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『第30回国際高校生選抜書展』外務大臣賞受賞!高校生・鷹松昂暉さん&書家・藤井良泰先生 Q&A

『第30回国際高校生選抜書展』外務大臣賞受賞!高校生の鷹松昂暉さん&藤井良泰先生 Q&A

『第30回国際高校生選抜書展』外務大臣賞を受賞した高校生・鷹松昂暉さん

2021年11月、『書の甲子園』と呼ばれる第30回国際高校生選抜書展にて、ワシントン州レドモンド高校に通う鷹松昂暉(たかまつ・こうき)さんが、海外から出品した作品に与えられる最高賞の外務大臣賞を受賞しました。約5年前にアメリカに引っ越してから習い始めた書道にのめりこんだという鷹松さんと、その鷹松さんを指導した書家で北米最大規模の書道教室『明藤書道会』をレドモンド市で運営している藤井良泰先生との Q&A をお届けします。
※記事中の写真は新型コロナウイルスのパンデミック開始前に撮影されたものです。今回の取材はメールで行いました。

第30回国際高校生選抜書展 外務大臣賞受賞 鷹松昂暉さん

鷹松昂暉さんが
『第30回国際高校生選抜書展』にて
外務大臣賞を受賞した作品

– 国際高校生選抜書展にて外務大臣賞を受賞したとの知らせを受けた時、どのようなお気持ちでしたか。

知らせを受けた時、喜びと同時に安心感がありました。師匠の期待に応えられたことが一番嬉しかったです。

– アメリカに来られてから書道を始めたとのことですが、そのきっかけと、始めた頃のことについて教えて下さい。

アメリカに来たのは今から5年ほど前、2016年の9月頃でした。書道にまったく興味がなかったのですが、父が「精神を真っ直ぐに、礼儀を学んで欲しい」と、明藤書道会を勧めてくれました。始めた頃は礼儀を知らず怒られてばかりでした。また、教室にいる人は皆礼儀正しく、私より上手く、それこそ小学校低学年から習っている人が多かったので、なおさら自分がみすぼらしく感じられました。

– 書道が楽しくなったことには、どんなことが影響していると思いますか。

書道が楽しくなった一番の要因は、私が礼儀正しくできるようになった頃、藤井良泰先生が私に付きっきりで教えてくださったことです。先生が教えてくださった蔵鋒(ぞうほう)という筆法に魅了されました。

– 昨年は、内容・規模ともに日本最大規模の総合書道展とされる第72回毎日書道展でもU23 毎日賞を受賞されています。新型コロナウイルスのパンデミック中ですが、作品にどのように向き合われましたか。

当時、パンデミックが起こったことで、通っていた学校が休校になってしまい、自然に時間ができました。ならば自分の好きなことをとことんやろうと思い、がむしゃらに書くようになりました。賞を取るという気持ちではなく、自分が楽しむ心を作品にぶつけました。そのうち、日々の練習の楽しさと大切さを知り、練習ができるかできないかではなく、「やる」という認識に変わりました。

– これから書道で取り組んでみたいことを教えてください。

今年の書道の目標は「見る」に決めました。先生に間違いを指摘される前に自分で気づく、また、美しく書くためには先生のお手本をよく見る力が大切だと昨年実感しました。全体を見ると同時に、細かい違いもわかるように取り組んで行きたいです。

– ありがとうございました。

明藤書道会 藤井良泰先生

藤井良泰先生

– 鷹松昂暉さんの『書の甲子園』 での外務大臣賞、第72回毎日書道展でのU23毎日賞受賞について、コメントをお願いします。

国際高校生選抜書展は、今年で30回展を迎えました。愛称は『書の甲子園』です。高校の書道部員は毎年この『書の甲子園』に向けて夏合宿をして作品制作に取り組むほどです。個人賞、および団体賞を目指すのです。書道は中国発祥の文化でもあるため、『書の甲子園』では国内にとどまらず全世界の高校生に向けて作品を応募しています。外務大臣賞は海外からの出品作品の第一席に与えられます。例年、中国、台湾、マレーシアから多くの応募作品が集まっています。その中で鷹松君は見事最高賞である外務大臣賞をアメリカ代表として受賞しました。アメリカ地区担当審査員の私の中では世界一の高校生との認識です。

『毎日書道展』はもともと18歳以上のみが出品できる日本で最も伝統を持つ国内最大(出品点数3万点以上)の書道公募展でした。数年前U23部門を新たに作り、出品費用を抑えることで16歳以上23歳以下の若者に発表の場を増やすことに役立てようとのことだったようです。鷹松君は高校生だけでなく大学生をも含むカテゴリーで最高賞のU23毎日賞を受賞しました。このことは単純に大学生と同じ土俵で戦って第一席を勝ち取ったと言えると思います。

– 藤井先生が生徒さんの指導において大切にされていることは何でしょうか。

昔から書は人なりと言います。ただ、最近は基本をないがしろにして目立つパフォーマンスを前面に出す方が目立ってきました。多くの方に書に興味を持っていただくことはありがたいことですが、正しく伝わっているか心配になります。長い書道文化の中で基本用筆が希薄な書は瞬時にすたれます。基本用筆は『古典の臨書』の中にのみ存在します。このことを正しく伝えるよう私は気を付けて指導しています。基本はクラッシック音楽と同じだと思います。原点であるクラシック音楽の基本をきちんと身につけたうえで応用するジャズとは違う、上っ面のジャズは聴くにたえません。そうすることで自分が書いた作品と手本の違いが発見できるようになります。「では個性は?」と言われそうですが、個性は作り出すものではなく、にじみ出てくるものであると私は思っています。

明藤書道会の書道教室の様子

– 30年以上にわたり指導されている中で、変わったこと、変わらないことがあるとすれば。

変わったことと言えば、私が一般で言う高齢者になり容貌が激変しました。二十後半ででアメリカに来たとき、「ジーンズをはいた書道の先生にちゃんとした字が書けるのですか?」とよく冷やかされました。だからでしょうか、お爺さんになってもジーンズをはいています。冗談はさておき、変わらないことといえば私のお稽古に対する意識です。常に真剣勝負で臨むことを第一にしています。お稽古では毎回何かしら新しいことを覚えてもらうように、またドキドキハラハラしてもらえるようなお稽古を心がけています。

– 書家、指導者として、先生が目指しておられることを教えてください。

自分が楽しくなければ生徒の心には響かない。自分の『書』を楽しむためにはより多くの技術と知識が必要です。これからも時間の許す限り多くの書を学び、経験を積み、『書』の楽しさを一人でも多くの方に伝えられたらと思っています。

昨年、鷹松君は他の書道展でもすべて第一席を獲得しました。これまでにも大臣賞を取った生徒はいましたが、彼のような総取りした生徒は今までにいなかった。センスも一流ですが、とにかく練習量が人の2倍なんてもんじゃない。10倍です。

ありがとうございました。

掲載:2022年2月 写真提供:明藤書道会

明藤書道会
6611 147th Ct NE, Redmond, WA 98052, USA
(425) 869-0994
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