宝塚歌劇団の元スターたちが出演する宝塚レビューショーが、12月3日にシアトルのコーニッシュ・プレイハウスで上演されます。出演は、毬穂えりな、綺華れい、紫峰七海、珠まゆらと、宝塚の第一線で活躍したスターたち。『ワールド・オブ・ドリームス』 と題されたこの公演をプロデュースしている、フラワー・さきこさんにお話を伺いました。
– 今回、宝塚歌劇団の元スターによる公演がシアトルで行われることになった理由は何でしょう。
宝塚歌劇団の本拠地である兵庫県宝塚市で育ち、祖父母が阪急電鉄・宝塚歌劇団の創立者である小林一三氏と懇意にしていた関係で、周囲に宝塚関係者が多く、物心ついた頃から宝塚歌劇団を観劇していました。そんなわけで、ある友人のお嬢さんがトップスター候補となった際、「さらにファンを増やしたいので力を貸してほしい」と頼まれたことがきっかけで、海外在住の "ヅカファン" にアプローチしようと、いろいろと調べ始めたところ、フェイスブックには、アジア圏だけでなく、ニューヨーク(Takarazuka Revue Fan in NYC)、コスタリカ(Takarazuka Revue Fan Costa Rica)、ラテン諸国(Takarazuka Revue Latin Fan)、カナダ(Takarazuka Revue Fan in Canada)などがあり、さらにポッドキャスト「Takarazuka Revue Fan Podcast」まで存在することを知りました。
そのほとんどが、いわゆる日本のマンガ・コスプレなどのサブカルチャーから宝塚を知りファンになった10代後半から30代前半の若い世代。その理由は、宝塚が日本の人気漫画をベースにした作品を多く上演していたからで、ファンたちは主にTumblr を通じてお互いに連絡を取り合っています。
日本に行って本場の宝塚を観るという夢のためにコツコツとお金を貯めて日本語を勉強している彼女らの宝塚に対する熱い気持ちを知って、「こちらから何とか出向いて見せてあげられないかと思うようになりました。そんな時、テレビで観たあるインタビューが、私の背中を押してくれました。それは、今年3月のトニー賞当日の朝、Mr. Broadway と呼ばれるトミー・チューンさんの CBS でのインタビューです。「アメリカは広くて、本場ブロードウェイでミュージカル観られる人は限られている。だったらこちらから出向けばいい」という思いで、アメリカで初めて全米ツアーをプロデュースしたとのこと。
その私の熱い思いを以前から懇意にさせていただいてる、シアトルの非営利団体 Japan Arts Connection Lab の代表のお一人である遠山美津子さんに相談したところ、費用の一部をサポートしてくださることが決定し、コーニッシュ・カレッジをご紹介下さいました。偶然にも、同カレッジのシアター・デパートメントのチェアであるリチャード・ホワイト教授は3年にわたり学習院大学で客員教授を務め、日本の歌舞伎や能はもちろん、宝塚も観劇したことがあったため、快くプログラムに組み込んでくださることになりました。ホワイト教授のご希望で、公演前日には「宝塚歌劇団の歴史・宝塚音楽学校のカリキュラム・女性のみで舞台を作る利点と難点」というタイトルで、演劇学部の学生に講義も予定されています。
– シアトルでの宝塚歌劇団による公演は、実は今回が3回目なんですね。
公演が実現する可能性が見えてきた頃、私が参加している詩吟のグループでそのお話をしたところ、「58年前にシアトルで宝塚の公演を観た」「グリーンレイクの野外ステージだった」と言われました。詩吟のグループの参加者はほとんどが80代から90歳。北米報知に確認したところ、なんと当時の関連記事がたくさん見つかりました。その後、福岡県人会の玉井会長にお話しすると、「当時、頼まれて皆さんのドライバーをやった」と話してくださり、ますます「シアトルに宝塚を」という思いが募り、実現することになりました。
– 演目はとても盛りだくさんですね。どのように決定されているのでしょうか。
タカラジェンヌがマルチなエンターテイナーであることがわかるよう、ダンスの中にタップやタンゴ、それにやはりアメリカですので、日舞を入れる構成をお願いしましたが、演目は出演者4人にすべてまかせています。彼女達は今回初めてシアトルを訪れますが、「58年ぶりの宝塚関連公演になる」と聞いて、責任の重さを感じると同時に、「宝塚歌劇の魅力を知ってもらえるステージにしたい」との意欲満々です。
タイトルの「World of Dreams」は、前述の世界中のファンからアイデアを募ったところ、全員一致で決まりました。「だって、宝塚は夢の世界でしょう。そしてそれが今、私達みんなをつないでくれてるから」と。この12月の公演も、もちろん西海岸の各地、東海岸、カナダ、遠くはコスタリカからもファンがやってきます。
私の夢は、来年は北欧かポーランドでの公演。ここにも熱~い宝塚ファンがたくさんいて、私たちを心から待ってくれています。私からすれば子供の世代ですが、彼女たちの笑顔のためにがんばりたい。私のライフワークにするつもりです。
– 公演を楽しみにしています。ありがとうございました。
掲載:2017年10月 更新:2017年12月