メディアや商品開発など幅広い分野で仕事をしてきたジャッキー・フライドマン・ミグドールさんが、「自分の子供にも外国の文化や言語を楽しみながら体験し、習得する機会を与えたい」と、1年半にわたるリサーチを経て2005年11月に開講した 『スポンジ』。当時はジムや音楽にはさまざまなオプションがあるにも関わらず、幼児向けの語学教室はなかったが、自身が日本語を学び、日本に住んだ経験や、ワシントン大学が行った生後6~12ヶ月の赤ちゃんの脳の発達に関する研究などから、語学教室は子供たちにとってすばらしい経験になると確信したそうだ。
もともとはシアトルのみで開講していたが、現在はベルビューとレドモンドの教室も加わり、また3~4年前からベルビュー、マーサー・アイランド、シアトルの小学校でもクラスを提供している。提供している言語は日本語・スペイン語・中国語・フランス語の4ヶ国語。教師は全員がネイティブ・スピーカー。今回参加したフランス語のクラスを教えるデルフィーナさんも、フランス語が母国語のフランス人だ。開設当初から継続して教えている先生もいるそうで、月に一度のミーティングでは、先生が他の先生たちを相手にクラスのデモを行ったりして、お互いから学ぶようになっている。
オープンしたばかりのベルビュー校は、520号線のNE124th の出口を降りてからものの数負のところにあるワンルームの教室だ。白と青のさわやかな色の壁に、鮮やかな色の提灯やテーブル、椅子と、いかにも楽しそうな雰囲気。入口のロッカーに荷物を入れたら、靴を脱いでカーペットが敷かれた教室に入る。真新しいカーペットは清潔で、ハイハイする年齢の子供にも安心だろう。
クラスは親子で参加する 『Child/Caregiver Classes』 (0~4歳児対象:55分)と、子供だけの 『Just Kids Classes』(3歳以上:85分)の2種類。今回のクラスは親子クラスで、参加者は0歳児から3歳児までの子供5人とその親。デルフィーナ先生が “Parle-vu Francais?” (フランス語を話しますか?)と親にフランス語で確認するところから、既にフランス語の世界が始まっている。「親がフランス語を話せないのに、行ってもいいの?」と思うかもしれないが、他のさまざまな親子クラスと同様、親も子も一緒に新しいことを楽しめるように構成されている。「一つのファミリー・アクティビティと思って楽しんでくださるご家族が多いです」とジャッキーさん。「2~3歳の子供達にとっては、自分が普段聞きなれていない言葉を話す人がいてもそれは普通のこと。すぐにその言葉を学んで単語を話すようになったりします。でも、8~9歳までそういう機会がなかった場合、ショックを受ける子供たちもいますね。でも外国語を追加することで、他の文化や言語に対する尊重が生まれます。子供と一緒に親も新しい言葉を学ぶチャンスと思って取り組んでみると、家庭でも引き続き親子で楽しめるんですよ。」
まずは簡単な歌を使って自己紹介。その歌も事前に歌詞が渡されるわけではない。先生が身振り手振りを繰り返して歌ってくれているうちに、意味がわかるようになってくるから不思議だ。
Bonjour:
J’ai un nom, un prenom
Deux yeux, un nez, un menton
Dis-moi vite ton prenom
Pour continuer la chanson.
Tu t’appelles ……
Bonjour………..
歌詞が手元にないので、先生の発音に耳をそばだてることになる。そして、”un nez” のところで鼻を指差し、”un menton” のところで顎を指差す先生を見て、「なるほど」と理解していくというわけだ。参加している子供の名前を ” Tu t’appelles” “Bonjour” の後に入れると、歌が完成。子供達も先生と他の参加者たちに名前を呼んでもらえて嬉しそうにしている。次はリンゴや犬のぬいぐるみを使って新しい歌や単語を教えてもらい、最後はテーブルと椅子を運んできてスナックを食べながら、それぞれに渡される絵を見て単語を教えてもらう。デルフィーナ先生は、赤いテーブルを運ぶ時は “rouge table” など、どのようなチャンスも逃さず新しい言葉を次々と並べてくれるので、子供達も何のことを言っているかピンと来るようだ。
「楽しい経験を通して、新しい言語や文化に対するリスペクトを持ち、学ぼうとしてもらえればと思います」と言うジャッキーさんの言葉通り、その窓口となる先生は、ネイティブ・スピーカーであるだけでなく、自分の母国語と文化が大好きで、子供とのやり取りが上手く、参加者全員が一緒になって心から楽しめるように仕向けていくスキルがある。今回参加した親子も「55分のクラスはあっという間だった」「親も一緒に学べるのがいい」と口々に話していた。
掲載:2011年10月