世界のさまざまな地域で親しまれているレゴ。ここ10数年の間に、玩具としての存在から、人材育成の一端を担う存在へと進化し、幅広い年齢層にとって身近な存在となった。特に、サイエンス(science)、テクノロジー(technology)、エンジニアリング(engineering)、数学(math)に重点を置いた STEM 教育を導入している米国では、レゴは子供の好奇心や想像力を刺激しながらクリエイティブに問題解決力を養うツールとして、教育の現場で積極的に取り入れられている。
去る4月21日、ワシントン州ベルビュー市にあるベルビュー・チルドレンズ・アカデミーとその姉妹校ウィロウズ・プレパラトリー・スクールで、レゴ・エデュケーションによる教育者向けカンファレンスと、一般向けオープン・ハウスが開催された。両校はSTEM教育とその実績が認められ、西海岸初のレゴ・エデュケーション・モデル校に選ばれたこともあり、レゴ・エデュケーションの名誉会長で北米部長と戦略的パートナーシップ担当エグゼクティブ・ディレクターを務めるステファン・ターニップシード名誉会長も出席して基調講演を行った。
その中でターニップシード名誉会長は、「変化が加速している現代社会において、今の大人の想像を超えた未来に生きる子供たちに大人たちがしてあげられることは、社会がどう変化しても対応できるスキルを身につけさせること」と述べた。「一番楽しいのは、自分たちで独自の解決方法を見出すこと。その点において、子供たちは変わっていない。変わっているのはその子供たちを取り巻く世界だ。100年前は近所が “世界” だったのが、今ではインターネットのおかげで地球全体が “世界”になり、学校のプロジェクト一つにしても外国の子供たちとインターネットでつながった状態で同時に一緒にやることが可能になった。そんな環境はかつて我々が子供だった時代には想像もできなかったこと」。同氏がエンジニアとしてのキャリアをスタートさせたそもそものきっかけも、8年生の時に行ったサイエンスの実験で自分で問題を解決したこと。子供時代に実際に自分で考え、解決することが自信につながり、未来を切り開く力になると、実体験を通して語ることができるのだ。
また、すべての子どもたちが 21 世紀にふさわしい教育を受けられるよう支援する非営利団体 『P21:21 世紀型スキル パートナーシップ』 の会長も務める同氏は、これからの子供たちに必要な「21世紀型スキル」は、「創造性(creativity)、イノベーション (innovation)、批判的思考(critical thinking)、問題解決(problem solving)ができること、そしてそれにはコミュニケーション(communication)とコラボレーション(collaboration)も必要」と説く。「そして、そのベースになるのは歴史。親、そしてそのまた親といった先祖から受け継がれてきたものが自分の中にあると知ることが、均整の取れた自主独立型の人間を作ると思う」。
基調講演の後は、ベルビュー・チルドレンズ・アカデミーとその姉妹校ウィロウズ・プレパラトリー・スクールの生徒たちと教師のレゴを使った学習について質疑応答、学年ごとに設置されたテーブルでのさまざまなプロジェクトの紹介が行われた。観衆の前で自分の意見を堂々と述べる子供たちの姿に、未来に必要なスキルや能力、そして、日本で生まれ育った親が、米国で育つ子供にしてあげられること、伝えられることは何かを改めて考えさせられた。
掲載:2015年5月