポジティブに考える時もあるのですが、意識してもできない人もいるので。基本的に前向きな性格です。
―― チームメイトになった宇津木瑠美選手について、どう思う?
川澄:彼女は非常に球際(キープ力)が強いですし、サイドバックも中盤もできる器用な選手です。ロングボールも切れるし、展開もできるし、攻守において、ハードワークができます。性格的には、サバサバしていて、フランスに6年いただけあって外国人チックな感じかなと。このチームにおいて「日本人」という括りで過ごすつもりはないので、やりやすいです。
―― 今回、川澄選手がシアトルに戻ってきてくれたと歓迎する在シアトル日本人ファンも多いです。そんな読者にメッセージを。
川澄:シアトル在住者としては新参者なのでお世話になることもあるかと思います。もう一度こうして、シアトルでプレーできるのは、自分自身も嬉しいですし、日本人の誇りだと思えるようなプレーをしたいと思いますので、ぜひスタジアムにも応援に来ていただけたらと思います。
プロフィール:川澄奈穂美(かわすみ なほみ)
1985年生まれ、神奈川県出身。身長157cm。シアトル・レイン FC 所属、背番号36番、フォワード(FW)。幼稚園の頃からボールを蹴り始める。2008年に日本体育大学からなでしこリーグ INAC 神戸レオネッサに加入するとともに、日本代表デビュー。2011年のドイツW杯に出場しチームの優勝に貢献。レイン FC には2014年に期限付き移籍し、2016年6月から完全移籍。
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掲載:2016年7月 取材・文:渡辺菜穂子